イツモトナリデ 24

イツモトナリデ

リアムのバーを出たのは23時過ぎだった。

店の前で滋たちと別れ、俺と牧野はホテルまでの道を手を握り歩く。

「…なんか、変な感じ。」

「あ?」

「だって、あたしたち、日本でもこうして手を繋いで歩いた事なんて無いのに、まさかNYに来てしてるなんて。」

「フッ…そうだな。」

正式に付き合い出してまだ数日。
キスは何度かしたけれど、こんな風にデートらしい事も手を繋ぐこともしていない。

「滋さん、幸せそうだったなぁ。」

「ったく、人騒がせな奴だ。」

「結婚するんだから、許してあげなきゃ。」

そう言って繋いでいる手を大きく振り大股で歩く牧野の表情は、凄く嬉しそうだ。
そんなこいつをからかうように俺は言う。

「俺たちも結婚するか?」

すると、急に小股になり俺を睨みながら言ってくる。

「ご冗談を。」

「冗談じゃねーし。」

「はぁ?まだ付き合って数日なのに?」

呆れ顔の牧野。
それなら、順序よくやってやろうじゃねーか。

「結婚は確かに早いかもな。
でも、俺たち次のステップには進んでもいいんじゃねーの?」

「次のステップ?」

「ああ。
今日は一緒の部屋に泊まる…その意味をおまえはちゃんと分かってるよな?」

俺的にはちゃんと準備はしてきてる。
何年も買ったことが無かった避妊具をスーツケースの中に忍ばせてきた。

俺の言葉に一気に動揺するこいつ。

「耳まで真っ赤だぞ。」

「っ!いっぱいお酒飲んだからっ」

「じゃあ、早く部屋に戻ろーぜ。」

「やっ、もう少し散歩でもする?」

今きた道をまた戻ろうとする牧野。そんなこいつの肩に手を回し、
「ご冗談を。」
と、今度は俺が言ってやった。



ホテルのエレベーターの中。
階がどんどん上がっていくにつれ、胸がドキドキと鳴り響く。
牧野にも聞こえるんじゃねーかと恥ずかしくなるほどだ。

隣に視線を移すと、酒が少し入ってる牧野の頬と唇はほんのりピンク色に染まっている。
黒い髪と黒いブラウスとで、白い肌が透き通るように綺麗に映る。

じっと見つめる俺の視線に気づいて、牧野も俺を見上げる。
目があった瞬間に、いつも以上に溢れ出す
好きという感情。

堪らずに、俺は牧野の唇にキスをした。

「クチュ…、道明寺…誰か来たら、」

「来ねーよ。」

「んっ…でも、」

「待ちきれない」

エレベーターの扉が開くまであと数秒。
その時間さえ惜しくて、俺は牧野を壁に追い詰めた。



部屋に入ってからは、もう誰にも邪魔されない2人だけの世界。
牧野の身体を抱き上げ、ベッドルームへと運ぶ。

キスをしながら、ベッドに押し倒した牧野の身体に触れると、その柔らかい感触に一気に下半身に熱が篭もる。
ブラウスのボタンを外し、胸の膨らみに手を這わせ口に含む。

片想い中、何度も脳内で犯したこの身体を、今日は現実に抱ける。
もちろん、妄想よりも何倍も甘美だ。

一つずつ丁寧に服を剥ぎ取り、自分のシャツも脱ぎ捨てると、

「牧野、」
と、俺は小さく名前を呼んだ。

「…ん?」

「準備してくるから待ってろ。」

「…うん。」

ゴムは隣の部屋にあるスーツケースの中だ。
ズボンのベルトを外しながら、それを取りに行く。

戻ってくると、薄いシーツに包まる牧野が、俺を見つめて何かを言いたそうにしている。

「あのね、道明寺、」

こいつが何を言っても、多分今夜の俺は牧野を逃がさねぇ。
けど、一応、お願いがあるなら聞いてやる。

「ん?」

「あたし…、」

「どした?」

「……。」

なかなかその先を言わねぇから、牧野の顔を覗き込むと、
意を結したように、でけぇ声で宣言しやがる。

「あたしっ、初めてだからねっ!」

「…あ?」

「こういうの、初めてなのっ!」

「こういうの?」

「だからっ、エッチするのは今日が初めてっ。」

初めてとか、そうじゃねぇとか、所詮俺的にはどうでも良くて、
いや、どうでも良くはねーけど、
今俺の目の前にこいつが居て、これから2人でそういう事をするって現実だけが最高に重要で、

過去は全然、いやほんの少ししか気にならなかったけれど、
改めてこう宣言されると、頭を抱えるほど嬉しくて、

「おまえさぁ、」
と、盛大にベッドに突っ伏す俺。

そんな俺を見て牧野が、
「ごめんっ、でも、ちゃんと頑張るからっ。」
と、的外れな事を言い、慰めるかのように突っ伏す俺の髪に優しく触れた。

「ごめんって、何だよバカ。」
髪に触れるこいつの手を握り、俺は牧野を正面から見つめる。

「これ以上、煽んな。」

「…え?」

「初めてっつーのは、謝ることでも頑張ることでもねーよ。
純粋に俺はマジで…嬉しい。
はぁー、おまえさぁ、相変わらず無意識に煽ってくるよな。」

「な、何よそれ。」

「こっちは、おまえを抱けるって事だけで、ただでさえ余裕がなくて突っ走りそうになってんのに、これ以上煽るような事言ったら、マジでおまえのこと丸呑みするからな。」

「丸呑みって…、んっ…やっ…」

愛しすぎて丸呑みしたくなる感情を抑えて、
今夜はゆっくりじっくり味わってやる。

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多分、司は脳内で何度もつくしを犯してますからー!

コメント

  1. きな粉 より:

    丸飲みだ何て・・・どんだけ猛獣なのよ、笑。
    司君、想いが叶って良かったね。失敗しないように♥
    更新有難うございます。

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