セカンドミッション 13

セカンドミッション

昔には戻りたくない…………。

あいつの言ったその台詞は、
また昔のような関係に戻りたいと願う俺の想いを拒否するものだった。

まぁ、すぐに受け入れられるなんて思ってなかったが、こんなにハッキリと言われるとこんな俺でも結構こたえる。

それに、
『あたしもこの年になれば色々経験してる。』
そのあいつの言葉がどんな意味なのか考えるだけで、胸がムカムカしてくる。

これからどうやってあいつに近付くか……。
追ったら逃げるあいつには、迂闊に近付けねえ。
けど、もう一度ちゃんと伝えたい。
俺にはおまえしかいないってことを。

あの夜の日から三日後。
帰宅した俺に、久しぶりに…………
キリンが待っていた。

はやる気持ちで手に取ると、
『滋さんが会いたいって。
携帯教えといたからね。』
そう書いてある。

俺はそこらの一般ピープルじゃねぇんだよっ。
気安くプライベート番号を他人に教えるんじゃねえと思いつつも、鞄から付箋を取り出して、

『わかった。
そう言えば、おまえの携帯も俺に教えろ。
俺のは教えてやったんだからよ。』
口で言えば絶対睨まれる内容も、付箋なら簡単に書ける。
俺は久しぶりに牧野の部屋にそれを貼った。

その次の日、オフィスで仕事中の俺に滋から連絡が入る。

「司、いつなら会えるの?」

その唐突な滋らしい誘いに眉を寄せながらも、
これが牧野からの誘いなら俺は今すぐにでも会いに行くんだろうな……と苦笑する。

「おまえに合わせる。」
そう答えると、滋はあきらと相談しとくと言って電話を切った。

その数日後、F3と滋、桜子があきら行き付けのカクテルバーに揃ってると連絡が入る。
仕事を出来るだけ早く切り上げて合流してみると、すでにお祭りコンビと滋は出来上がった状態だ。

類は相変わらず眠そうだが、店に着いた俺に片手をあげて「お疲れ」と言い、また目を閉じる。
唯一まともなのは桜子か。

「道明寺さん。お久し振りです。」

「おう、おまえも元気か?」

俺らの会話に気付いたお祭りコンビと滋も合流し、改めて乾杯をする。
久しぶりの再会だ。
でも、肝心のあいつがいねぇ。

「牧野は?」
小声で桜子に聞くと、地獄耳の滋がそれを聞き付けて、

「司、牧野牧野っておまえはぜんっぜん変わってない!たまには滋ちゃんのことも構いなさいよっ。」
俺のことをおまえ呼びしやがって絡んでくる。

「うるせー滋。おまえ酒くせっ。
どんだけ飲んだんだよっ!」

「まだまだ飲み足りませーん。
それより、浮気男!あんた、またつくしにちょっかい出してるんだって?
つくしに近付いたら、あたしが許さないよっ!」

すいぶん直球な滋の物言いに俺もF3も苦笑する。
すると、桜子が
「滋さん、言い過ぎです。
そして、飲み過ぎです。」
と、冷静に突っ込みを入れている。

その横では類が
「司、浮気男って呼ばれてるんだ。おかしー」って笑ってやがるし、お祭りコンビに至っては
「そんなこと言えるのはおまえしかいねえ。」
と、滋を褒めてやがる。
まともな奴は一人もいねえ。

「だって!許せないじゃん。
桜子だってそう思うでしょ?」

「いや……私は……」

「ダメなの!絶対ダメ!
司はこれ以上、つくしに近付いちゃダメ。
そんな資格ないっ。」

俺への不満を永遠と口にする滋に、そろそろ周りがヒヤヒヤしてきている。
いつ俺がぶちギレるかと。

「あたしは、つくしには絶対に今度こそ幸せになってもらいたいのっ!
だから、司には諦めてもらいたい。」
絞り出すように口にした滋。

滋の気持ちも、桜子の気持ちも痛いほどわかる。
なんの否もねぇ牧野を、傷つけて不幸にしたのは俺だ。
けど、もう一度だけ俺を信じてほしい。
今度こそおまえらにも誓う。

「俺が幸せにする。
今度こそ、泣かせねえ。
ぜってぇ、牧野のことを幸せにするから、もう一度あいつのことを任せてくれねぇか。」

独り言のように、でも、ハッキリとこいつらに聞こえるように言ってやると、その場の空気が
…………固まった。

「遅くなってごめん。
…………みんな、…………なんかあったの?」

牧野の声に、再び空気が動き出す。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています。応援お願いしまーす⭐︎

コメント

タイトルとURLをコピーしました