セカンドミッション 22

セカンドミッション

かすかに遠くで聞こえる音に、意識が覚醒していく。
体がいてぇ。いつものやわらかいベッドの感触ではなく、ゴツゴツした固い板に寝かされているようだ。

ん…………?
牧野の声?
そこで、俺はガバッと起き上がった。

そうだった。
昨日、あれからそのまま牧野の部屋で寝ちまったんだ。
腕時計を見ると6時半。

リビングには牧野の姿はなく、玄関の方で声がする。こんな時間に誰と話してんだよ。
そう思って俺は玄関へと続く扉を開けた。

「道明寺さん?」

玄関には今まさに靴を脱いで部屋に入ろうとしている牧野の弟を、牧野が必死に入らせないようにしているところだった。

「おう、弟。久しぶりだな。」

俺の出現に、牧野は深くため息を付きながら

「なんであんたは、起こしても起きないくせに、起きなくてもいいときに起きてくんのよっ!」
朝から機嫌がわりぃ。

「姉ちゃん、どういうこと?」

「…………今度説明する。
それより健太いいの?起こしてくる?」

「あー、俺が行くよ。健太、ベッドで寝てるの?…………もしかして、お邪魔だった?」
俺と牧野を見比べて弟が言ってくる。

「なに変なこと言ってんのよ!」
弟の頭を思いっきり叩きながらリビングに消える牧野を、俺と弟が後をおう。

ベッドでまだ寝ている健太を抱き上げて弟が、
「いつも姉ちゃん、ありがとね。
道明寺さん、今度ゆっくり。」
そう言って、バタバタと部屋を後にした。

牧野と一緒に玄関で見送った俺は、今まで気になっていたことを聞いてみる。
「健太の母親は?」

「今、入院中なの。」

聞いちゃいけねぇこと聞いたか?と思いながらも
「病気かよ。」と言うと、

「ううん。健太、お兄ちゃんになるのよ。
健太のママ、二人目妊娠しててもうすぐ出産なんだけど、仕事無理しちゃって早産になりかけたの。だから、出産まで病院で過ごすことになったの。
進も夜勤の勤務があるから、そういうときだけあたしのところで預かってるの。
ここは広いし、健太のお気に入りみたいでね。」
そう言って笑う牧野。

「そういうことか。離婚でもしたのかと思ったぞ。」

「ちょっと、やめてよ。姉弟揃って離婚してたら両親も泣くでしょ。」

その言葉に俺は胸が痛む。
離婚した当時、きちんと牧野の親に説明することも出来ず、NYに飛ばされた俺は、それ以来牧野の家族とはご無沙汰だった。

キッチンにたつ牧野の側に行き、後ろからこいつを抱きしめる。
「ちょっ!道明寺っ。」

「牧野、ごめんな。ご両親は元気か?
離婚するって言ったとき泣いてたか?」
牧野の肩に顎をのせて聞く。

「ううん。大丈夫。
他の金持ち探せって言ってたくらいだから。」

こいつが強がってんのはわかる。
そして、たぶんあの当時牧野の両親を泣かせたのも事実だろう。
近い将来、ぜってー会いに行く。
そして、心から詫びて、もう一度認めてもらう。
俺は心に誓った。

「道明寺、仕事行くんでしょ?そろそろ帰ったら?」

「ああ。牧野、今日何時に終わる?
今日も来ていいか?」

「ふざけんなっ。」
即答のこいつに苦笑する。

「プッ、おまえなぁ、彼氏に向かってその言い方はねーんじゃねぇ?」

「っ!彼氏って……。」

「牧野、昨日のことは嘘じゃねーよな?
おまえの言ったこと、今更なしはねーからな。」

「…………わかってる。
ちゃんと、……付き合う。」

その言葉を聞いて、俺は牧野の髪をワシャワシャとかき混ぜる。

「んな顔すんな。朝から襲うぞ。」

俯いて顔を赤くしている牧野がめちゃくちゃかわいくて、冗談に出来そうにない本音を言ってやると、ジタバタ暴れだすのは昔から変わらねぇ。

「そろそろ仕事行くわ。また電話する。」

俺はそう言って牧野の部屋を出た。

抱きしめるぐらいしてもいいか。
軽いキスぐらいなら許されるか。
そんなことを思ったが、
一度牧野に触れたら、俺の方が止められそうにねぇから……。

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