自室に戻りソファに座ると、すぐに携帯を取りだし牧野に電話する。
さっきまで一緒にいたのに、また声が聞きたい。
電話する理由があるなら遠慮することもない。
「もしもし?」
牧野の声が耳元で甘く響く。
「俺だ。少しいいか?」
「うん。」
ババァにフォローしろと言われた通り、早速牧野に香苗のことを話すと、
「別にあたしは気にしないから大丈夫。」
と、相変わらず嫉妬のしの字も出さねぇこいつ。
「ババァがおまえが変な誤解したら困るからフォローしとけって。」
「誤解?お母さんが?」
「ああ。おまえが嫉妬に狂ったら困ると思ったんだろ。」
そう言う俺に、
「嫉妬に狂うって……」
と、ケラケラ笑い声をあげてやがる。
「ったく、嫉妬ぐらいしろよ。」
「クスクス……
とにかく、あたしは変な誤解なんてしないから心配しないで。道明寺も勉強頑張ってね。」
「おう。」
そこまで言ったとき、突然俺の部屋の扉がノックされ、答える間もなく、
「司~入るね~。」
と、香苗の声。
「おいっ、」
「ごめん、電話中だった?」
「勝手に入ってくんじゃねーよ。」
牧野と繋がってる携帯を握りしめながら香苗にそう言うと、
「ごめんごめんっ。」と言いながらも、
「部屋、左隣のゲストルーム使わせてもらうことにしたから。
それと明日、久しぶりに総二郎たちにも会いたいから、大学に一緒に連れてってね。
じゃ、おやすみ~。」
そう勝手に言いたいことだけ言いやがって出ていく香苗。
残された俺は恐る恐る携帯を耳に当て、
「牧野?」
と、呟くと、
「道明寺、……香苗さんって美人?」
と、唐突に聞くこいつ。
「あ?」
「美人なの?」
「なんだよそれ。」
思わず苦笑する俺に、
「だって!……3ヶ月とはいえ、可愛い人がそばにいたら、そのぉ、……目移りというか、心移りというか……、」
と、さっきまでの威勢はどこにもねぇ。
「全然、平気だったんじゃねーの?」
「…………。」
「嫉妬なんかしねぇんじゃねーの?」
「だって……」
牧野の拗ねたようなその声が堪らなく愛しい。
「牧野、」
「ん?」
「俺はおまえしか眼中にねーよ。
だから、くだらねぇ心配すんな。」
「ん。」
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