セカンドミッション 18

セカンドミッション
スポンサーリンク

「マジか…………それはきついな……。」

俺の前で頭を抱える総二郎。

俺のオフィスにふらりと立ち寄ったこいつは、あきらから昨日の店でのドタバタを聞いたらしく、はじめはからかい気味に俺のことを冷やかしてたが、俺が牧野との別れ際に言われた言葉を総二郎に話したら、さすがのこいつも渋い顔をした。

「司とは無理って、他のやつならいいってことだよな?恋愛をしたくないってことじゃなくて、司限定で無理って言うことだろ?」

「うるせーっ。…………けど、そういうことだよな。」

「で、どーすんだよ、司。諦めるのか?」

「…………それこそ無理だろ。」

「プッ、だろーな。
でも、司、今度こそほんとにおまえ立ち直れねぇほど傷付くことになるかもしれねーぞ。
それでもいいのか?」

「……よくねーよっ。けど、あの時よりもっとズタズタになっても構わねぇ。
もう一度、俺はあいつが欲しい。」

「…………すげーな牧野は。
司にそんな顔させるのはあいつだけだ。」

完全に牧野に拒絶されたのは分かってる。
だからって、はいそうですかと引き下がれるほど出来た男じゃねぇ。

仕事帰りの深夜、右手に大きな紙袋を抱えて牧野の部屋の前で立ち止まる俺。
さすがにこの時間にチャイムをならすことはしねーけど、出来れば顔を見たかった。

久しぶりに鞄から小さな付箋を取り出す。
そして、
『健太に渡してくれ。誕生日プレゼントだ。』
そう書いて紙袋に張り付けると、それをドアノブにかけた。

ガキを使うのは卑怯な手かもしれねえけど、牧野が『大事な男』だと言ったやつの誕生日だ。
聞いたからにはプレゼントぐらい……そう思って、今日は朝からリサーチした。
あの年齢のガキが何を喜ぶか。
そして、そうそう簡単に手に入らねぇものを。
そして、選んだのは日本の老舗メーカーから出ている限定販売の電車のおもちゃ。
マニアが喉から手が出るほど欲しがるプレミアものだ。
それをそっとドアノブにかけて部屋に戻った。

次の日の朝、俺の部屋にキリンが貼ってある。
『受け取れない。』
たった一言と紙袋。
想定内だ。
あの頑固な女が、簡単に受けとるとは思っていない。

俺は付箋を取り出すと、
『おまえにじゃねえ。健太にだ。
健太がこれを見ていらねぇって言うなら捨ててくれ。』
そう書いて貼り付ける。
貧乏性のあいつがものを粗末にするとは考えにくい。
きっと健太に渡してくれるはずだ。
そう願って再び紙袋をドアノブにかけた。

それから3日たったある日、仕事を終えてマンションに戻った俺は、エレベーターを下りたところで牧野と健太にばったり会った。
牧野とはこの間の、
「道明寺とだけは、無理」発言以来だ。

お互いちょっと気まずい空気が流れたが、それをぶち破ったのは健太だった。

「あっ、この間のおじさん!」

「プッ、健太、おじさんじゃねーって教えたろ?お兄さんだ。」

「あっ、そっか、おにいさん。」
人懐っこい笑顔で俺を見る健太。

「今、仕事帰り?」
牧野が俺に聞いてくる。

「おう。おまえらどこ行くんだよ。」

「ん、ちょっとそこまで買い物。」

「買い物?こんな時間にかよ。」
腕時計をみると10時近い。

「どうしても健太がアイス食べたいってきかないの。そこのコンビニまで行ってくる。」

確かにすぐそこにコンビニはあるけどよ、こんな時間に女と子供が出歩くのはまずいだろ。
いや、どうでもいい女ならほっとくが、牧野はどうでもいい女じゃねぇ。

俺はエレベーターに乗り込もうとしてるこいつらの後について、一緒に乗り込むと閉まるのボタンを押した。

「えっ、ちょっと道明寺?」

「俺も行く。」

「えっ!」

「おじさんも行くの?アイス食べるの?」

「ああ。俺もアイス食べたくなった。」

エレベーターが一階に着くと、三人で歩き出す。
牧野は黙ったままだ。
牧野と健太は手を繋ぎ、健太の歩調に合わせて歩くから、歩くスピードがすげー遅い。
大人の感覚ではすぐそこのコンビニも、ガキの感覚ではかなりの距離なのかもしれねぇ。
途中で疲れてきた健太が、道端でポツリと
「疲れた」と呟いた。

それを聞いた牧野が、
「プッ、だから言ったでしょ。
いつもならもう寝てる時間なのに、健太が歩けるって言うから来たのよ。」
そう言って、ちっせー体で健太を抱き上げた。
俺から見たら子供が子供を抱っこしてるようにしか見えねーよ。

俺は二人に近付くと、牧野の腕から健太を抱き上げた。
そして、肩車をしてやる。

「わぁ!おじさんすごいっ。高い高いっ!」
今まで疲れたとぐったりしてた健太が、俺の肩で興奮して暴れてる。

「健太!動かないの、危ないでしょ!
道明寺、大丈夫?
無理しないでっ!」
咄嗟の出来事に牧野は慌ててるが、今までだんまりだった牧野が、いつものペースに戻ってくれて俺はほっとしてる。

俺のでも、牧野のでもねえ、ガキだけど、
三人での夜の買い物は、俺の心を温めるのには充分だった。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています。応援お願いしまーす⭐︎

コメント

タイトルとURLをコピーしました