イツモトナリデ 17

イツモトナリデ

「あたし、道明寺の事、もう友達として見られない。」

あたしが言ったその言葉に、道明寺は
「牧野…」と呟いた、
その時だった。

急に鞄の中から携帯の着信音が鳴り響く。
静かな公園では、やけにその音が大きく感じて慌てて携帯を取り出したあたしは、その画面を見て固まった。

「誰からだよ。」

「え、いや、別に?」

「別にって、おかしいだろ、見せろよ。」

「お、お、親からだから、後でかけ直すっ。」

挙動不審なあたしの手から道明寺は携帯を奪うと、その画面を見て眉間に皺を寄せる。

タイミングが悪い、悪すぎる。
こんな時に二階堂先輩からの電話。

道明寺が目の前にいなければすぐにでも出るのに、今はさすがに誤解されかねない。

「出るぞ。」
道明寺はあたしにそう告げて、通話ボタンを押そうとする。
その手から咄嗟に携帯を奪い、あたしは
「もしもしっ?!」と先輩からの電話に出た。

「つくしちゃん?」

「はいっ。」

「今、大丈夫?」

全然大丈夫な状況ではないけれど、いつもより先輩の声に元気がなくて
「はい、大丈夫です。」
と、あたしは答えていた。

「実はさ、昨日、司くんに会ったんだ。」

「え…?」

「何も聞いてない?」

「いえ、何も。」

道明寺の顔を見てそう答えると、道明寺は不機嫌そうに、口だけ動かし「何だよ。」とあたしに言う。

「ホテルで…そのぉ、司くんに見られたんだ。恋人と一緒にいるところを。
一発おもいっきり殴られたよ。」
その先輩の言葉に、

「えっ!!」
と、大きな声であたしは叫んだ。

「殴ったんですか?!先輩を?
道明寺がどうして?…っていうか、先輩大丈夫ですか?
この人、バカ力だから殴られたら骨粉々に、」

そこまで言うと、
「司くん、そこにいるの?」
と、先輩が聞いてきた。

「…あー、はい。」

「そっかぁ。司くん怒ってるだろ。
僕とつくしちゃんがまだ付き合ってると思ってたみたいだから。」

「それは、きちんと道明寺に話してなかったあたしが悪いんです。」

「でも、今二人がそこにいるって事は、うまくいきそうなんだねつくしちゃんたち。」

先輩の声がようやくいつものように明るく聞こえる。

「はい、…なんとか。」

「よかった。邪魔して悪かったね。
またね、つくしちゃん。」

先輩からの電話を切った後、あたしは思いっきり目の前にいる道明寺を睨む。

「な、何だよ、」

「先輩のこと殴ったって本当?」

「それは、あいつがっ、浮気して……。」
そう言って急に口籠る。

どうやら道明寺は先輩と男性が恋人だと理解したらしい。
だからカッとなって。
あたしはクスッと小さく笑う。

そんなあたしを見て道明寺は驚いたように言った。
「おまえ、まさか…知ってたのか?」

「先輩からちゃんと聞いてたから。」

「でもっ、相手は…男だぞ?」

「だから?好きになるのにそう言うの関係ある?」

「……。」

もともとそういう事に偏見はない。
まして、あの尊敬する先輩が選んだ人だ、間違いないだろう。

「道明寺、先輩が言ってたの。
相手がいつも近くに居たのに、自分にとって一番大切な存在だと気付かなかったって。
あたしも同じ。
あんたとずっと一緒にいたのに、気付くのがこんなに遅くなっちゃった。
一番大切で…好きだって事に。」

ようやく気持ちを言えた。
恥ずかしいから、サラッと言った。

それなのに、この人は相変わらずイジワルで、
あたしの両頬に手を添えて、グイッと自分に向かせるように上に持ち上げる。

そして、
「最後のセリフ、もう一度言え。」
と、俺様口調。

「はぁ?」

「大切で好きって所、もう一回。」

「いや、もう自分で言ってるでしょ。」

「うるせぇ、いーから言え。」

そんな押し問答をしていると、後ろから誰かの声がしてあたしたちは慌てて身体を離す。
振り返ると、高校生が楽しそうに携帯を見ながら公園を横切っていく。

「牧野。」

「ん?」

「おまえの部屋に行くぞ。」

「…へぇ?!」

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