イツモトナリデ 28

イツモトナリデ
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ババァとの話が終わり、久しぶりに邸の自室の東部屋に入ると、ポケットの中の携帯が鳴り出した。

滋からだ。

「もしもし。」

「司?仕事は終わった?」

「ああ。」

携帯を耳に当てながらソファにドカリと座る。

「来月、婚約パーティーを開くことになったの。
おばさまと椿さんと司に招待状を送らせて頂くわ。」

「おう。出来るだけ早く送ってくれ、じゃねーと、うちのババァがおかしな勘違いしてるからよ。」

「勘違い?」

「ああ。社内の噂を鵜呑みにして、俺とおまえが結婚するって。」

「はぁ?!私と司が?やめてよねっ!」

「こっちのセリフだ。」

そう言いながらお互い笑い合う。

「で?つくしの事は話したの?」

「ああ。」

「おばさまの反応は?」

「良くわねーけど、気にしてねぇよ。」

ババァがなんと言おうと、牧野の事は諦めるつもりはない。
プライベートには口を挟まないという暗黙の了解で、仕事には全身全霊かけてきた。

もしも、そのルールを向こうが破るなら、ババァが困るだけの切り札はいくつか用意してきている。

「そう言えばこの間、つくし、大丈夫だった?」

「あ?何がだよ。」

「つくしの前で言ったでしょ。
交際宣言はまだしない方がいいって。」

「…あー、」

俺と滋が付き合ってると噂になっている社内の奴らに、堂々と交際宣言でもしたら?と言った滋の提案。それに、
俺はノーと言った。そのことだろう。

「あれ、つくし、気にしてるんじゃないかなぁ。」

「気にする?」

「うん。
司が、つくしとの交際を秘密にしたいって考えてると思ったはず。
あのあと、何か言ってなかった?」

あのあと、牧野の部屋で2人で過ごした。
でも、確かにそういえば、抱いてる最中も心ここに在らずでいつもと様子が違ったような…。

「滋、わりぃ。電話切るぞ。」

「ん。つくしの事頼んだわよ。」




滋の電話を切った後、俺は車を飛ばして牧野のマンションへ向かった。
21時過ぎ。
いくら週末とは言え、急に押し掛けるには遅い時間だろう。

ただ、きちんと目を見て伝えたい事がある。
長年、牧野と一緒にいて、ひとつだけ長けたスキルがあるとすれば、あいつの目を見ると感情が読めるという事だろう。

いつも真っ直ぐに見つめてくる視線が、時々揺らいだり潤んだりする。
嘘を付けないあいつらしく、動揺したり不安だったり、いつもその瞳は正直で、それが俺を安心させる。

俺だけに見せる感情。
俺だけが分かる感情。

だから、今日もきちんとあいつの目が見たい。

マンションの前につき、携帯を鳴らすと3コール目で牧野の声がした。
「もしもし。」

「俺だ。何してた?」

「ん?お風呂上がったところ。
道明寺は?」

「おまえのマンションの前にいる。」

そう言うと、一瞬間が開いた後、
「えっ?今?!」
と、驚いた声が返ってきて苦笑する。

「なんだよ、動揺しすぎだろ。
浮気でもしてんじゃねーよな?」

「ちっ、違うけど!
今ね、両親が泊まりに来てるの。」

小声でそう話す牧野に、俺は頭を抱える。
そうだった、牧野から先週聞かされてたのに、すっかり忘れてた。

「わりぃ、そうだったな。出直す。」
そう答えると、

「何か用だった?」
と、牧野が聞く。

「…あー、ちょっとおまえと話したい事があった。
けど、来週にする、いつでもいーから、時間空けといてくれ。」
そう言って、エンジンをかけ直すと、

「ちょっと待って!
少しだけなら大丈夫。今から下りていくから。」
と、言って電話が切れる。

5分後、家から出てきた牧野は俺の車を見つけて走ってきた。

「ごめんっ!遅くなっちゃった。」

「大丈夫かよ、両親は?」

「あー、2人でテレビに夢中だったから大丈夫。」
そう話す牧野は、風呂上がりなのか化粧っけもなく、髪も少し濡れている。

思わずその頬に手を伸ばし、
「会えねぇかと思ったから、すげぇ嬉しい。」
と、甘い言葉が漏れると、
その甘さに耐えられなくなった牧野が、視線を泳がせる。

ここ3日、残業続きで牧野に触れていない。
一度覚えると蜜の甘さは麻薬のような物で、我慢が効かない。
助手席に座る牧野を引き寄せて、その唇に吸い付くと、全身が痺れるほどの快感に襲われる。

ゆっくりその蜜を味わった後、離れた唇で牧野が
「話って?」
と聞いた。

「おまえとの事、ババァに話した。」

「えっ?」

「言い寄られてるのかって聞かれた。」

冗談ぽくそう言うと、牧野の目が揺らぐ。

「気にすんな。
言い寄ってるのは俺の方だって堂々と宣言してやったから。」

「はぁ?どうしてそういう事言うのよっ。」
俺の胸をドンと叩いて抗議してくるこいつ。

「牧野。」

「ん?」

「おまえも知ってる通り、ババァは鉄の女だ。
今まで散々刃向かって衝突してきたけどよ、これからはそう言うわけにいかねぇだろ?」

「どう言う意味?」

「俺だけなら今までの関係でいーけどよ、おまえまでそんな風な関係にさせたくねぇ。
だって、嫁と姑になるんだもんな。」

その言葉に目をでかくして、
「あんた、本気?」
と、つぶやくこいつ。

「本気に決まってるだろバカ。
他の奴らに交際宣言する前に、きちんと俺の口からババァに伝えたかった。
だから、待ってくれって言ったんだ。
不安にさせたか?悪かった。」

牧野の少し潤んだ瞳は真っ直ぐに俺に向けられていて、もう揺らいでいない。

「っつーか、俺的には全世界の奴らに交際宣言してーんだけど。」

「バカなの?あんたって人は……。」

「だってよ、滋と噂になるなんて、どんな罰ゲームだよ。」

「それ、滋さんに言ったらキレられるよ。」

呆れた顔で俺を見た牧野が、少し視線を逸らし「あっ!」と小さく叫んだ。
その視線の先を見てみると、マンションの入り口に立つ1人の中年の男。

「道明寺、あたしそろそろ行くね。」

「あ?どうした?」

「パパが心配して見に来てる。」

視線の先にいるのはどうやら牧野の父親か。
俺の返事も待たずに車から降りた牧野は小走りでマンションへと戻っていく。

それを追って俺も車から降りた。

牧野と父親がマンションの中へ入っていくその背中に向けて、
「こんばんは。」
と、声をかける。

すると、同時に振り返り、
「道明寺。」
と、牧野が言った。

驚いた顔で俺をみる父親に、俺は頭を下げて言った。

「こんばんは。道明寺司と申します。
つくしさんとお付き合いさせて頂いています。」

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