My teacher 19

My teacher

道明寺先生と付き合ってから、デートらしい事をしたのはこれが初めて。

3日前の電話で、「日曜日空けておけよ。」と言われたとおり、朝からあたしのマンションの前に道明寺先生の車が止まった。

公園を散歩して、買い物をして、食事をして、家でゆっくり過ごす……電話で話していたようなデートをするのだろうか。

デートなんて経験したことがないあたしは、昨夜から、何を着ていけばいいだろう…と悩みに悩みまくって、
結局、気に入って買ったけれど今まであまり出番のなかった軽くてサラサラした素材のロングスカートを選んだ。

車に乗り込むと、
「遅くなって悪い。」
と言う道明寺先生の今日の服装は、濃紺のデニムに白いシャツ。

超シンプルな服装なのに、どうしてこんなに様になるんだろう。
昨夜から何を着ていこうか何時間も考えていた寝不足のあたしとは大違いだ。

車が動き出すとすぐに、
「◯◯まで行こうと思う。いいか?」
と、東京から1時間くらいの観光地の名前を出す道明寺先生。

「いいですよ、何かあるんですか?」

「この辺じゃ、誰に会うか分かんねーし。」

確かにそうだ。
お互いの学校の教師や生徒に会ったら、どんな顔をすれば良いか分からない。

「ドライブするにはちょうどいい距離だろ。」

「はいっ。」

車に揺られ1時間。
道明寺先生の運転は快適だ。
同業者だから話も尽きない。
体育会系のうちの学校とは真逆のお嬢様学校の実情が聞けて面白い。

そして、何より隣にいる道明寺先生の色々な表情が見れて飽きない。
横から見ると、本当にまつ毛が長くて鼻筋が通っていて、肌が男の人じゃないくらい綺麗。
思わず見惚れそうになると、道明寺先生と目があって慌てて逸らす。

飽きる暇もなく目的地にたどり着いたあたしたちは、大きな公園の駐車場に車を止めた。

「まずは、公園の散歩だろ?」

どうやら、やっぱり電話で話したデートプランを実行するらしい。
暑くもなく、風もなく、ちょうどいい天気。
ゆっくり公園内を歩いていく。

時より手を繋いで歩くカップルとすれ違い、何組かとすれ違った後、道明寺先生があたしの手を突然握った。
そんなことだけでドキドキと胸が痛い。

そんなあたしを見透かしたように、クスッと笑った後
「小せぇ手。」
と道明寺先生が呟く。

こういう事をすると、ようやく実感する。
あたし、この人と付き合ってるんだ。

男子が大勢いる環境で暮らして、手どころか肩も背中もぶつかる生活に慣れているけれど、
こうして好きだと自覚した相手に触れられる感触は全く違うから不思議だ。

公園に面したカフェでお昼ご飯を食べ、そのままお洒落なお店が立ち並ぶ通りへ歩いて行き、ウィンドウショッピングをする。

女子なら誰もが目を輝かせるような素敵なお店が点々としていて、あたしも久しぶりに色々と買い込んだ。
そして、お昼ご飯をご馳走になったお礼に、道明寺先生にも何か…と探しているとちょうどマカロンの専門店があり、そこで可愛いものを見つけた。

ハート型のマカロン。
口で想いを伝えるのは得意じゃないけれど、これくらいならあたしでも…。

そのハート型のマカロンを、彼が居ない隙に急いで買い、さっきまで道明寺先生が居た場所へ戻ると、
そこには道明寺先生と話す一人の女性が立っていた。

知り合いだろうか?
すらりと背の高い綺麗な人。
同じロングスカートを履いているのに、まるであたしとは印象が違う。

ニコニコ話す女性に道明寺先生が相槌を打っている。
そんな2人を、周囲の人たちもチラチラと見ているのが分かる。
なんて絵になる2人なんだろう…。

見ちゃいけないものを見てしまったような気分になり、思わず彼らに背を向けて店を出る。
これが嫉妬というものなのか。
初めての感情に戸惑う。

すると、
「牧野。」
と、呼ぶ声がして再びあたしの手が握られた。

「買い物、終わったか?」

「うん。……さっきの人は?」

「あー、見てたか。
白百合学園の教師。俺の2つ先輩だ。」

「へぇー。」

どおりで、お嬢様感が満載だった訳か。

「偶然、ドライブに来てたらしい。」

「へぇー。」

複雑な心情を悟られたくなくて、へぇーという曖昧な返事を繰り返するあたしに、この人は甘い顔で
「おかしな奴。」
と、笑う。

買い物も充分楽しみ、そろそろ日が暮れてきた。
車に乗り込み、帰路に着く。

明日からまた学校が始まる…助手席に座りながらそんな事を考えていると、
「俺の部屋でいいか?」
と、道明寺先生が聞いてきた。

「…へ?」

てっきり、もうデートは終わりだと思っていたあたしは、素っ頓狂な声が出てしまう。

「おまえ、まさかこのまま帰るとか思ってねーよな?」

「えー…っと、」

「デートプランの最後は部屋でゆっくり過ごすって言ってただろ。」

改めてそう言われると、この間の事を思い出し頬が火照ってくる。
あたしのマンションの玄関で、何度もキスをされたあの日。
2人で過ごすって事は、またあの日のような事も……。

緊張、不安、期待、いろんな感情が押し寄せてくるあたしを横目に、道明寺先生は綺麗な顔で
「俺の部屋に行くぞ。」
と、もう一度言った。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています。応援お願いしまーす⭐︎

コメント

タイトルとURLをコピーしました