俺の彼女 14

俺の彼女

道明寺いつだってそう。
横暴でわがままで自己中なくせに、
どうしようもないほど…………優しい。

付き合ってることを内緒にしたいと言ったときも、あいつは納得出来ないと言ったけれど、結局はこうして最後の最後まで約束を守ってくれる。

あたしが勝手に誤解して3日も電話に出なかった時も、ひとつも責めずに迎えに来てくれた。

今思えば、付き合ってからあたしは道明寺から貰ってばかりで返すと言うことをしていないような気がする。
元々の性格が正反対で、愛情表現の仕方が180度違うあたしたちだけど、でも、『貰う』ということがこんなに嬉しいことだと言うことをあたしは道明寺から教わった。

だから、今度はあたしが返す番。

香苗さんと別れて道明寺を探すためキャンパス内を歩き回る。
ちょうどお昼時で、いつものカフェテリアを覗くと、F4が揃って2階の専用スペースへ上がるところだった。

あたしは急いでカフェテリアに入ると、階段を半分ほど上がった道明寺に向けて大きく叫んだ。

「道明寺っ!!」

そのあたしの叫び声に、道明寺だけじゃなく、その場にいる学生が一斉に振り向いた。
天下の道明寺司を呼び捨てにする人は、どこを探してもこのキャンパスにはあたししかいない。

「……牧野?」

驚いた顔でそう呟く道明寺に、

「あ、あ、あのね、お昼……お昼ご飯一緒に、ど、ど、どう?」
と、吃りながらもなんとか言うあたし。

「……あ?」

「だ、だから、お昼食べた?」

「まだだけどよ、」

「じゃあ、一緒に食べよう。」

あり得ない会話を繰り広げるあたしたちのことを、ジロジロと好奇の目で見つめる学生の視線に耐えきれず、あたしは急いで道明寺の側まで行くと、腕を取り階段の上へと進もうとしたとき、道明寺の目が怪しく光るのが見えた。

「牧野、今日は下で食おうぜ。」

「へ?」

「いつも同じ場所じゃ飽きんだよ。
だから、今日はおまえがいつも座ってる下の席で食おうぜ。」

そう言って階段を上がりかけていたあたしの体を強引に反転させ階段を下りさせる道明寺。
そして、いつもあたしが座ってる席に並んで腰を下ろすと、

「おまえ今日、バイトは?」
と、 聞きながら自然な動作であたしのお弁当を広げていくこいつ。

他の学生の注目を浴びながら悠長にあんたと会話するほどあたしの心臓は強くないっ、と訴えたいのに、そんなあたしのドキドキなんてお構いなしに、

「これ、新作?」
とか言いながら、あたしのお弁当のおかずを食べていく。

「ど、道明寺……」

「あ?なんだよ。」

「やっぱり上に行こう。」

この状況に堪らず、2階にあるF4専用スペースを指差しながら言うあたし。
そんなあたしに、道明寺が言った。

「おまえは何がしてーんだよ。」

「……え?」

「どうして俺を誘った?」

「…………。」

どうして、
こんな大勢の学生の前で、
噂になるのも承知で、
勇気を出して『道明寺』と呼んだのか。

答えは分かってる。

「道明寺、今日あんたの家に行ってもいい?」

「……牧野?」

「今日、バイト休みなの。
だから、この間見る約束だったDVD一緒に見よう。」

これが、
あたしが出来る精一杯の『交際宣言』。
それを、目の前のこの人は、

凄く嬉しそうに微笑んでくれて、
あたしの頭をくしゃっと撫でてくれた。

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