不埒な彼氏 20

不埒な彼氏

牧野の腕を掴み地下鉄の改札へと連れて行く。
「どこまでだ?」
そう聞くと、
「なにがよっ。」
と、睨むこいつ。

「家まで送ってく。」

「いらない。」

「なら教えなくてもいいけど、付いていくぞ。」

「はぁ?ストーカーで警察に突き出すから。」

「手間が省けるように警視総監にでも電話しておくか?」

にらみ合いの末、俺が勝ったようで、牧野は渋々と歩き出した。


三つ目の駅で下りた俺たちは無言のまま歩き、5分ほど行ったところで、
「あそこ。」
と、牧野が少し先のマンションを指差して止まった。

「行くぞ。」

「ちょっと!」

抗議の声も無視して俺はそのマンションへと歩いていく。
前と変わらねぇぐらいの大きさのマンションだが、鍵は暗証番号式らしく、そこだけは評価するところ。

マンションの下から見上げ、
「何号室だ?」
そう聞くと、
もう抵抗することをやめたのか、素直に
「301」
と答えるこいつ。

「あんた、何笑ってんのよっ。」

「いや、」

「笑うなバカっ。」

「おまえの怒る顔も久しぶりに見たなと思ってよ。」

そう言って緩む顔を隠しきれない俺に、牧野は睨みながら言う。

「あんたなんて、あたしの怒った顔しか見たことないでしょ。」

確かにそうかもしれねぇ。
俺はこいつを怒らせてばかりで、
喜ばせたり笑わせたり、
そんな顔をさせてやれなかった。

「牧野、」

「ん?」

「今から俺はまたおまえを怒らせることを言う。」

「……は?」

「俺はおまえが好きだ。」

目の前のちっせーこいつから視線を反らさずそう言うと、 固まったまま動かないこいつ。
そんな牧野にもう一度、
「おまえのことが好……、」
繰り返し伝えようとした俺の言葉は、

「酷い男。」
と、牧野の呟きで遮られた。

「酷いっ!ほんと、あんたはいつも酷い男っ。
こんなときに、今さらっ…………。
聞きたくないっ!
そんなでたらめ聞きたくないっ。
大っキライっ、二度と言わないで!」

俺の胸をバシバシ叩きながら怒り、あっという間に目に涙をためるこいつに、
それでも俺は言う。
「おまえが好きなんだよ。
今さらなんかじゃねーよ。
俺はおまえしかあり得ねぇから。」

俺を叩くその両手を掴み、牧野と同じ目線になるよう腰を屈める。

「牧野、おまえ言ったよな俺に。
俺たちには温度差があるって。
今まで俺はおまえへの熱を必死に抑えてきたけどよ、所詮はじめから無理なのかもしれねぇ。
……だから、もう抑えるのはやめた。」

「……あんた、何言ってんの?」

「俺に比べたらおまえの熱なんてぬるま湯にもなんねぇ。
俺が教えてやるよ。
おまえの言う温度差っつーのを。」

こいつが大事すぎて、壊したくなくて、
近付くのを躊躇して。

でも、所詮俺の世界は常におまえが中心で、どんなに足掻いても手放すなんて無理だと気付く。

涙目のこいつを見ながら俺は呟いた。
「ごめんな、牧野ほんとごめん。
いつも自分本意の酷い男で悪かった。
俺の人生かけて、おまえを大事にする。」

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コメント

  1. クラゲ より:

    よく言った司くん!!
    つくしちゃんも司も幸せになってほしい。

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