あの頃の俺は……若かった。
自分のことさえ全く理解出来てねぇ、ただのガキだった。
それなのに、物事すべての中心が自分で、なんでも出来ると勘違いし、一番大事なことを見失っていた。
そして、あれから8年。
26才の俺は時々思い出す。あいつのことを。
でも、決まって頭に浮かぶのは、泣いてるあいつ。
泣かしたのは、そう俺。
おまえは今、どうしてる?
ちゃんと笑ってるか?
8年前。
18才の俺は、強烈な恋をした。
それまで、生まれもった権力と財力、端麗な容姿を武器に、好き勝手傍若無人に生きてきた俺の前に、唯一歯向かってきた女。
牧野つくし。
英徳高校の一つ後輩のあいつに、俺は今までの人生を全否定された。
はじめは反発した俺も、あいつの強い意思とまっすぐな目に次第に惹かれ、ババァも驚くほど穏やかな生活を取り戻した。
そして、俺の猛烈なプッシュで、付き合うようになった俺らは、牧野の高校卒業を待って籍を入れた。
俺が19で牧野が18だった。
ババァも、俺を変えた牧野のことをすげー気に入り、結婚に対して賛成だったが、唯一、両家で話し合ったことは、
「世間には婚姻の事実を公表しない」ということだった。
まだ10代の俺らは、学生の身分。
しかも、俺は大財閥の跡取りだ。
結婚が世間に騒がれれば、牧野の学生生活も容易ではなくなる。
夫婦だということは、家族以外ではF3と滋、桜子、そして牧野の親友の優紀だけが知っている、
極秘情報になった。
でも、今思えば、結婚の事実を世間に公表して何の問題があったというのか…………。
むしろ、大学生になった俺の周りには、俺との結婚を熱望する女たちがわんさかいて、いつでもそのチャンスを狙っていた。
そして、俺もまた、牧野と結婚してそれなりに男女の仲になり、以前ほど女を毛嫌いすることもなくなり、隙が出たんだろう。
結婚してちょうど一年。
英徳大学と道明寺HDの会社を往き来する生活の俺と、英徳には進まず都内の大学に編入して法学部に通う牧野とは、生活に少しずつズレが出てきていた。
邸から通学する牧野とは逆に、俺は利便性から大学の近くに一人用のマンションを購入した。
そして、週の大半をそこで過ごし、大学と会社を往き来する生活に変わっていった。
もちろん、邸に戻れば俺ら専用の部屋があり、同じ部屋の同じベッドで過ごすのが通常だったし、牧野がいつでもそこにいるってことが、俺にとっては当たり前すぎて、そのことが特別だと思ってた結婚当初の気持ちを完全に俺は忘れていた。
そして、それから少しして、
俺は決定的に間違えた。

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コメント
このお話スゴく好きなんです
司一筋さんの作品の中でも何度も読ませていただいている作品です。
あああぁぁ、次回はドドぉーーんっと落とされますね、、、。
悲しいよね、つくしちゃんっっ