俺の彼女 3

俺の彼女
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ある日、いつものようにバイト終わりの牧野を家まで送り届けて邸に戻ると、ババァの書斎から賑やかな声が漏れてくる。

出迎えたタマに
「誰か来てるのか?」
そう聞くと、

「有働さまです。」
と返事が返ってくるがその名前にピンとこねぇ。

「有働?」

「はい。香苗さんとおっしゃった方が分かりますか坊っちゃんには。」

「香苗……?
もしかして、あの香苗か?」

有働香苗。
有働コンサルティングの一人娘で、俺たちF4とは幼稚舎から小学校までの9年間を共に過ごした云わば幼馴染みのような存在。

中等部からは父親の仕事の拠点がNYに移ったことからアメリカに移住してほとんど会うこともなかったが、それでも年に数回はパーティーで顔を合わせる仲。

そんな香苗がなぜここに?

その俺の疑問を見抜いたかのように、自室へ向かおうとした俺の背後から、

「司!」
と、香苗の声がした。

「おう、来てたんだな。」

「来てたんだなじゃないわよ、待ってたんだから帰ってきたなら声かけてよ。」

そう言うなり、俺の腕を取りババァの書斎へと入る。

「おかえりなさい。遅かったわね。」

「ああ。」

「話があるから、そこに座って。」

そう言ってババァは香苗の隣に俺を座らせ、ゆっくりとコーヒーカップに口をつけたあと話し始めた。

「司には前に話しておきましたけど、そろそろビジネスのことにも本腰を入れて取り組んで貰わなくちゃいけないと思って、来月からその道のプロにレッスンをお願いしたわ。」

「レッスン?」

「ええ。
1日3時間、週に4日。
邸に先生が教えに来てくれるわ。
……そこで、ここからが本題なんだけど、そのレッスンを香苗さんも受けることになったの。」

「おまえが?」

香苗の方を見てそう聞くと、嬉しそうにコクンと頷くこいつ。

「有働社長にこの話をしたら、是非香苗さんにもその授業を受けさせたいって。
ちょうど、向こうの大学は夏休みに入るから、休みを利用して日本に滞在することになったわ。」

「そういうことで、よろしく司。」

「……ああ。」

よろしくの意味を深く考えることもなく頷く俺に、なぜかババァは微妙な顔をしてやがる。

「司の部屋は昔と変わらず東の角部屋?」

「ああ。」

「じゃあ、私も東棟の部屋をお借りしようかな。」

その言葉を聞いて俺は固まる。

「まさか、おまえ……ここに?」

「そう。日本にいる間、ここでお世話になることになったの。だから、よろしくね!」

ようやく「よろしく」の意味を理解した俺は、ババァに冷たい視線を送ると、
「香苗さん、タマに部屋に案内させるわ。
司は話があるから少し残ってちょうだい。」
そう言って俺からの視線を避けてやがる。

香苗が部屋から出ていったあと、珍しくババァが俺に言い訳をするように早口で話しはじめる。

「有働社長に言われたら断れないのはあなたも知ってるでしょ。
夏休みの間の3ヶ月だから、我慢してちょうだい。
それと、……変な誤解を与えないように、彼女のことはあなたがフォローしてあげて。」

ババァがいう『彼女』とは牧野のことだということはすぐに分かった。
そのことが、俺にはくすぐったいくれぇ嬉しくて、
「心配ねーよ。」
と、強がってみたが、

香苗の存在が俺たちの関係に徐々に影を落としていくとはこのときはまだ気付いてなかった。

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