時間を遡ること二日前。
NY行きの準備をしている俺のところにリアムから電話があった。
「司、面白い情報が入ったよ。」
「面白い情報?」
「ああ。君が探している女性だけど、昨日からNYの街を3人で行動してる。」
3人…すぐに思い当たる節がない。
すると、リアムの口から思いがけない名前が出た。
「彼氏と、もう1人大河原拓海という人物。」
「滋の親父さんかよっ。」
「ああ。俺も実際その3人が一緒にいる所を見かけたけど、雰囲気は悪くなかったぜ。
別れ話がもつれてるカップルには見えなかったな。」
リアムからの電話を切ったあと、俺はソファに座り込み考えた。
もしかしたら、俺たちの考えているようなシナリオではないのかもしれない。
滋と彼氏の別れ話がもつれて、なんらかの理由でNYに行ったと思っていたけれど、親父さんも合流していい雰囲気で過ごしているという事は……、俺たちの心配するような事態ではなく、もしかすると、真逆のシナリオか?
だとしても、滋にとっても突然の出来事だったはずだ。
そうじゃなければ、急に仕事を休んだり俺たちに何も言わずに行くはずがない。
結局、真相が分からないまま、俺と牧野はNYへと飛び立った。
そして、降り立って数時間後に目にした滋の姿は、
純白のドレスを着て神父の前に立つ、いつもの笑顔のあいつだった。
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「つくしっ!司もどうしてここに?!」
俺たちを見て驚く滋と、
「滋さんこそ、何やってんのよ!」
さっきまで泣いてたかと思いきや、急に怒り出す牧野。
「何って…あー、これはちょっとした訳があって…。」
「心配して探しに来たら、あたしたちに内緒で結婚式をあげてるなんてっ。」
「いやっ、内緒って訳じゃないの、つくし落ち着いて。」
「落ち着ける訳ないでしょ!
結婚するなんて一言も聞いてないからあたしっ。」
怒りながらも牧野の両目から涙が溢れる。
そんなこいつの肩をそっと抱き寄せ、
「もう、それぐらいでいーだろ。」
と、頭を撫でてやる。
すると、じーっと滋を見つめていた牧野が、ゆっくりと滋の方へ歩いて行く。
そんな牧野に、滋も向こうから近づいてくると、
2人は無言で抱き合った。
「…良かった。心配したんだからバカっ。」
「ごめんね、つくし。
でも、ほんと色々あったの。真っ先につくしに話したかったけど、順番が逆になっちゃってごめん。」
「ううん、もういーの。
滋さんの幸せそうな顔見れたから、それで充分。」
抱き合うこいつらを見て、俺は小さく悪態をつく。
「ったく、喧嘩も秒で終わるのかよおまえらは。」
「うっさいよ、司。
…それより、2人に紹介しなくちゃね。
こちらが、あたしの彼氏、いや旦那さんになる人。
色々あって、結婚することに決まったの。籍を入れるのは彼のビザの関係でまだ先になりそうだけど、年内には日本で一緒に暮らす予定。」
俺は何度か仕事で見かけたことがあったが、牧野は初対面だ。
白いタキシード姿の彼氏に「おめでとうございます。」と笑いかける牧野とは反対に、俺は彼氏に向かって、
「もう一度考え直す事も出来るぞ?」
と、言ってやると、それを聞いた滋に思いっきり背中を殴られた。
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教会を出たその夜、俺たち4人はリアムが経営するバーで祝杯をあげていた。
だいぶ酒が回った頃、滋の彼氏のアランが目をとろんとさせながら言った。
「僕は、滋を心から愛してる。
だから、もう離れて暮らすのは終わりにしたかったんだ。僕たちが一緒に暮らすためには、僕が日本に行くのが1番いいと思った。
滋にも何度もそう話したけど、僕の仕事のキャリアを捨てることに滋は反対だったんだ。」
確かに、アランの今の地位はなりたくてもなれる物じゃない。
仕事のスキルが相当高くないと無理だろう。
「今の仕事を辞めて、滋のパパの会社で働くと言ったら、突然滋は僕と別れると言ったんだよ!
信じられない、こんなに愛してるのに別れるなんて。」
さすがアメリカ人だ。
こんな台詞も他人の前ですらすら言えるなんて。
「僕は滋と結婚したかったし、滋のパパの会社をもっと大きくするために力になれると思った。
でも、滋はなかなかイエスと言ってくれなかったんだ。
何度も喧嘩して、何度も泣かせた。」
そう言って、ビールのグラスを一気にあけるアラン。
そんなアランを見ながら滋が呟いた。
「だって、アランの人生を犠牲にできないでしょ。
大河原の一人娘と付き合ったばかりに、仕事も辞めて婿養子になるなんて……。
司なら、あたしの気持ちわかるよね?」
滋の気持ち……、
ああ、確かに痛いほどよく分かる。
家の跡継ぎという宿命を持って生まれた俺たち、どんなに足掻いても自分達の自由になることなんて一握りしか無い。
けれど、それが現実なら、俺はその一握りの自由を、アランと同じように使いたい。
「滋、男を甘く見んじゃねーよ。」
「…はぁ?どういう意味よ。」
「仕事なんていくらでも変えが効くんだよ。
けどな、愛してるって口に出して言えるような女は、一生に1人居るかいないかだろ。
そいつの為なら、アランも俺もなんだってする。」
滋を見つめてそう言った後、俺はそのまま牧野へと視線を移した。
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コメント
司カッコいい♥️
こちらの司君はイイオトコなので嬉しいです❗
きゃぁ~司く~ん、カッコ良すぎ!
あんなイケメンから言われてみたいわ。私に顔を向けて・・・笑。
更新有難うございます。