不埒な彼氏 2

不埒な彼氏

朝からぶっ通しで3講義受けたあと、来週のテストに向けて大学の図書館で勉強中のあたしの耳に、聞き慣れた女子たちの歓喜の声が聞こえてきた。

顔を上げなくても分かる。
その歓喜の声が誰に向けて発せられてるかなんて。

案の定、数分もしないうちにあたしの目の前の椅子をガタンとずらして、ドカッと座る男。

「よぉ。」

「…………。」

「悪かったって。」

完全無視のあたしに、全然悪びれた様子もなく謝るこいつ。
悪かったなんて、たぶんこれっぽっちも思ってないはず。
実際、3回連続なのだから。
こんな形だけのやりとりは。

「なぁ、おまえの見たい映画だけどよ、今日行こーぜ。」

「…………。」

「なぁ、牧野っ。」

バカバカバカっ。
この男は何にも分かってない。
昨日は一ヶ月も前からバイトのシフトを変えてもらって、映画のために休みを取ってた。
あんたの都合に合わせて取った休みは、ギリギリ映画の最終日。
どうしても見たい映画だったから、すごく楽しみにしてたのに。

「まだ怒ってんのかよ。」

「怒ってない。」

「今日、連れてってやるから機嫌直せ。」

「バイト。」
色々説明するのも面倒くさくなって、その一言で片付けるあたし。

「何時までだ?」

「誰かさんのおかげで昨日は休みを取ったから、今日は11時までぶっ通し。」

「…………。」
さすがにばつが悪いのか黙るこいつ。

再び教科書に視線を落としたあたしの頭を、慣れた手付きでグシャグシャとかき混ぜて、
「悪かったって。
次はちゃんと連れてってやる。」
と、いつもあたしが負けちゃう甘い声で言うからズルい。

「もう、分かったから。
あんたこれから会社に行くんでしょ?
また西田さん待たせてるんじゃないの?
早く行きなよ。」

「おう。」
そう言って立ち上がり、

「バイト終わったらまっすぐ帰れよ。
遅い時間にフラフラすんじゃねーよ。」
そんな言葉を言い残して、図書館を出ていくあいつ。

そんなあたしたちを周りの学生が好奇心いっぱいの目で見ている。
『やっぱり付き合ってるんだ。』
なんて、言葉が聞こえてくるけど、
その言葉をそのままあたしもあいつに問いたい。

あんたは、あたしのことどう思ってるの?

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