イツモトナリデ 31

イツモトナリデ

1ヶ月後…
今日は都内にあるホテルのガーデンを貸し切って、大河原家の婚約披露パーティーが開かれている。

道明寺家と引けを取らない大財閥なだけあり、各界からの大御所が勢揃いし豪華な宴だ。

大河原家のご令嬢である滋さん。
モデル並みのスタイルにショートカットがよく似合い、笑顔の素敵な女性。

一度は、司の嫁に…と期待したものの、その夢は儚くも敗れ、今は滋さんの隣にはハンサムな紳士が腕を組んで立っている。

幸せそうな彼女の顔を眺めていると、
「お久しぶりです。楓さんと椿さん。」
と、隣で声がした。
振り向くと、そこには二階堂氏が笑顔で立っていた。

「お久しぶりです。」

「お二人だけですか?」

「いえ、司も一緒ですが、あそこに。」
そう言いながら離れた場所に立つ息子に視線を向けると、
幼馴染である美作、西門、花沢家のご子息たちと談笑している姿が目に入る。

「おー、噂のF4ですか。」

「ふっ…、ただの悪ガキ4人組ですわ。」

そう言って謙遜してみるが、4人揃って180cmを超える長身の彼らは、どこへ行っても目立つ存在で、小さな頃から持て囃されてきた。

今も、4人が立つその場所だけが他と違うスポットの様に輝いている。

「倫也さんは?」

「息子は仕事がありまして、遅れてくる予定です。」

「この間、雑誌に載っているのを拝見しました。
お仕事順調なんですね。」

「ええ、まぁ、お陰様で。
あとは、結婚してくれれば肩の荷が下りるんですけど。」

そう言って苦笑いする二階堂氏に、私も同調して首を縦に振ると、
「あー、そう言えば!」
と、何かを思い出した様に私を見つめて言った。

「司くんは、牧野さんとお付き合いしているそうですね。」

「え?」

「倫也から聞きました。
倫也と牧野さんは学生の頃からの友人でして、私も何度かお会いしたことがあるんですよ。
可愛らしい方で、倫也もまんざらでもなさそうだったから、ついこの間、牧野さんとの交際を勧めてみたら、
牧野さんと司くんがお付き合いしてるって聞いて、驚きました。」

「あー、はぁ。」

司が付き合っていると言っていた牧野つくしさん。
二階堂氏の耳に入るまで交際の噂は広まっているようだ。

そんな会話をしていると、2組のご夫婦が私たちへと近付いてきた。

「こんにちは。ご無沙汰しております。」

そのご夫婦とは、茶道の家元である西門家と、花沢物産の社長である花沢家のご夫婦だ。

「滋さん、幸せそうですな。」
そう言って西門家の主人が目を細めて今日の主役を見つめたあと、

「私たちの息子は誰が1番先に結婚式を挙げれるのでしょうね。」
と、苦笑しながら大袈裟に首を振って見せる。

視線の先にいる4人組は未だに誰も結婚していない。
本人たちがその気になれば、すぐにでも結婚相手は見つかるだろうに。

すると、花沢家の奥様が言った。
「あら、司さんは、結婚が近いんじゃないですか?」

「え?」

「確か、牧野さんとお付き合いしてるって聞きましたけど。」

その言葉に、私は驚いて聞き返す。
「…彼女をご存知なのですか?」

「いえ、直接お会いした事はないですけど…、息子の口から何度も名前は聞いてますので、」

「…と言うと?」

「お恥ずかしいのですが、息子はのらりくらりとした性格なもので、学生時代も学校に行かないと度々言い出してたのですけど、牧野さんと出会ってからはなぜか学校が楽しくなった様で、毎日眠い目を擦りながらも登校してました。
卒業できたのは彼女のおかげでしょうね。」

「へぇー、そうですか…。」

「うちとしては、牧野さんが息子のお嫁さんに来て頂けたら安泰ですけど、司くんとお付き合いしているのなら、仕方ないですわ。」

羨ましそうにそう話す花沢夫人に、私は曖昧に笑って見せたところで、
ホールに司会者の声が響いた。

そろそろ、宴はお開きの様だ。
二階堂氏やご夫婦に別れを告げて、私たちもパーティー会場を後にする。

ホテルのエントランスを抜けて、車寄せで車を待っていると、司がF3と離れてゆっくりと私たちの方へ歩いてくるのが見えた。

親の目から見ても、見惚れるほど美しい。
周囲の視線が司に注がれているのが分かる。
それを見ながら、隣に立つ椿が楽しそうに言った。

「どうやら、司が選んだ女性は当たりくじだったようね。」

「どういう意味よ。」

「だってお母様、周囲の方がお嫁に欲しいと言っている女性よ。あたしもぜひ会ってみたいわ。」

そう言ってウインクした椿は、近くまで来た司の背中を、
「やるじゃない、司っ。」
と言いながら、豪快に叩く。

「いってぇー、姉ちゃんのバカ力どうにかしろよっ。」

「何よ、軽く叩いただけじゃない。」

「っつーか、なんで叩くんだよっ。」

車に乗り込みながら姉弟喧嘩が続く2人。
そんな2人を見ながら、なぜか私はさっきの椿の言葉が頭から離れなかった。

「司が選んだ女性は当たりくじ」

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