出来ない女と、しない男 20

出来ない女と、しない男
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牧野と一緒に過ごすようになって1ヶ月。
俺は生まれてはじめて試練に耐えている。

手を握ることだけは、強引に許してもらえたけれど、その先へと暴走しそうになる自分をなんとか必死に抑えている。

あいつを知れば知るほど……
俺は牧野に惹かれていく。

食事をしても、映画に行っても、自分の分は自分で払うと頑固だったり、
行き先が近い場所なら俺の迎えを断り、電車で待ち合わせ場所まで来たり。
全然甘えてくれねぇけど、
でも、俺がする些細な事に、
「ありがとう。」
と言う礼儀正しさと、笑顔が頭から離れない。

そんなこいつを見ていると、
繋いだ手を引き寄せて抱きしめたい。
隣に座るこいつの肩を抱き寄せたい。
別れ際に軽くでいい、キスをしたい。
そんな欲望が沸々と溢れだす。

今日も仕事終わりに会いに行こうと思ってたが、時計を見ると11時過ぎ。
会いたい気持ちを抑えて電話で我慢する。

「もしもし。」

「俺だ。」

「うん。」

「今日は遅くなったから行けねぇけど、明日は会えるか?」
そう聞く俺に、

「明日は用事があって無理。」
と相変わらずつれない返事。

「用事って何だよ。それが終わってからでもいいぞ。」

「ダメ、遅くなると思うから。
明日は管理課の飲み会なの。
しばらく出席してないからどうしても断りきれなくて。」

「……分かった。早く終われば連絡しろ。
迎えにいく。」

「……うん。」

端から見たら俺らはれっきとしたカップルに見えるだろう。
けど、肝心のあいつの気持ちはまだ聞けてない。
焦る気持ちとは裏腹に、早まるなともう一人の俺が言う。

次の日、牧野との約束がない俺は、久々に遅くまでオフィスに残って仕事をしていた。
そこに、西田が気になることを言ってきた。

「専務、この間社員名簿で探していました『谷』という男性社員のことですが、」

「何か分かったか?」

牧野の実家で母親に勘違いされた『谷さん』。
牧野の元カレだということは分かったが、確か桜子も同じ会社のやつだと言っていたはず。
そう思って、すぐに社員名簿を調べたが、数多くいる谷という名前の中でそれらしい年齢の人物はいなかった。
もしかしたら関連会社のやつか?
そう思いながら保留になっていたその案件。

「実は、管理課に谷という社員がいたのですが……、 」

「辞めたのか?」

「いえ、それが……、隣の課の経理部長の娘と結婚して今は徳井と名前が変わっていることがわかりまして。」

…………そういうことか。
元カレは牧野と別れてすぐに結婚したと言っていた。
経理部長といえば、社内でもかなり幅を利かせていると噂で聞いたことがある。
その娘との縁談が持ち上がり、彼女である牧野を捨てたか。

「今は徳井になったんだな、その男。
どの部署にいる?」

「それが、……先週から管理課に戻っています。社内で先週、数名の人事異動がありましたが、それでその徳井氏も管理課になっています。
今日辺り、どこかで歓迎会が行われてるかと。」

「歓迎会?…………マジかよ。
あいつは知ってて行ってんのか?」

思わず独り言が口をつく。
そんな俺に、

「専務。私たちも顔を出しましょうか、歓迎会に。」
と西田が真顔で言ってくる。

「あ?」

「専務が顔を出せば皆さん喜ばれます。」

「でもよ、……」

歓迎会、一度も社内のそういうものに参加したことがない俺。
牧野のことは気になるが、それだけを理由に行くには無理がある。

そんな俺に西田が、
「気になることはご自分の目で確かめて下さい、専務。」

そうすべてを知っているかのように、意味深に言った。

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