「今どこにいる。」
「大学の図書館にいるけど……」
その先を聞き終わる前に俺は図書館に向かっていた。
図書館のいつもの場所で勉強に励む勤勉女の姿。
俺は側まで近付くと、無言で向かい側の席に座る。
俺の気配に気付いたのか、顔をあげたこいつは小さく「おはよ。」と言ってまたノートに視線を戻した。
「おい。」
「ん?」
俺の方を見ようともせず返事をする牧野に、今度は大声で言ってやる。
「おいっ!」
その俺の声に、図書館にいる他の奴らが驚いて俺たちのことを見た。
「道明寺っ、声大きいっ。」
キョロキョロと辺りを見回して俺にシーっと指を立てる牧野を無視して、
「おまえ、俺に言ってねぇことあるよな?」
と、ガンを飛ばしてやると、
「何怒ってんの、あんた。」
と、怪訝そうにやっと顔をあげたこいつ。
「おまえさ、俺に話してねぇことあるだろっ!」
「はぁ?……意味が分かんない。」
「分からせてやる。
おまえ、違う大学に編入するらしいな。
俺に相談もしねーで、何勝手なことしてんだよ。」
「いや、……それは、……ちゃんと話そうと思ってたよ?でも、……きちんと決まってからの方がいいかなぁと思って……。」
「やめろ。」
「…………は?」
「他の大学に行く意味がわかんねぇ。
今すぐ取り止めろ。」
「あんた、何言ってんの?
……あたしが今までどれだけ苦労してここまできたと思ってんのよっ。
それに、もう編入届けもお金も払ったから、今更止めるなんて無理っ!」
「うるせーっ、……おいっ!!」
俺の話も聞かねぇで、自分の荷物を両手に抱えると立ち上がる牧野。
「まだ話終わってねーっ!」
「あんたと話すことなんてないっ。」
「牧野っ!!」
俺が止めるのも無視して、スタスタと歩き始めるこいつを追い掛けようと俺も立ち上がった時、
向こう側からお祭りコンビが慌てて走ってきた。
「司っ!いいから暴れるなっ。」
俺の両脇をがっちりと抑えやがる。
「おまえらも知ってたのかよっ。」
あきらにそう聞くと、
「……ああ。ここ最近、バイトの量増やしてたから牧野に理由聞いたら、編入手続きにかかる金のためだって言ってた。
でもっ、おまえが知らねぇとは思ってなかった。
おまえにはちゃんと言ってるとおもってたからよ…………。」
年が明ける前から朝も夜もバイトしてたあいつ。
『欲しいものがある』と、あいつらしくねぇことを言ってたが、これのことだったのか。
「とにかく、牧野ときちんと話せ。
時間がねーぞ。」
「…………ああ。」

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