セカンドミッション 5

セカンドミッション
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このままずっと、穏やかに時が過ぎていくものと思っていた…………。

いつものように、大学が終わったあと社に移動する車の中、カーテレビから台風が接近し明日から大荒れの天気だとニュースが流れていた。

俺はそれを何気なく眺めながら、ふと、あの赤い傘のことを思い出す。
あの傘は今も俺のマンションに置いたままだ。

あれは、俺らが付き合ってた頃、オーダーで作らせてプレゼントしたものだ。
それからは、雨の日は必ずあいつはあの赤い傘をさしていた。

明日から大雨か…………。
あいつは傘を持っているのかよ……。

俺は急遽、運転手に行き先を変更させ、いつも愛用している高級ブランド店に立ち寄らせることにした。

そして、あいつのために買ったのは、
淡いブルーの傘。

その傘をさす牧野を想像すると、俺は胸が高鳴った。

邸に戻ったのは、夜10時をまわっていた。
部屋に入ると牧野の姿が見えねぇ。
ベッドルームに行くと、その奥にあるクローゼットに小さな明かりがついていた。
そっと近付くと、俺のスーツに丁寧にブラシをかけている牧野。
俺は、そんなこいつの姿をしばらく眺めていたあと、
「牧野。」と、優しく声をかけた。

「お帰りなさい。」小さく微笑むこいつ。

そして、俺は牧野にさっき買ったばかりのブルーの傘を手渡した。
「明日から雨だってよ。
前みてーにオーダーじゃねーけど、いいものだ。使ってくれ。」

傘を手に取った牧野は、大事そうにそれを眺めたあと、ゆっくりと俺の方を見た。
そして、クシャっと顔を歪ませて、
「道明寺…………ごめん。」そう呟いた。

「牧野?」

「……う……うっ、……ごめん。」

「なんで泣くんだよ。」

「あたし、……う……やっぱり、……ダメみたい。…………うっ、…………どうしても、……忘れられなくて、無理なの…………。
道明寺が悪いんじゃないっ。けど、あたしたち、やっぱり、このまま何もなかったようには暮らせない。」

「牧野っ」

「ごめん…………んっ…………ほんとごめん。」

「牧野っ、俺のこと殴れっ!
許せねぇなら、お前の気がすむまで、殴れよっ。俺は何をされても構わねぇ!
おまえがそばにいてくれるならなんでもする。
だからっ、」

「ううん。……道明寺、…………もう終わりにしよう。」

その時の泣き顔だけが、あれから6年たった今でも鮮明に目に焼き付いている。

8年前、強烈な恋をした俺は、
6年前、それを手放した。

そして、26才になった俺は、来週日本に帰国する。
たった1年半の結婚生活にピリオドを打った俺は、ババァの言いつけでNYに渡り、経営学を学んだ。そして、その後2年間NY本社で働いたあと日本に戻ることが決まった。

あんなに気に入ってた嫁を息子の不甲斐なさで手放さなきゃなんなかったババァは、俺に逆らうことは許さず、NY行きも日本帰国も勝手に決めやがった。

このまま、再婚相手も政略結婚でババァの言いなりにさせられるんだろうと思っていたが、いい年になっても全くそんな話を持ってくる気配はねえ。
一回目の離婚で懲りたのか…………。

あれから6年たつというのに、女が欲しいと思ったことは一度もねぇ。
まだ、牧野のことが忘れられないのかと聞かれれば、それも違うような気がする。

ただ、
昔、強烈に愛した女を、幸せにしてやることが出来なかったという後悔が、

俺を硬い殻に閉じ込めていた。

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