タマの病室にF4が勢揃いしたことで、廊下の賑わいは更に加速し、さっきまで遠慮がちに覗いていたナースたちも、今では堂々と扉を開けて熱い視線を送ってくる。
それをあきらが優しく制して、扉を閉めようとドアに近付いた時、ナースの一人が叫んだ。
「牧野先生っ!こっちこっち。
先生も一緒に拝みましょ。こんな美男子が勢揃いするなんて一生に一度かもっ。」
その声に、ヤバイっ、と思ったが遅く、
「牧野?……まさか、おまえ牧野かよ。」
そう叫ぶあきら。
「あきら?どうした?」
「牧野って、あの牧野?」
病室にいた総二郎と類も声につられて扉へと近付いていく。
残された俺だけが、渋い顔でタマのそばに立ち尽くす。
せっかく、牧野への気持ちを再確認して、これから静かに動き出そうとしてる時に、こいつらに知られたら、すべてが面白おかしく流されていく。
深い溜め息を漏らす俺に、
「こういうことかよ、甲斐甲斐しく病院に見舞に来てると思ったら、おまえの目的はあれか?」
と、あきらに引っ張られて強引に病室に連れてこられた牧野を指差して、総二郎が言う。
「うるせー。邪魔すんな。」
「おいおい、マジなのかよ。
おまえはどこまで行っても諦めのわりぃやつだな。」
にやっと俺をみて笑う総二郎は完全に面白いおもちゃを見つけたガキのような顔をしてやがる。
「牧野、久しぶりだな。
白衣着てたら、誰かわかんなかったぞ。
医者になったのは聞いてたけどよ、こうしてみたら結構さまになってんじゃん。」
「まーきの、元気だった?」
「うん、花沢類。
みんなも元気だった?」
「おう。」
「うん。」
たぶんこいつらが牧野と会うのも6年ぶりだろう。
俺と別れた牧野は、完全に俺たちとの連絡を断った。
類でさえ拒否されたと聞いたときは、もう俺との繋がりを一切残さないつもりなんだろうと、ショックを受けた記憶がある。
「この再会は偶然か?
それとも…………、」
あきらが俺に視線を送ってくるが、
「偶然。
タマさんの手術を執刀したのはあたしだけど、
もう担当でもないの。
タマさん、もうすぐ担当の児島が回診にきますから、体温計って待ってて下さいね。」
そうバッサリ言い捨てて
「じゃあね、」
と病室を出ていく牧野。
それとすれ違いに担当医の児島が病室の外に姿を見せた。
「おう、牧野。
なんでここに?」
「ちょっとね。
もう終わったの?」
「あぁ、すげー疲れた。
先輩の話、長いんだよ。回診の時間だからって逃げてきた。
牧野、部屋戻るなら俺の着替えも持ってきてくれない?
今日もたぶん帰れそうにないから。」
「ん、わかった。
じゃあ、あとでね。」
聞きたくなくても、聞こえてくる会話。
知りたくなくても、雰囲気から伝わる二人の親密さ。
自然と俯きがちになる俺の肩に、総二郎がポンっと手を置いて、
「まぁ、現実は厳しいかもな。
……最強のライバル出現ってわけか。」
と呟いた。

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