不埒な彼氏 17

不埒な彼氏

姉ちゃんが1年ぶりに帰国した。
NYでは顔を会わせていたが、姉ちゃんが日本に帰って来るのは1年ぶり。

「司、いよいよ卒業ね。
卒業したら、あんた死ぬまでお母様にこき使われるわよ~。」

「笑えねぇ冗談やめろ。」

「冗談なんかじゃないわよ。
道明寺家の男として生まれたからにはそう言う運命を背負っているの。諦めなさーい。」

「自分が女だからって簡単に言うな。」

「うん、ほんと……申し訳なく思ってる。」
そう呟いて、急にしんみりしだす姉ちゃん。

「姉ちゃん?」

「司、道明寺の名の元に生まれたから、あなたの人生は生まれたときから決められたようなものだった。
けどね、心は違う。
心は司の自由にしていいと私は思ってる。」

「なんだよ、急に。」

「つくしちゃんのこと。」

「…………。」

「司とお母様の話、立ち聞きしちゃったのよ私。
司が高校生の頃だったかしら。
邸につくしちゃんをよく連れてきてたわよね。
あの頃の司は、ほんとキラキラしててつくしちゃんが好きで好きで堪らないって感じで、」

「やめろ、姉ちゃんっ。」

「ほら、またそう。
そうやって、いつしかつくしちゃんへの気持ちを圧し殺すようになったでしょ司。
お母様に言われた言葉がきっかけ?」

「…………。」

「つくしちゃんを道明寺家の犠牲にしたくない…………そう言うこと?」



5年前、俺はババァから恋愛のことで忠告をうけた。
その頃の俺は牧野に夢中で、邸にも暇さえあれば連れてきていた。

「あの子とはどういう関係なのかしら?
あまり親しくし過ぎると別れるときに困るわよ」

「あ?別れる気なんてねーよ。」

「本気ということ?」

「ああ。」

即答する俺に、笑いながらババァは言った。

「それなら尚更別れなくちゃならないわね。」

「どういう意味だよ。」

「あなたは、あの牧野さんを将来私のようにしてもいいのかしら。
道明寺家の嫁になるということは、もしかしたら私のような人生を歩むことになるかもしれないのよ。」

確かにババァは、若くして恋愛結婚で親父と一緒になった。
でも、俺が小学生の時親父が亡くなって、そこからはババァが道明寺を一人で支えてきた。
親父が死んでババァは変わった。
それまでの生活が一変して、仕事仕事に追われ、
家族を顧みない冷徹な社長へと変貌していった。

「あなたが生まれたときから道明寺の跡取りとして決まっているように、あなたの嫁になる人も嫁になった瞬間から人生は道明寺に捧げるしか道はないの。
だから、私からの忠告よ。
愛してるなら、別れなさい。
愛してる人を愛し続ければ、その人を不幸にするだけよ。
恋愛だけなら『本気の相手』で結構だけど、
結婚はビジネスでするもの。
それを忘れないで頂戴。」

愛してるなら……別れろ。
愛してるからこそ……本気になるな。

そんなこと出来そうもねぇ。
あの頃の俺は牧野のすべてが欲しくて、こいつしかあり得ねぇと思ってて……、
でも、愛せば愛すほど、こいつを不幸な道へと連れていくかもしれない。

こんなに惹かれてる女をいつか手離すくらいなら、深入りしないほうがいいのか……。
もし、これ以上近付きすぎれば別れられねぇ。
それは同時に、こいつを不幸にする道でもある。


「司、つくしちゃんとは別れたの?」

「……ああ。」

「やっぱり。
今日も3人で会いましょうって誘ったら、断られたわ。忙しいんですって。
嘘が下手すぎて笑っちゃう。
何かあったのかと思ったけど、司の顔を見て一発で分かったわ。
あんたほんと酷い顔してる。」

あの高校生の頃のように、熱い気持ちは圧し殺した。
そしていつしかあいつへの本気の恋愛はやめた。
側で見守ってるだけでいい。

そう思ってたのに、突然牧野は大学を編入して俺の前からいなくなった。
あのときは焦った。
久しぶりに熱くなった。

久しぶりに会ったあいつを抱きしめて、思わず本音が出そうになっちまった。
ずるいのは分かってる。
不幸にすることを恐れて手に入れるのを諦めてるくせに、目の前からいなくなるのはもっと怖い。

結局、「付き合おう」の言葉で繋ぎ止めて、
でも、近付きすぎる関係に躊躇して、
あいつを何度も傷つける。

「司、愛してるんでしょ、つくしちゃんのこと。」

「うるせーよ…………。」

「ほんっと、可愛くないんだから。
つくしちゃんに言えばいいじゃないっ、
おまえを愛してる、おまえを不幸にはしないって。」

「……言えねぇから……苦労してんだよ。
あいつには、夢があんだよ。
弁護士になって、バリバリ働いて、苦労してるやつを救うんだって。
そのために朝から晩までバイトして……、
そんなやつに言えるかよ、道明寺の名前で縛り付けるようなこと……。」

何度も何度も考えた。
その度に答えのでない堂々巡りを続けてきた。

俺はあいつが好きだ。
言葉になんて出来ねぇほど、愛しくて堪らない。
けど、この想いは伝えるべきなのか、
どうしても答えがでない。

そんな俺の堂々巡りを、姉ちゃんは一蹴する。

「司がつくしちゃんを諦めたからって、つくしちゃんが幸せになるとは限らないじゃない。
つくしちゃんが、司以外の男に不幸にされるぐらいなら、自分の手で不幸にしてやりなさいよ。」

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コメント

  1. 澪ちゃん より:

    椿さん 男前過ぎます❤️

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