出来ない女と、しない男 19

出来ない女と、しない男
Processed with VSCO with al1 preset

その日から専務、いや、道明寺の怒濤の攻撃が始まった。

空いた時間は…………というよりも会社にいる以外はあたしのために空けてるんじゃないかと疑うほど頻繁に会いにやって来る。

「つくし、あんた騙されてるよ。」

「え?」

毎日のようにあたしを家まで迎えに来る道明寺を見て滋さんが言う。

「これって、すでに付き合ってると同じだよね。司のあんな嬉しそうな顔はじめてみたわ。
まぁ、今日もデート楽しんでおいで。」

「ちょっと!デートじゃないって!」

「はいはい。いってらっしゃい。」

道明寺を知るためのお試し期間。
あたしは自分にそう言い聞かせている。

けど、この人は知れば知るほど…………、
あたしを混乱させる。

仕事っぷりは新聞や雑誌、ネットを見れば一目瞭然。冷徹で完璧主義。
それなのに、いざプライベートになるとドキッとするほど甘くて、そして、男の顔をする。

二人きりになると必ず手を繋いでくる道明寺。
初日から手を繋がれたあたしは戸惑って
「道明寺、離して。」
そう言うと、更に恋人繋ぎに変えるこの人。

「ちょっと!」

「何だよ、腕組んだほうが良かったか?」
なんて余裕の笑み。

そんなペースであたしは道明寺に振り回されっぱなし。

今日も映画館に来たあたしたちは、道明寺が予約していたカップル席で今話題のアクションものを見ていた。

もちろん、映画の間もあたしの手を離さない道明寺。
そして、あたしに無言でジュースのカップを差し出して飲めと合図する。
あたしが、黙ってそれに従うと、あたしが飲んだあとですぐに同じストローを使って飲むこの人。

あたしは映画館の暗闇の中で、
「自分の飲みなさいよ。」
と睨んでやっても、
「あとでな。」
と甘い顔で笑う。

「じゃあ。」

「おう。」

いつも通り家の前まで送ってくれて、毎回同じ言葉で別れるあたしたち。
その時に少しだけ見せる切なそうな顔が、回を重ねていく内にあたしの心も締め付けはじめていた。

「司とはどうなの?」

久々に花沢類とお茶する土曜の午後。

「……どうって?」

「だから…………襲われたりしてない?」

「っ!襲う?!」

「プッ……冗談ジョーダン。」

花沢類の冗談は冗談に聞こえない。

「毎日会いに来てるんだって?」

「……んー、まぁ、ほぼそんな感じかな。」

「あの司がねー、……あり得ない。」

「?……そうなの?」

笑いながらコーヒーを飲む花沢類。
花沢類と道明寺は昔からの付き合い。
『今までの道明寺』をこの人はよく知っているはず。

「俺の知ってる司は、
女の電話には出ない。
女と会う約束はしない。
自分から会いに行くなんて論外。
そういう男だよ。」

「…………。」

「だから、今の司を見ると、牧野に夢中なんだってよくわかる。
ムカつくけど…………、
妹の彼氏としては合格かな。」

いつからだったか、花沢類にとってあたしは妹のような存在になった。
仕事のことも、恋愛のことも、花沢類には素直に話せる存在。
だから、あたしも今では彼をお兄ちゃんのように思ってる。

「花沢類。あたし、……」

「大丈夫だよ、牧野。
司を信じてみたら?」

あたしの言いたいことは花沢類にはお見通しらしい。
『もう一度、恋をしてみようかな。』

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています😀応援お願いしまーす⭐︎

コメント

タイトルとURLをコピーしました