総務課の牧野さん 43

総務課の牧野さん
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ラーメン屋でのプロポーズのあと、牧野のマンションまで手を繋ぎながら歩く俺に、

「道明寺、パパとママにはあたしからきちんと話すから。近い内に会ってくれる?」
そう話すこいつがすげーかわいくて、
人通りの多い場所にも関わらず、思いっきり抱きしめて怒られた。

それから1週間。
朝、出勤前に鏡の前でネクタイをしめているときに携帯のメール音がした。
開くと牧野から。

「来週、パパとママが結婚式の打ち合わせでこっちに来るから、道明寺の都合がよければ会えますか?」

それに、
「俺の都合はなんとでもする。
いつでも構わねーよ。」
そう返信をして、いつもより早めに邸を出た。

オフィスについて、まずは来週のスケジュールを確認する。
出張もないし、急ぎの案件もない。
夜に会議がいくつか入ってるが、それは昼の時間帯に変更できる。
牧野から急に連絡が来たとしても、対応できる範囲内だ。

そう結論付けてスケジュール帳をパタンと閉じた俺に、いつからそこにいたのか、西田が声をかけてきた。

「支社長、おはようございます。
何か、問題でも……?」
そうスケジュール帳に目線を送りながら言ってくる。

「いや、なんでもない。」
一度はそう答えたが、思い直して西田に顔を向けた。

「西田、来週だけどよ、スケジュールに変更が出るかもしれねぇ。」

「……それは、どういう……」

「牧野の両親が上京してくる。
だから、……挨拶に言ってくる。」

「司様っ!」
久しぶりに聞いた。西田のこの呼び方。
支社長に就任してこの一年、封印されてきたはずのこの呼び方を、西田の口から聞くと言うことは、こいつがすげー動揺してる証拠。

「なんだよっ、そんな驚くことか?」

「いえっ、ただ、……あまりに突然で。」

「突然じゃねーよ。やっと牧野からOKもらって、ここまで来るのに俺としては長かった。」
安心したからか西田にまで愚痴が漏れる。

「支社長、OKを貰ったということは、結婚に向けて動き出すということでしょうか?」

「ああ、そのつもりだ。」

「楓社長には……?」

「まだ言ってねぇ。」

「…………早めに話されては?」

「ああ、そうするつもりだ。
けど、まずは牧野の両親に挨拶してから事を進めたいと思ってる。
ババァが賛成しようが反対しようが構わねぇけど、あいつの両親には許して貰いてぇから。
俺にとっても家族になる人たちだからな。」
その俺の言葉に、なぜか西田が下を向く。

「西田、仕事するぞ。」
そう声をかけても動こうとしねぇ。

「西田?」
もう一度呼ぶと、

ガバッと顔をあげた西田が、
「司様、ほんとうによかった。私は心から嬉しいです。
裏でコソコソするのは、本当に辛かったですけど、私はいつも司様と牧野さんの末永い幸せを祈ってました。
だから、大丈夫ですっ。楓社長もきっと賛成してくれるはずです。
私はお二人を応援します。」
そう声を張り上げて言ったかと思うと、そのままの勢いでオフィスを出ていった。

内容に少し気になるところはあったけど、とにかく西田も俺と牧野の結婚に賛成なんだと理解して、俺はあまり深く考えなかった。

そして、それから1週間。
牧野から、明日の夜の便で両親が沖縄に帰る予定だから、と連絡がきた。
ちょうど明日は日中もオフィスでの仕事しかなかった俺は、3時にメープルで会う約束をした。

「あたしも昼から有休とってるから、先にパパとママと合流してるね。」

「ああ、わかった。
会社出るときに連絡する。」

「ん。」

「……はぁーーー、」

「……なに?」

思わず漏れた深い息に牧野が反応して聞いてくる。

「いや、…………緊張するだろ。」
かっこわりぃけど、そう口にすると、

「……えっ?……緊張してるの?」
と驚いた声。

「するだろ普通。」

「いや、するけど。えー、道明寺も緊張とかするんだ。」

「あ?」

「だって、道明寺に緊張とか似合わないでしょ。いつも俺様で堂々としてるのに、」

確かにここ最近、緊張したことは、と聞かれても答えらんねぇくらい、覚えがない。
だけど、結婚してるやつらがみんな通ってきた道とはいえ、相手の両親に初めて会って、結婚させて欲しいと言う状況に緊張しねぇ男なんているのかよ。

「おまえさ、俺でもこういうときは緊張ぐらいすんだよっ。」

「そーなんだ。」
そう言ってケラケラ笑うこいつに、ついこの間ふと思ったことを口にする。

「俺さ、初めてかもしれねぇ。」

「ん?」

「今まで欲しいもんは何でも手に入った。
それこそ、欲しいと思う前から目の前に用意されてきた生活だったけど、初めてなんだよ。
欲しいもんを自分から頭を下げて貰いにいくって。」

「……ん?」

「俺にとっておまえは、まさに一番欲しいものなんだよ。
俺のこれからの人生かけて大切にする。
だから、おまえの両親に頭下げて貰いにいくから。」

「うん、……ありがと。」

牧野と付き合ってもうすぐ1年。
25年間、大切に育ててきた両親に、
明日、こいつを貰いにいく。

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久々の総務課の牧野さん。お待たせしました。

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