俺の彼女 5

俺の彼女

次の日、香苗を連れてキャンパスに行くと、いつものカフェテリアにF3が揃っていた。

「久しぶりだな。1年ぶりか?」

「そうかも。あきらにはこの間のパーティーで会ったわよね。」

「ああ。それで?こっちにはいつまでいる?」

「とりあえず3ヶ月の予定だけど、そのあとのことは未定かな…………。」
と、俺を見て意味深に笑う香苗。

そんなやつらの会話を横で聞きながら、俺はさっきから何度も腕時計を見ている。
そろそろだな。

そう思ったとき、カフェテリアに入ってくる牧野の姿を見つけて思わず顔が緩む。
牧野も俺の存在に気付いたのか一瞬小さく微笑んだが、すぐに隣の香苗に視線を向けたあとクルッと体勢を変えて離れていきやがる。

昨日、電話を切る間際、
「香苗さんにもあたしたちのこと内緒だからね。」
と、牧野が言った。

「なんでだよ。あえて言うつもりはねーけど、内緒にする理由もねーだろ。」

「香苗さんって英徳に知り合いたくさんいるんでしょ?
どこからあたしたちのことバレるか分からないじゃない。
3ヶ月しかこっちにいないんだから、あんたの言う通りあえて言うつもりはないでしょ。」

そう言って俺たちのことを内緒にしろと言った牧野。
その言葉の通り、せっかく会えたというのにカフェテリアから出ていこうとする牧野を見て小さくため息が漏れた。

と、その時、
「まーきのっ。」
と、隣に座る類が叫んだ。

その声に、牧野は固まり、香苗とあきらたちは牧野の方へ視線を向ける。

「ここ、席空いてるよ。」

「えっ、……あ、うん。」

突然の類の誘いに戸惑う牧野はその場に立ち尽くしたままだが、
「混んでて座れないならここに座りなよ。」
と、いつになく強引な類。

そんな二人のやり取りに、
「こっちに来いよ。」
と、総二郎が面白いオモチャを見つけたように目をキラキラさせやがって食い付く。

「香苗、こっちは俺らのダチの牧野つくしちゃん。
庶民の代表で、俺らにいつもくどくどと貧乏節を聞かせてくれる面白れぇ奴なわけ。
そんで、いつも勤勉に励む勤労処女……」

「西門さんっ!」
「総二郎っ!」

それ以上ありがた迷惑な紹介を言わせねぇように俺と牧野が慌てて割り込むと、それにクスクスと笑った香苗は、
「有働香苗です。よろしく。」
と、誰もが虜になる人懐っこい笑顔を牧野に向けた。

「牧野さんは私たちと同じ歳?」

「いえ、ひとつ下です。」

「そう。東京の生まれ?」

「はい。」

そんな会話をしながらも、さっきから牧野の隣に座る類が甲斐甲斐しく牧野のコーヒーにミルクを入れたり、口についたパンのカスを取ったりしてやがる。
牧野も牧野でされるがままだ。

それを見て腹が立った俺が
「牧野に触るんじゃねぇ!」
と怒鳴ろうとしたとき、

香苗が、
「もしかして、類とつくしちゃんは付き合ってるの?」
と、とんでもねぇことを言いやがった。

「ふざけんなっ!」
思わずそう叫ぶ俺に、

「どうしたの、司。」
と、香苗が不審な目で俺を見る。

「類と付き合ってるわけねーだろ。」

「そうなの?凄い仲がいいからもしかしてって思っただけじゃない。なに司が怒ってるのよ。
もしかして、司の彼女だったりして?」

そう言って俺を見つめる香苗に、

「ちっ、違いますっ!んなわけないじゃないですかっ。
こんな横暴でわがままで、図体と態度だけがでかい男と付き合ってるわけ、……」

と、まくしたてるように否定する牧野。

「おいっ!てめぇ、ずいぶんひでぇこと言ってくれるな。」

「うっ…………。」

「こっち見ろよ。」

目線をそらす牧野と、ジッと獲物を捕らえる俺。そんな険悪な雰囲気の俺たちに、
「まぁ、喧嘩すんなって。相変わらずめんどくせぇなおまえたちは。」
と、呆れ顔であきらが言う。

結局、牧野とは二人きりになることも出来ず今日はこの会話が最後だった。

夜、ベッドに入る頃、珍しく牧野から電話。

「道明寺、……今日はごめん。」

「悪いと思ってんのかよ。」

「思ってる!………ごめんね……怒ってる?」

「……怒ってねーよ。」

反則だろ。
いつもは可愛くねぇのに、こういうときは素直でめちゃくちゃ堪んないこいつ。

「でも、類とあんまイチャイチャすんなよ。」

「イチャイチャなんてしてないって。」

「おまえがそうでも、類はおまえに馴れ馴れしいんだよっ。
類と二人きりになるな。」

「はぁ?なんの心配してんのよ。」

電話の向こうでキャハハと笑う牧野に、思わずため息をつきながら、
「バカ女。」
と呟くと、

「類は友達。
……あたしは、あんたしか好きじゃないから。」
と、ポツリとこいつが言う。

ったく、体が火照るようなこと言うんじゃねーよ。
このまま素直に寝れるかよ……。

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