出来ない女と、しない男 15

出来ない女と、しない男
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今日は久々に大河原邸で集まることになっていた。
メンバーはいつも通り。
だけど今日は特別な日。

『滋さんの26才の誕生日』

本当なら、大河原財閥のご令嬢の誕生日といえばどこかのホテルを貸しきって盛大に行われるはずなのに、滋さんはあたしたちと暮らすようになってからそういう誕生日はやめたらしい。

代わりに毎年この邸であたしたちだけで小さなパーティーが開かれる。
パーティーの途中でお祝いの電話やプレゼントだけを届けに友人が来たりするけれど、
基本いつもF3と桜子とあたし、そして、今年は専務も。

プレゼントはもう用意した。
今年も花沢類と一緒に買いに行った。
花沢類が来たら、そのプレゼントにメッセージカードを書き添えて、滋さんに渡すつもり。


今日は滋の誕生日。
大河原邸で集まることになっている。

誕生日はどうでもいいけれど、牧野に会えると思うと朝から浮かれぎみの俺。
仕事もハイスピードでこなしていく。

「西田、頼んであったもの出来てるか?」

「はい、ご用意してあります。」

滋へのプレゼントは用意した。
ミーハーで食い意地だけは人一倍のあいつなら、喜ぶだろうと手っ取り早いプレゼント。

パーティー開始の8時少し前に大河原邸に着いた俺は、桜子に連れられてリビングに来るが、あいつの姿がない。

「あいつは?」

「先輩ですか?
類さんと部屋にいるんじゃないかな。」

「あ?類と?」

「はい。」

その時、ピンポーンと玄関からチャイムの音がした。
「あっ、西門さんたちかな?
道明寺さんそこに座ってて下さい。」
そう言ってパタパタと玄関まで走っていく桜子。

座ってなんていられねぇ。
俺はあいつの部屋まで大股で歩いていき、
その扉を力任せにドンドンとノックした。

「はい?」
中から聞こえたのは牧野の声じゃなく類の声。
その事に猛烈に不機嫌になる俺。
中から開くのを待たずに部屋の扉をあけると、
机に寄り添いながら何かを書いている二人の姿。

「類、てめぇーここで何してるんだよっ。」

「よっ、司。来てたんだ。」

「来てたんだじゃねーよ。
二人でコソコソなにやってんだよ。
おまえも、部屋に男を入れてんじゃねーよ。」

「はぁ?花沢類だもん、いいでしょ!」

「よくねぇ、類だから全然よくねぇ。
こいつは人畜無害な顔してるけど、中身は雄ライオンさながらの野獣だぞ!
繁殖時期になったら、おまえなんて、あっという間に…………」

そこまで言った俺の背後から
「司、もう暴れてんのか?」
と言って、俺の首に腕を回して締め付けやがる総二郎の声。

「いてぇー離せっ。」

「おとなしくするなら離してやる。」

「牧野っ、類から離れろ。
そしたら、おとなしくしてやる。」

俺がそう言うと、

「滋から聞いてたけどよ、司マジで牧野に惚れたのかよ。」

そう呆れた声であきらの声。

「とにかく、パーティーはじめるぞ。
類と牧野も用意出来たんだろ?行くぞ。」

結局、俺は総二郎に首を捕まれたままリビングまで連れてこられた。
類と牧野は……というと、二人で仲良さげに何かを話してやがる。
気に食わねぇ。

パーティーが始まってからもそんな二人が気になって、嫌がる牧野を強引に俺のとなりに座らせた。
あきらと総二郎にそんな様子を爆笑されながらも、睨んでくるこいつがすげー可愛いなぁと恋愛ボケの俺。

今日の主役の滋もワイン片手に上機嫌だ。
あきらの母親から差し入れされた、見ただけで激甘だとわかるケーキを食いながら、
「今年こそは彼氏を作る」と言い張り、
桜子からは「毎年同じこと言ってますね」と言われる始末。

そんな滋に俺は1枚の封筒を渡した。

「誕生日プレゼントだ。」

「えっ、何?司から貰えるなんて~。」
と嬉しそうに開ける滋。
そして、中身を見て固まった。

「いや、嬉しいけど、嬉しいけどさっ、
これ、誕生日プレゼントにはどうかと。」

「何でだよ。なかなか手に入らねぇんだぞ?」

「そうかもしれないけど、適当に選んだでしょ!
これでもあげとけば喜ぶかなって!」

滋の手の中にあるのは、来月から始まるメープルのデザートバイキングのチケット。
今人気のイケメンパティシエがメープルのために来日して2週間だけ腕を奮う。
その希少なチケットを滋のために用意した。
そう言えば聞こえはいいけれど、
まぁ、一番手近にあったものを西田に用意させただけ。

「つくし、やっぱり司だけはやめておきなっ。
この男はこういう薄情者だよ。
一年に1度の誕生日にも、お金も手間もかけないプレゼントしかくれない奴だからね。」

そう言って俺のとなりまで来た滋は、俺の頭をグシャグシャにかき混ぜやがる。

「やめろっ、バカっ!」

「バカはどっちだ!
つくし、司と付き合っても誕生日は期待しない方がいいわよ!」

「な訳ねぇだろ!
こいつが欲しいっつーもんは、世界中探してでもプレゼントしてやる。」

「腹立つーーーっ。」

そんな俺と滋の言い合いが終わらないうちに、玄関からチャイムの音がした。
桜子がまたパタパタと出ていき、すぐに戻ってくる。

「滋さん、お客さんですよ。
プレゼント渡しに来たみたい。
上がってもらいます?」
そう言って玄関の方を見る。

「誰だろ。見てくる。」

やっと滋のうるせぇ絡みから開放されてホッとしたのも束の間、滋が一人の女を連れてリビングに戻ってきた。

「友達がプレゼント渡しに来てくれたの。
せっかくだから一杯飲んでいって貰うわ。
こちら、重光 彩佳さん。」

そう言って紹介されたその女は、いかにもどこかの令嬢らしい完璧な振る舞いと、清楚な服装で俺らに会釈したあと、俺をまっすぐに見つめて言った。

「先日はどうも、道明寺さん。」

その言葉に滋が俺と女を見比べて言う。

「ん?司と知り合い?」

俺よりも早く口を開いた女は、さも得意そうに言った。

「ええ。先週、道明寺さんとお見合いしたんです、私。」

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