セカンドミッション 34

セカンドミッション
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昨日のババァの会見はその日のうちに新聞各社を賑わせた。

夜、メープルのスイートに戻ると先日と同じ光景が待っていた。
先に部屋に戻ってきてた牧野がソファに体育座りで座り込んで、大量の新聞を前に「んー」だの「うー」だの唸っている。

「どうした?」

「あっ、おかえり。すごい騒ぎ。」
そう言って1紙の新聞を俺に差し出す。
俺はそれを受け取りながら、牧野の隣に座りそれを眺めた。

「御曹司……初恋を実らせる?
遠距離結婚の末、6年ぶりの同居?
なんだこれ?」

「なんか、ますます盛り上がっちゃったみたい」

「……みたいだな。」

高校の先輩と後輩の俺らは初恋を実らせてめでたく結婚したことに加え、その相手が、どこにでもいる庶民の娘だってこと。
そして、その娘は学歴だけで英徳高校に入り、その後司法試験まで突破した才女だということで、マスコミは更に盛り上がっていた。

「さっき長塚先生から電話がきたの。」

「なんだって?」

「今後のことについて話したいって。
二人の考えがまとまったら連絡してくれって言われたから、あたしは訴える気なんてないって説明した。」

「で?」

「そしたら、長塚先生、よかったって。
…………明日、お母様に会いに行く。」

「俺もついてく。」

「道明寺、怒ったりしないでよっ。
あたしは、ほんとに嬉しかったんだから。」

「うるせー、ひとこと文句でも言ってやんなきゃ気がすまねぇ。
俺たちで遊ぶなってっ。」

次の日、長塚氏に指定された時間にババァのオフィスを訪ねることになった俺ら。

コンコン
「どうぞ。」
ババァの声で扉を開けると、

「パパ!ママ!」

そこにはババァと談笑する牧野の両親と長塚氏の姿があった。

「つくし!元気だったか?」

「うんっ!」
相変わらず仲のいい父娘は手をパチパチ合わせながら再会を喜んでやがる。

「あっ、道明寺さんも、お久しぶりです。」
やっと俺の方に向き直った両親は深々と頭を下げてきた。

「こちらこそ、ご無沙汰しておりました。」

「まぁまぁ、更にかっこよくなられました?
ねぇ、つくし。 」
牧野の母さんが牧野に同意を求めるが、

「そんなことないんじゃない。
態度は昔より確実にパワーアップしてるけどねっ」
さらっと嫌味をいうこいつに長塚氏が必死に笑いをこらえている。。

そんな俺らにババァが、
「とりあえず、みなさん座りましょうか。」
と声をかけ、俺らは応接セットに腰を下ろした。

「牧野さん、あっ、ご両親もいらっしゃるのでつくしさんと呼びますね。
昨日の会見はご覧になって下さいましたね?
わたくしが言ったことはすべて事実です。
つくしさんと司を6年間騙した罪は重いと思っています。
二人がわたくしに対してどのような結論を出したとしても、わたくしは重く受け止めます。」

俺たち二人の目をまっすぐ見つめてババァが言った。

「つくしっ、パパもママも同罪よっ。
私たちも知ってたんだからっ。
道明寺さんだけの責任じゃない!
訴えるなら私たちも訴えなさいっ!」

「そうだっ。パパは牢屋に入っても構わない!
それでおまえたちが幸せに暮らしてくれるなら。
絶対に愛し合う二人は、別れちゃダメなんだーっ!なっ、ママ。」

涙ぐみながら興奮して話す牧野の両親。

訴えるとも許さないとも言ってねぇのに、勝手に話を進めるやつら。
「牧野は訴える気なんてねーよ。」
俺がそう言うと、牧野も

「むしろ、感謝してます。
若気のいたりで別れを選んでしまったけど、とても後悔してました。
だから、離婚してないって聞いて、すごく嬉しかった。
もう一度、あたしたち二人を夫婦にさせてください。」
ペコリと頭を下げる牧野が可愛くて、俺も柄にもなく横で同じように頭を下げた。

「つくしさん、…………ほんとにいいんですか?
許してくださるんですか?」

「許すも何も、今言ったように怒ってません。」

牧野にばかり聞くババァに少しカチンときて、
「俺には許してくれるのかって聞かねーのかよっ。」
そう言うと、

「あなたは論外です。
元々の元凶はあなたですからねっ。」
あっさりかわされる。

牧野の両親も安心したようで、
「あたしたちはそろそろ帰ります。」
そう言って席をたつ。

「えっ!パパもママも今きたばかりじゃないっ。うちに寄っててよ。」
牧野が慌てていうが、

「パパ、仕事、午前中しか休みとってきてないのよ。だから、もう帰らなきゃ。
お義母さまとは先ほどゆっくりお話しできたから、つくしには今度ゆっくり遊びに来るわ。
じゃ、道明寺さん、司さん、また日を改めて伺います。」
そう言ってババァと俺に頭を下げ、
そのあと、
「長塚先生、これからもつくしをよろしくお願い致します。」と言い残した。

「司さん、ご両親を下までお見送りして。
私はつくしさんと少し話があるから……」

ババァの言葉に俺は素直に頷いた。

エレベーターに乗り込んだ俺と牧野の両親。
先に口を開いたのは牧野の親父だった。

「司くん、本当に今回は驚かして悪かったね。
つくしはああ言ってたけど、司くんは無理してないかい?」

「…………無理ですか?」

「ああ。君は私たち牧野家にとって雲の上の存在だ。君が望めば、他にいくらでも……」

「それは違います。逆です。
俺がつくしを選んだんじゃない。俺がつくしに選んでもらったんです。俺はそう思ってます。」

「そ、そうかい…………でも、」

「もし、もしもこの6年の間に、牧野が他に好きな人が出来て、結婚したいって言ってきたらどうするつもりだったんですか?」
考えたくもねぇことだけど、今まで気になってたことを思いきって聞いてみる。

すると、
「それはねー、ねっ、ママ?」
牧野の親父が牧野のおふくろに目で合図を送る。

「あの子はずっと道明寺さんのことだけを想っていました。
道明寺さん、知ってます?あの子が雨の日が好きなことを。」

「…………いいえ。」
戸惑いながら返事をすると、

「雨が好きなんじゃなくて、雨の日にさす傘が好きなんですあの子。
淡いブルーの傘。
ある日、あの子の家に甥っ子の健太を連れて遊びに行ったときに、帰り際、急に雨が降りだしたんです。
それで、健太が玄関に大事に置いてあった傘を見つけて『貸してっ』って言ったんですけど、どんなときも甥っ子に甘々なつくしが『それだけはダメ、大事な人にもらった最後のプレゼントだから』って、愛おしそうに傘を見つめて言ってたんです。
それを聞いて、あたしたちはわかりました。
まだあの子は道明寺さんを愛してるんだって。」

「牧野が、あの傘を…………。」

「司くん、どうか、どうか、娘のことをよろしくお願い致します。」

「こちらこそ。」

階下までのエレベーターの中、深々とお辞儀をし合う俺と牧野の両親の姿があった。

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