出来ない女と、しない男 27

出来ない女と、しない男
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恒例の『お見合い』は、メープルの喫茶ですることにしている。
他のホテルを使うこともなく、レストランで食事をすることもない。

あくまで、『挨拶』程度だと割りきり、自分のテリトリーでお茶を一杯飲むだけ。
一時間ぴったりで退席するのもいつものこと。

いつも通り、一時間がたった頃、西田が
「そろそろお時間です。」
と俺らのテーブルまで言いに来た。

「このあと、お食事でもいかがですか?」
そう食い下がる女に、

いつもの、
「次の仕事がありますので」ではなく、
今日は、
「彼女とデートの約束があるので。」
と言って退席する俺。

唖然と俺の事を見つめる女には目もくれず、
「西田、今日はもう帰っていいぞ。」
そう言って俺は愛しい女に電話した。

牧野を向かえに大河原邸まで行くと、いつもなら門の前で待っているはずの牧野の姿がない。
車を停めて家の呼び鈴を鳴らすと、中から滋が顔を出した。

「牧野は?」

「まだ用意出来てないみたい。
会社からさっき帰ってきて、バタバタ部屋に入って行ったから。
中で待ってる?」

「ああ。」

滋に連れられて家の中に入ったが、あいつの姿はリビングにもなく、まだ部屋にいるらしい。
俺はそのまま牧野の部屋の前まで行くと、
「牧野。」
そう言いながら部屋をノックした。

「えっ!道明寺?」
中からは焦った声がする。

「入るぞ。」

「ダメっ!」

「何でだよ。」

「今、着替え中!」

「……オッケー。」

そう言うと、俺は牧野の部屋の扉をゆっくりと開けた。
中には、鏡の前でワンピースの背中のファスナーを上げている牧野の姿。

鏡越しに俺と目が合い、
「っ!なんで、入ってきてんのよっ!」
と叫ぶこいつ。

「オッケーって言ったろ?」

「オッケーって……あんたがオッケーでもあたしはオッケーしてないでしょ、バカっ!
とにかく、出てって。
すぐに用意するから。」

そう言いながら睨んでくる牧野に俺は無言で近付くと、うしろからすっぽり包み込むように抱きしめた。
何日ぶりだ?こいつに触れるのは。
あのキスをして以来、毎日電話で話していたけれど、こうして会うのは初めてだった。

「道明寺っ。」
鏡越しに見るこいつは心なしか頬が赤い。
そんなこいつの首もとに顔を埋めて

「どこか行きたいとこあるか?」
と聞く俺。

「行きたいところ?……別に……」

「じゃあ、俺が決めてもいいな。
行くぞ。」

牧野の手を取り部屋を出る。
リビングを抜けて玄関まで行く途中、俺らを見て
「ラブラブだこと。」
と滋がからかってくる。

それに、
「おう。
滋、今日、こいつ帰らねぇからよろしく。」
そう告げて引きずるように牧野を連れて家を出た。

車に乗り込んだ途端、
「……道明寺……」
と不安そうに俺を見つめるこいつ。

「南の島でも行くか?
それとも、寒いとこがいいならカナダの別荘でもいいぞ。」

「はぁ?何よそれ。あんたが言うと冗談に聞こえないから。」

走り出した車の中でそう言い返してくる牧野。
俺はそんなこいつの手を握り、

「まぁ、俺にとってはどこでもいいんだよ。
とにかく、……おまえと一緒なら。」
そう言って行き先も決まっていない車のスピードをあげた。

行き先はどこでもいい。
こいつが行きたいとこならジェットを飛ばしてどこでも連れていってやる。
そんな俺に、こいつはケロッとした口調で唖然とする言葉を投げてきた。

「あのさー、道明寺。
あたし、明日から有休取って滋さんたちと温泉に行くの。
朝早くに出発予定だから、今日帰れないのはまずいんだけど…………えへへ。」

聞いてねぇ。
今の今まで、全くそんなこと聞いてねぇ。

「だって!あたしだってこの事聞いたの数日前だもん!
ほんとっ、お金持ちの人って、そこのコンビニ行ってくるみたいな感覚で旅行に行くよねー。
いつもいきなり言われて、休みとるの大変なんだからっ。」

俺の不機嫌さなんてお構いなしに文句を言い出すこいつ。
でも、最後に小さく、
「ごめん。……ごめんね、道明寺。」
と上目使いで俺を見てくるから始末がわりぃ。

「おまえさ、本気で悪いと思ってるのかよ。」

「思ってる。本気で。」

「伝わってこねぇ。」

「え?伝わらない?
……お土産買ってくるから許して。」

マジでこいつは俺が今まで会ったことのねえ生き物だ。

今日の俺の計画は、このままどこかにこいつを連れ込んで、甘い夜を想像してた。
高校生じゃねーんだからと自分で苦笑するほど、夢にまでこいつが出てくる。
あまりに大切すぎて、触れることも、キスすることも躊躇するほど今の俺はこいつに惚れてる。

そんな俺の気持ちを試しているかのように、牧野は俺の前でかわいく笑い、そしてするりと逃げていく。

「土産はいらねーから、さっさと帰ってこい!」

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