総務課の牧野さん 48

総務課の牧野さん

「怖いか?」

ババァが明日日本に戻ってくる。
邸で会うことになっている。
牧野をババァから守りたい。

「あたしは……大丈夫。
道明寺は?」

「俺?
…………ビビってるかもしれねぇ。」

「プッ……でしょ?だって、怖い顔してるの道明寺の方だもん。」
そう言って俺の頬をつねるこいつ。

そして、俺の前では滅多に見せねぇかわいい笑顔で言いやがる。

「大丈夫。あたしが守るから。」

俺の台詞だろ。
俺がおまえに言ってやりたかったその言葉。
それを得意気に言い切るこの女こそ、
俺が人生かけてでも欲しいと思う運命の女。

次の日
夜7時を回った頃、ババァの秘書から西田に連絡が入った。
1時間後に邸で待ってると。

仕事が終わってマンションに戻ってる牧野を迎えに行くと、上品な濃紺のワンピースに着替えた牧野が、
「こんな感じでいい?」
と玄関で俺を見ながら聞いてくる。

「ああ、似合ってる。」
ついこの間、俺がプレゼントしたそのワンピースは予想通り牧野にピッタリだ。

「もう、出るでしょ?」
そう言って小さな下駄箱から取り出したのは、俺たちが出会った日にプレゼントしたあのパンプス。

「勝負靴だから。」
そう笑いながらそのパンプスに足を通すと、
文句のつけようがないくらい完璧だ。

「全身、俺の見立てだな。」

「そう言われると、なんか……腹立つ。」
そう言いながらわざと嫌な顔をするこいつ。

「いいじゃん、すげータイプ。
外は俺が選んだものに包まれて、中は昨日俺が付けた赤い痕をたくさん残して、
隣にいるだけで我慢出来ねぇんだけど。」

昨日は牧野に怒られながらも、体中に俺の痕を残した。
もちろんワンピースから見える部分に付けるようなヘマはしてねぇ。

玄関で軽く重ねる唇。

「道明寺、グロス付いちゃう。」

「ん。後で俺がつけ直してやる。」

邸のエントランスに着くと、先に来ていた西田が出迎える。
「社長、いえ、奥様は書斎にいらっしゃいます。」
今日はプライベート。
西田のババァに対する呼び名もプライベートなものに変えるところが西田らしい。

「司様、椿さまもご一緒です。」

「ねーちゃんが?」

「はい。…………心強い味方ですので。」

書斎に入ると、その味方のねーちゃんが、
「いらっしゃい、つくしちゃんっ!」
と牧野を抱きしめる。

それを見て、
「ねーちゃん、牧野死ぬぞ。」
そう言ってやると、ごめんっ、と言いながら腕を弱めるねーちゃん。

俺は、そんな俺たちを書斎のデスクからじっと眺めているババァに目線を合わせると、
牧野の手をそっと繋ぎ、
「遅くなりました。」
と頭を下げる。

「時間通りよ。座って。」

書斎のソファに向かい合って座る俺ら四人。
「母さん、紹介します。
こちらが牧野つくしさんです。」

「はじめまして、牧野つくしです。」

「ええ、よく存じているわ。
それで?わざわざ私に会わせようとするのには何か理由があるのかしら?」
まっすぐに俺を見るババァ。

「牧野と結婚したいと思ってます。」

「……フフフ……本気で言ってるの?
牧野さん、失礼ですけど、あなたのご両親は何をされているかた?
お父様の会社のお名前は?
年収は?
財産はどれほど?」
たたみかけるように牧野にそう聞くババァ。
予想してた通りの展開だ。

「ババァっ!」

「司っ、やめなさいっ!」
怒鳴る俺にねーちゃんがとめに入る。

「うちの両親は……経営者ではありません。
年収も財産も、お答え出来るほどのものはありません。」

「牧野、やめろ。何も言わなくていい。
……ババァ、もう知ってんだろ?
牧野の事も俺との事も、 全部調べてるんだろ?
汚い真似すんじゃねーよっ!
知りたいことがあるなら直接聞いてこいよっ!
こそこそ調べて脅しの材料にするような汚い手を使うなっ!」

「道明寺っ。」
俺の手を握り、首を振る牧野。

そんな俺たちを見ながら、
「フフフ……、調べてたことがバレてたようね。
」と笑うババァ。

「息子に監視をつけて楽しいか。」

「……そうね、仕事もプライベートも実に詳細に報告してくれる監視役がいて助かったわ。」
そう話すババァの目線が、俺からゆっくりとずらされていく。

そして、その視線が止まった先には、下を向いて俯く、…………西田の姿。

「ま……さか、……西田、おまえが?」
信じらんねぇ気持ちで見つめる俺に、

「……申し訳ありません。」
と、俯いたまま呟く西田。

その言葉を聞きながら、そういえば…………と思い出す。
俺が牧野と結婚するつもりだと西田に報告したとき、こいつは変なことを言っていた。
『裏でコソコソするのは辛かった』と。

あの言葉はこういうことだったのか。
疑いもしなかった見方が、スパイだったとは。

ソファから立ち上がり、書斎の入り口に立つ西田の方に、ゆっくりと近づく俺を、
「司?やめなさいよっ!」
「道明寺っ!」
そう呼ぶねーちゃんと牧野の声。

それを無視して、俺は西田の前に立つと、
「西田、おまえは今でもババァの秘書だったんだな。」
そう一言吐くと、胸ぐらをつかんで、思いっきり西田の頬に拳を叩き付けた。

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コメント

  1. はな より:

    痛いっ!!!!!
    西田さん、悪くない!
    いや悪いか

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