道明寺の手があたしの手をすっぽりと包む。
そして、一度離された手は今度は指を絡めるようにして繋ぎ直された。
あたしの手よりも遥かに大きいその手は、不安だったあたしの心までもすっぽりと包み込み、モヤモヤを吹き飛ばしていく。
道明寺が好き。
香苗さんに渡したくない。
はっきりと今、そう自覚したあたし。
もう隠さずに道明寺とのことを香苗さんに話そう。
そして、堂々とキャンパス内を道明寺と歩きたい。
コンサートが終わり会場を出るとすぐに道明寺の携帯がなった。
「迎えの車が来てるから、俺らは先に行くわ。」
そう言ってあたしと花沢類に片手を上げる道明寺。
今日もこれから邸で授業がある道明寺と香苗さん。
香苗さんに道明寺とのことを打ち明けよとしたあたしの想いは呆気なく打ち消されることになった。
そんなあたしに、
「まーきの、ご飯でも食べてく?」
と、花沢類があたしの顔を覗き込みながら言う。
「……うーん、どうしよ……」
「俺、お腹ペコペコだから先に行くよ。」
「ちょっと、待ってよ!行くってばっ。」
スタスタと歩き始めた花沢類を慌てて追いかけたあたしは、すぐに自分の携帯の着信音に足を止めた。
そして、今きたばかりのメールをチェックすると、花沢類に叫んでいた。
「花沢類っ、ごめん!
ご飯は今度ねっ!」
メールの送り主は道明寺。
『このままじゃ勉強になんねぇから、おまえのこと充電させろ。
いつものとこで待ってる。』
息を切らせていつもの場所に行くと、もう日が暮れ始めた教室の、段ボールに遮られた向こう側に道明寺が立っていた。
「帰ったんじゃなかったの?」
「用事思い出したって言って戻ってきた。」
そう言ってあたしの腕を取り近くに引き寄せると、前触れもなくキスをする道明寺。
いつものような触れるだけのキスから始まるそれじゃなく、はじめから激しいキスに思わずあたしも声が漏れてしまう。
「……道明寺ぃ……ンッ……」
「牧野、力抜けよ。」
「……だって……」
「口開けて…………もっと……」
柄にもなくお願いモードで言われると弱い。
言われるがまま力を抜いて口を開けたあたしに、
「すげぇ……可愛い」
と、恥ずかしくなるような言葉を呟いた道明寺は、こういうときにだけ見せる切なそうな顔で、
「お前に貸した俺の上着、おまえのにおいがして堪んなくなった。」
と言う。
それはあたしも同じ。
今、道明寺に抱きしめられながらも、全身から香る道明寺のコロンの香りに胸が苦しくなる。
そんなあたしの気持ちを見透かすように、もう一度ゆっくり優しくキスをした道明寺は、
「ほんとは、このまま連れ去りてぇけど我慢する。
その代わり……明日、バイト休みだろ?
俺も授業がねーから、……邸に来いよ。」
と、再び道明寺のお願いモードが発令。
「明日?」
「ああ。
香苗も友達と一泊でどこかに行くって言ってたし、久々にタマにも会いに来いよ。」
「……ん、分かった。」
また、香苗さんに言うタイミングを逃しちゃうけど、久しぶりに道明寺と二人でゆっくりできる。
そう思ったあたしの可愛い想像より、道明寺はその先を考えてたみたいで、
「家には、泊まってくるって言ってこいよ。」
と、一気にあたしの顔が熱くなるようなことを言った。
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