ハマドとの業務提携に向けて連日遅くまでオフィスに残ってる俺の携帯に、10時を過ぎてからタマからの着信がある。
携帯に直接電話してくるのは滅多にないことで、具合でも悪いのかと一瞬ヒヤッとしたが、
「坊っちゃん、まだオフィスにいるのでしたら、帰りにタマを迎えにきて頂けませんか。」
と、意味不明なことを言いやがる。
「あ?どこにいるんだよ。」
「つくしの部屋にお邪魔してまして。」
咄嗟のことにすぐに理解が出来ない俺に、
「つくしにも会えるし、マンションも知ることができるチャンスですよ。
どうします?タマを迎えにきますか?」
「…………。」
「とにかく、住所を言うのでメモしてくださいな。」
小声で住所を伝えるタマと、それをメモする俺。
「坊っちゃん、お待ちしてます!」
「……おう。」
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タマから教えられた住所に着くと、そこは病院からほど近い小綺麗なマンション。
部屋の前につき、ひとつ大きく深呼吸をして、ベルをならす。
「はーい。」
牧野の声がして、そのまま扉が開く。
「っ!ど、……道明寺!」
「よっ。タマに言われて迎えにたきた。」
「邸の方が来てくれるって言ってたけど、
まさか、……道明寺だったの。」
タマが退院して一週間、牧野の顔を見るのもそれ以来。
「タマは?」
「眠っちゃったの。」
「入るぞ。」
「えっ、ちょっと……、」
慌てる牧野を横目に部屋に上がり込む。
リビングの床の座布団の上で横になっているタマの姿。
「疲れたみたいだから、早く休ませてあげて。」
そう言ってタマの荷物を俺に手渡す。
俺はそれを受け取り、自分の携帯を取り出すと運転手を呼びだし、部屋まで来るよう伝える。
すぐに駆け付けた運転手に、
「タマを邸まで頼む。
俺は自分で帰るから先に行ってろ。」
そう告げて、タマを預けた。
「ちょっと、道明寺っ。」
「なんだよ、でけー声出すな。」
「ちょっと、なんで勝手にソファに座るのよ。
あんたもさっさと帰りなさいよ。」
「少し休ませろ。」
「休むな。人の家でくつろぐなっ。」
「いーだろ。」
「よくないっ!」
昔を思わせるこの言い合いに、どうしようもなく嬉しさが込み上げてくる。
「なに笑ってんのよ。
全くタマさんだったら、余計なことしてくれるんだから。
ちょっと!寝転がらないでよ、バカっ。」
「ここに泊まってくかな、俺。」
「ふざけるなっ。警察呼ぶよ!」
「はぁーー、疲れたな。」
牧野の言葉を無視してちいせーソファに長い足を伸ばす。
それを見て、牧野がすげー困った顔で俺を見る。
「…………道明寺、ほんと困るから、帰って。
誤解されるようなこと、しないで。」
誤解…………。
されて困るのは、あいつにか。
「…………牧野、あいつとマジで付き合ってんのか?」
ソファから起き上がり牧野の目を見て聞く。
「…………うん。」
「いつから?」
その時、俺の携帯が部屋に鳴り響く。
タイミングの悪さに舌打ちしながら画面を見ると、『大河原滋』の文字。
そんな俺を見下ろして牧野が言った。
「道明寺、お互い誤解されたくない相手がいるでしょ。
もう、帰って。」
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