なんだ?これはなんだ?
牧野に抱きつかれたと気づくまで、バカみたいに時間がかかった。
「ま、牧野?」
「ん?」
「どうした?」
「……なんとなく。」
抱きつたままそう話すこいつ。
なんとなく…………。
なんだよそれ。
普段なら絶対おまえからしないこんなことを、してくるのには相当な理由があるはずだ。
いつものこいつに免疫がありすぎる俺は、こんなレアな牧野の姿に嬉しいよりも何故だか胸騒ぎがして堪らない。
やっぱりあの男と何かあったのか?
あの小さな紙は何だったんだ?
聞かないでおこうと思ってたのに、それらのことが頭をグルグル回り出す。
「牧野、あのヤローに何か言われたのか?」
「……あのヤロー?」
「徳井だよ。」
その名前を出した途端、俺の胸からガバッと離れ、
「なんで?……知ってたの?」
と驚いた顔で聞いてくる。
「あいつと話したのか?」
「もしかして、それで飲み会に来たの?」
「何、話した?」
「誰に聞いたの?」
完全に噛み合ってない俺らの会話。
「あいつから何渡された?」
「……見てたの?」
やっと噛み合った会話は聞かないでおこうと思ってた言葉。
「おまえが小さな紙、持ってるのを見ただけだ。徳井と話したんだろ?」
「…………。」
「……おまえ、まだあいつのこと好きなのか?」
頭1つ分小さなこいつを見つめながらそう聞いた俺に、牧野は無言のまま鞄から俺があのとき見た小さな紙を取り出した。
「徳井さんが渡してきた。」
そう言ってそれを俺に差し出す。
「名刺か。」
「裏。」
「あのヤロー。」
裏には携帯の番号が書かれてあった。
「徳井さんが、空いた時間にかけてきてって。」
牧野のその言葉を聞いて、この名刺を破り捨てたい衝動に駆られるが、なんとか我慢してもう一度牧野に聞いた。
「おまえはまだあいつが好きか?」
すると、俺を見上げてかわいく頭をブンブン振るこいつ。
そして、
「あたしの空いた時間はあんたに使うことにしてるから。
それに、あたしには他に好きな人がいるし。」
と、得意気なこいつ。
「おいっ、好きなやつがいるなんてっ、俺は聞いてねーぞっ。」
慌てて俺がそう言うと、
「……まだ、言ってないし。」
と、暗闇でも分かるほど照れた顔で、
「道明寺、あたしあんたが好きみたい。」
と牧野が言った。
「んっ……ンン…………道明寺っ!」
色気のねぇ声でせっかくのキスが中断される。
牧野から好きだと言われた瞬間、
言葉よりも体が動いた。
「信じらんないっ!」
キスで艶々光った唇を尖らせて抗議してくる牧野に、
「今まで我慢したんだから、おとなしくしてろ。」
そう言って再び牧野を抱き寄せた。
キスだけじゃ我慢できないけど、
キスだけでも満たされるほど……激しく。

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コメント
おぅ司君、いつものぶれない積極性‼
前のサイトでも読んでますが、何度読んでも楽しいですね。
更新ありがとうございます(^^♪