こういう恋の始まり方 24

こういう恋の始まり方
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それから数日後。

今日は徳永商事主催のパーティー。

パーティー会場は外資系ホテルのウエディングホールを貸し切って行われている。

道明寺ホールディングスからは課長、部長クラスの社員も多く出席し、それに伴い秘書課の連中も同行しているので、パーティー会場には見知った顔がかなりある。

もちろん、牧野も今日はアリーナの子守り役として来ている。

さっきロビーで見かけたあいつは、相変わらず全身で「秘書ですオーラ」を出しまくった装いで、思わず笑っちまった。

あれでメガネでもかけてたら、マジで西田の妹ですって言ってもおかしくないレベル。

お堅いにも程があるだろ…と思いながらも、そういう所がむちゃくちゃツボなんだよな…と心の中で呟いて苦笑する。

パーティーが始まって少し経過した頃、一気に会場がザワついた。

周囲の視線の先を見てみると、会場の入口に親父とババァ、そしてラファエル氏が並んで入ってくるのが見えた。

アリーナの父親であるラファエルは、このパーティーに出席したあとフランスに戻る予定だ。

日本には約3週間滞在し、道明寺グループと新たにいくつかの契約を交わした。

今日はこの後、パーティーが終わるのを見計らって、別室で道明寺家とラファエル家での簡単な調印式も予定している。

数週間前に、アリーナと俺が2人でいる所を写真に撮られ雑誌に載って以来、ビジネス界では俺たちの動向が常に注目されていた。

その両家が一緒にパーティーに出席しているのだ、周囲がザワつくのも仕方がない。

笑顔を振りまいて挨拶している親父とババァを横目に、内心うんざりしていると、

「専務、今日は問題を起こさないでくださいね。」

と、西田が言う。

「あ?いつも起こしてるみてぇーじゃん。」

「そういう訳ではありませんが、さっきから専務の視線が同じ方向ばかり見ていますので。」

「……。」

牧野が気になって目で追ってしまっているのを西田にはバレバレだ。

「慎重に行動してくださいね。」

と、厳重に注意され、

俺は、

「分かってる。」

と、渋々頷いた。

……………

それから1時間程たった頃、パーティーも終盤となり会場内の人々が少しずつ帰り支度をはじめる。

俺もそろそろ調印式が行われる別室へ移動しようと思ったその時、

会場外のロビーから

「キャーーーッ!」と大きな叫び声がした。

何事だ?

西田の方を見ると、

「確認して参ります。」

と言って、声の方へ歩いていく。

と、今度は男の声で、

「階段から人が落ちたっ!救急車呼んで!」

と、いう声がした。

ロビーには大きな螺旋階段がある。

そこで、酒に酔ったやつが階段を踏み外したのか。

ふと、そんな事を思った瞬間、

「専務っ!!」

と、焦った声で西田が戻ってきた。

「?」

「専務っ、牧野さんが!」

「…牧野が?」

「牧野さんが階段から、」

西田がその先を言う前に、俺は全速力で駆け出していた。

パーティー会場を出て、ロビーに下りる螺旋階段。

そこには人だかりが出来ていて、そいつらを押しのけるように先へ進むと、階段下にはアリーナに抱かれるようにして横たわる牧野の姿が。

「牧野っ!」

俺は大声で呼び、階段を駆け下りた。

「牧野?牧野っ?」

目立った外傷は無いものの、俺の声に反応しないこいつ。

「何があった!?」

そばにいるアリーナに聞くと、

「私のせいで…、私を庇ってつくしが…」

と、泣きじゃくるアリーナ。

「救急車っ!救急車はまだかっ?」

「今呼んでいます!もうすぐ着くと思います!」

ホテルのスタッフがそう答えるも、待ちきれない。

牧野の身体をアリーナから引き剥がし、持ち上げようとした時、俺の側まで来た親父が言った。

「司、落ち着け!

頭を強く打っているかもしれない。彼女を動かすな。」

……………

1時間後。

俺はホテルの別室でラファエルとの調印式を行っていた。

あれから数分後、救急車が到着し牧野は運ばれて行った。

「付いて行く」と言う俺に、

「私に任せてください。牧野さんは大丈夫です。専務は今やるべき事をしてください。」

と、西田が静かに言った。

調印式の途中も、何度も携帯を見つめる俺。

西田からはまだ何も連絡が無い。

時間が経てば経つほど、最悪な自体が頭をよぎる。

階段から落ちて頭を強く打ったあいつ。

頭内で出血でもしていたら…、意識が戻らない事も…。

不安に押しつぶされそうになりながらも、時間だけがいたずらに過ぎていく。

すると、俺の携帯が短く振動した。

見ると、西田から

「牧野さんの意識が戻りました。

軽い脳しんとうだと診断されました。それと、右手首にヒビが入っているそうです。

アリーナさんが付き添っていますので、私はこれからそちらに向かいます。」

と。

意識が戻ったのは良かったが、手首にヒビ。

落ちる時にかなり強く手を打ちつけたのだろう。

携帯をしまいながら大きく息を吐く俺に、親父が、

「西田からか?」

と聞く。

「…ああ。」

「彼女の容態は?」

牧野が心配でたまらない事を親父は見抜いているし、俺ももう隠すつもりもない。

「意識が戻った。手首にヒビが入ってるらしい。」

その言葉に、親父は少し眉間にシワを寄せた後、コクコクと頷いた。

………

それから少しして、調印式は無事に終了した。

硬く握手を交わした親父とラファエル氏。

それと同時に西田が戻ってきて俺に耳打ちする。

「牧野さんは徳洲会病院に運ばれました。」

一刻でも早くあいつの様子を見に行きたい。

いても立っても居られない俺は、立ち上がると

「私はここで失礼します。」

と、親父たちに告げる。

すると、親父が俺を真っ直ぐに見つめて言った。

「どこへ行く。」

「牧野が運ばれた病院に行ってくる。」

「それは、必要なことか?」

「あ?」

「秘書が怪我をしたのは深刻な事態だ。

ただ、おまえが行く必要はあるのか?」

親父の言う事も理解出来る。

これが、牧野以外の秘書であれば、上司でもない俺が病院には行かないだろう。

でも、今は違う。

秘書だろーと、上司だろーと、そんなの関係ねぇ。

俺が行く理由はひとつしかねーから。

「ああ。

あいつは俺にとって大事な女だ。

だから、行かせてくれ。」

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