セカンドミッション 3

セカンドミッション

部屋を出ていった牧野を慌てて追い掛けるが、あいつが乗ったマンションのエレベーターは無惨にも扉がしまり、俺は急いで隣のエレベーターに乗り込んだ。

1階に下りると、どしゃぶりの雨の中、通りを歩く牧野を見つけ、走って追いかける。

「待てよっ牧野。ちゃんと話そうぜっ。」

「…………。」
何も言わず歩き続ける牧野。

「おまえ、とにかくどこかに入ろうぜ。
すげー濡れてるっ。」
強い雨に打たれ、長い髪から雫が垂れている。

「傘、俺の部屋だろ。取りに行くぞ。
それから……」

「いらない。」小さくこいつが呟いた。

「あ?」

「もう、いらない。
傘は捨てて。もう、使わないから。」

「…………牧野?」
咄嗟にこいつの肩に手を置いたその瞬間、

「触らないでっ!」

はじめて聞いた。
こいつの怒りの声を。
その震える声を聞いて、俺は今更ながら自分がとんでもなくバカなことをしたんだと思い知る。

茫然と立ち尽くす俺を全く見ようともせず、牧野は走って俺の前から立ち去った。

ずぶ濡れの俺がマンションに戻った頃には、あの女の姿もなく、俺は玄関の床にズルズルと座り込んだ。
そして、時を忘れて何時間も、ただあいつが置いていった赤い傘を見つめていた。

………

「タマか?俺だ。
…………つくし、どうしてる?」

「坊っちゃん、つくしと何かあったんですか?」

「……ああ、ちょっとな。」

「夕方、ずぶ濡れでつくしが帰ってきたから、使用人たちは大騒ぎでしたよ。
ケンカするのは構いませんけど、せめてタクシーにでも乗せてやって下さいまし。」

「悪かった。……あいつ、今どうしてる?」

「それが、帰ってきたと思ったら、着替えてすぐに出掛けました。友達の所に泊まるって。」

「そうか。わかった。
タマ、一つ頼みがある。
つくしが帰ってきたら、俺に知らせてくれ。
何時でもいい。夜中でもいい。
あいつと話がしたいんだ。」

「わかりましたよ。
坊っちゃん、声に元気がないですね。
ちゃんと食事してますか?
つくしがおかず持って行ったでしょ。
朝からシェフに教わって、つくしが作ったんですよ。食べてあげて下さいな。」

「…………ああ、わかった。」

俺は、うまく声が出なかった。
俺のことを心配してあいつが作ったのかよ。
それなのに…………。

牧野の携帯にずっと電話してるが、虚しく機械音が響くだけ。
友達の所…………一番考えられるのは優紀か。
俺は優紀、滋、桜子、そしてF3にも電話をかけるが、誰も牧野の居場所を知ってるやつはいなかった。

それから2日後、桜子から連絡が入る。
今日の昼、牧野と会う約束をとってくれたらしい。
俺が行くのは内緒にしておくから、何かもめてるなら早いとこ解決して下さい、と。
俺は柄にもなく、桜子に丁寧に礼を言って電話を切った。

俺がすることはただ一つ。
あいつに心から謝ることだ。
どんなに無感情でしたとはいえ、キスはキスだ。
許してもらえるなら、どんなことでもする。

約束の場所は、桜子も通う英徳大のカフェだ。
約束の時間より少し遅れて来いと連絡が入る、
俺を見て牧野が逃げ出さねぇようにだろう。

言われたとおり20分遅れでそこに着くと、桜子の他にF3の姿もある。が、肝心の牧野がいねえ。

「おい、牧野は?」
やつらに近付いて俺が声をかけると、
F3と桜子が一斉に俺を見る。
そして、

「道明寺さん、嘘ですよねっ!
全部、あの女の作り話ですよね!」
桜子が俺に詰め寄ってくる。

「どういうことだよ。」
自然と顔が険しくなる俺。
桜子は顔を手で覆い、泣いているのか答えることが出来ない。
すると、あきらが静かに話し出した。

「牧野がここに座ってると、一人の女が近づいてきて言ったんだよ。
昔の彼女がしつこく道明寺さんにまとわりつくなって。大学に入ってからは自分と付き合ってて、結婚も考えてる仲だって。
もちろん、俺らは知ってるよ。
そんなわけねーって!
だけど、そいつが、
あなたもみたでしょ?あれが現実だって。
それ以上のこともしてる仲だって。
意味がわかんねぇよ、俺らには!
どーいうことだよ、司!!
おまえ、何したんだよっ、牧野に!!」

いつもみんなの仲介に入るあきらが、声を荒げて俺に怒鳴る。
気が遠くなる思いで、俺はそれを聞いていた。

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