道明寺と2人で店を出た後、手を繋ぎながら夜の街を歩く。
「ようやく帰ってきたって実感してる。」
「うん、あたしも今同じこと考えてた。」
会えば喧嘩ばかりのあたしたちだけど、やっぱりこの人の隣が1番落ち着く。
「4年、めちゃくちゃ長かった。」
「そう?あたしはあっという間だったかも。」
「そういうとこだよな、俺たち。」
「何が?」
「俺の方がおまえの何千倍も想ってるって事。」
あたしのことを睨みながら言ってくる道明寺。
そういう拗ねた発言にキュンと胸が鳴り、リップサービスがしたくなる。
「あたしもこの4年間、会いたくて会いたくて堪らなかったよ。
あたしもあんたと同じくらい想ってるし。」
「クッ…嘘くせぇけど、でも嬉しいから許してやるよ。」
そう言って綺麗に笑いながらあたしの頭を撫でる。
「そう言えば、あれマジな話か?」
「ん?」
「バイトの男が告ってきたって。」
「あー、……本当だけど…。
もうその子にはちゃんと断ったし。」
「その子って、まさか年下か?」
「ぷっ…そう、高校生。」
3つも年下の高校生からの告白。
きっと一瞬の気の迷いで本気だとは思えない。
それなのにこの男は、
「マジで明日会いに行ってやる。」
と、キレ気味に言う。
「バカっ、絶対やめてよ!」
「どこの学校だよ。」
「だーかーら、もうちゃんと話してあるから大丈夫っ!」
「ったく、相変わらずおまえがキョトキョトしてるからだろ」
4年前ならここから軽い喧嘩に発展していたあたしたちも、
今ならこれが道明寺の甘いヤキモチだと分かっているから、
あたしもちゃんと言葉で返す。
「彼氏がいるってちゃんと話してあるし、あんたがくれたこのネックレスも毎日付けてるから。」
道明寺があたしの誕生日にくれたハートのネックレス。
彼氏さんからのプレゼントですか?とバイトの女の子に聞かれた時も迷わず
うん。と答えたあたし。
今日もハイネックのセーターの下に付けてきたハートのネックレスを道明寺に見せると、
なぜか道明寺の視線はその横の方に注がれる。
そして、
「これって、この間の?」
と、聞いてきた。
これ…とは、あたしの首についた赤い痕。
恥ずかしくて、視線を逸らすと、
「痛いか?」
と、心配そうに聞く道明寺。
「ううん。」
赤い痕をそっと撫でる道明寺の手が温かい。
もっと触れてほしい。そう思うのに、決して口に出して言えないあたしに、
この人はきちんと言ってくれる。
「牧野、おまえにもっと触れたい。
誰にも邪魔されない場所に2人で行こーぜ。」
「…うん。」
「メープルでいいか?」
そう聞く道明寺にあたしは言う。
「道明寺、携帯貸して。」
「あ?」
「いつも誰かに邪魔されるから、今日は携帯の電源切っておく。」
「ぷっ…だな。
なんなら、真っ二つにヘシ折っておくか?」
「やりすぎだっつーの。」
クスクス笑いながら夜の街を歩くあたしたち。
きっと、あたしたちらしく、ベッドの中でも言い合いをしているに違いない。
けれど、その手はきつく結ばれていて、
絶対に離れない事をお互いが知っている。
「牧野。」
「ん?」
「今日は、泣いてもやめねーからな。」
「泣いたら、やめなさいよバカ。」
「……泣かせねぇから、安心しろ。」
あたしたちの未来はこれからもまだまだ続く………。
小話そして四年後 FIN
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