道明寺がF3と久しぶりの再会を果たしている時、
あたしもさほど遠く無い場所でいつもの仲間と会っていた。
「先輩、こんな所でご飯食べてていいんですか?」
「ん?」
「だって、道明寺さんNYから帰ってきたんですよね?」
パスタを口に頬張りながら、あたしはコクコク頷くと、
呆れたような桜子の視線が突き刺さる。
「司も酷いよね、4年ぶりに帰国したっていうのに、彼女を放っておいて男友達と遊んでるなんて。」
そう話すのは、滋さん。
「いいのいいの。あの多忙なF3とスケジュールを合わせるだけでも大変みたい。
たまたま今日がみんな空いてたから。
それに、もともとあたしだって、滋さんと桜子と約束してたじゃない。」
そう言いながら、残りのピザを口に入れた。
「道明寺さんとは会ったんですか?」
「ん?会ったよ。帰国したその日に少しだけ顔見せに来た。」
「少しだけ?」
「そう、空港からそのまま車でうちの前に来たの。
夜10時過ぎだったから、親も寝てたし、車の中で少しだけ話しただけかな。」
そう話しながら、3日前の事を思い出す。
待ちに待った道明寺の帰国。
4年は長いようであっという間だった。
その間、あたしたちは意外とうまくいっていたと思う。
毎日道明寺とはテレビ電話で繋がっていたから、離れていて寂しいと思う事はほとんど無かった。
ただ、どうしても会いたいと思う時は4年で何度か訪れた。
その度に、道明寺は会いに来てくれた。
あたしも2回NYに会いに行った。
確実に、言えることは、
あたしたちは4年前に比べて深く『結び』ついている。
「ところで、つくし。
司とは結ばれたんでしょーね?」
あたしと滋さんの『結ぶ』という言葉のギャップに、思わず飲み物を口から少し噴き出した。
「私も聞きたかったですそれ。先輩どうなんですか?」
「したの?」
「しました?」
滋さんも桜子も、ニヤニヤとあたしを追い詰める。
「う゛ーーー、まだ…してない。」
「わぁー、しんじらんないっ!
4年も付き合ってて、一回もチャンスがなかったの?」
「いやっ、そーじゃないけどっ、」
「じゃあ、道明寺さんにその気がないって事ですか?」
「そうじゃなくてっ、」
口籠るあたしに、2人の妄想はどんどん加速する。
「司はもしかしたら、あー見えてそういう事に関しては興味ないのかもね。」
「ガツガツ行きそうなのに、プラトニックな関係を維持したい派ですか。」
「それとも、物理的に無理とか?」
「それって、男性としての機能が…って事ですか?」
「あり得なくもないかもね。」
「ああいう大柄な男の人に限って、意外と性欲が少ないって、なんかの本で読んだことが」
あたしに聞かれないようにコショコショ話し出す2人に、あたしは
「ちょっとーっ!だから違うってば!」
と、睨みつけて言いかえす。
「最後まではしてないけど、それなりにやる事はやってるから!」
思わずそう口走り、しまった!と気付く。
しかし、もう既に時は遅く、
「なになに〜?
つくしさんの言う、やる事ってどんな事かしら?」
と、まんまと捕獲される始末。
「それは……、」
「もしかして、その首の痕がそれって事?」
滋さんが指差すのは、わざわざハイネックのセーターを着て隠してきたはずの赤い痕。
「なっ!なんで知ってるの?」
「そりゃ、先輩。
いつも着ないような珍しい服着てるから余計に気になっちゃいますよ。」
「そうそう。さっきつくしがトイレに立った時に、桜子と話してたのよ。なんか怪しいから、カマをかけてやろうって。」
「ひどっ!」
「うちらの誘導作戦、大成功って訳ね。」
嬉しそうにハイタッチする2人を見て、あたしはハイネックのセーターを着てきた事に心の底から後悔をしながら、白旗を上げた。
「これって、どのくらいで…消えるかな。」
あたしの耳の下には、道明寺が付けた赤い印。
「あららー、司も派手にやったわね。」
「いつですか?」
「3日前。帰国した日にうちに来た時に。」
「って事は車の中で?」
「……。」
「さすが司。
やっぱりあいつは猛獣ね。」
あの日、生の道明寺と会うのは7ヶ月ぶりだった。
いくら毎日テレビ電話で繋がっていたとはいえ、触れる事は出来なかったあたしたち。
自然と、車の中でキスをした。
最初は軽いキス。
少しずつ深くなるにつれて、あたしの欲求も溢れ出す。
『もっと、この人に触れたい、触れられたい。』
その気持ちがバレているかのように、道明寺の手があたしの服の中に入り込み、背中を這う。
そして、ブラの片方の紐が肩から滑り落ちたと同時に、直に胸に大きな手が触れた。
今思い出すだけでも、胸がギュッと苦しくなり顔が熱い。
それを見透かすように桜子が言う。
「ようやく、時は満ちたって事ですよね?」
「あたしもそう思うよつくし。他人が見れば長かったと思うかもしれないけど、2人にとっては今がその時なんでしょ?」
滋さんもそう言ってくれる。
この四年、何度かチャンスはあった。
けれど、お互いそのチャンスを強引に使おうとはしなかったとあたしは思う。
どこかであたしたちは思っていたはず。
4年きちんと乗り越えられたら、その時に……と。
「先輩、良かったですね。」
「うん。」
「それにしても、司。車の中でどこまでやろうとしてたのよね。」
「確かに。初めての場所が車中ってハードル高くないですか?」
「ホテルに行くまで待てなかったって事?」
「猛獣ですからね…」
「4年で磨きがかかってるかもね…」
再びコショコショ話が始まった2人に、
「ちょっとーーーーーーっ!!」
と、怒ろうとした時、
滋さんの携帯が鳴った。
「ん?あきらくんからだ。」
そう言って電話に出た滋さんは、
今あたしたちがいるお店の名前を告げている。
そして、電話を切ったあと、一言。
「4年ぶりに猛獣をナマで見てみようかしら。」
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猛獣つかさー!