俺の彼女 1

俺の彼女

大学生の二人。
もしも、楓さんの反対がなく順調に交際を進めていたら…………、
そんな幸せいっぱいのお話をお届けします。


「ちょっと……道明寺……ダメだって……」

「なんでだよ。」

「なんでって………んッ……だれか来たら……困るでしょ……」

「誰も来ねーよ。」

ここは英徳大の図書館の3階。
一番奥の天井まで伸びる本棚にこいつのちっせぇ体を張り付けて、俺はその甘くて蕩ける唇にキスをする。

クチュクチュ……
静かな館内に響くやらしい音。
執拗なまでに続くそれに、イヤイヤ……と首を振って抵抗する俺の彼女。
そう、俺の腕の中には、はじめて出来た『彼女』と呼べる存在がいる。
その名は……牧野つくし。

「道明寺……もうっ、ダメ!」

やっと渾身の力で俺を引き離したこいつは、でけぇ目をさらにでかくして上目使いに俺を睨んでくる。

「誰か来たらどーすんのよっ!」

「うるせぇな、デカイ声だすなって。」

「う゛……まさか、誰か来た?」

「来てねぇ。だから、もう一回……、」

そう言って再び牧野の唇に食いつこうとした俺に、
「バカっ、変態っ。
あたし、バイトあるから先帰るねっ!」
そう捨て台詞を残して走っていきやがる。

その後ろ姿を見ながら、俺はクスッと笑うと、
無意識に呟いていた。
「むちゃくちゃ可愛いすぎだろバカ。」

この俺が、この俺様が、
まさかこんなに女に惚れるなんて思っても見なかった。
牧野に出会うまでの俺は、女という生き物が目障りでしかなかったし、何に対しても怒りしか感じてなかった日々なのに、あいつに出会って180度世界が変わった。

牧野に赤札を貼った幼稚な苛めをきっかけに、あいつに興味をひかれ、次第に女として意識し、気づけば常に目で追っている片想いが始まった。

牧野が類を好きだと知り、荒れ狂った時もあったが、それでも俺の一途な想いが通じたのか高校を卒業する時にはじめてあいつから「好き」という言葉を聞いて舞い上がったのを覚えている。

それから1年、牧野も高校を卒業し、念願の同じキャンパスでの生活が始まった。
これからはいつでも一緒にいれる。
甘い学生生活が始まる…………、

そんな期待に胸を踊らせていた俺に、こいつはとんでもねぇ提案をしてきやがった。

「あんたと付き合ってることは内緒だからね。」

「…………あ?」

「だから、学校ではあたしたちの仲は秘密ってことで。」

「ふざけんなっ!
ようやくここから恋人らしい生活がはじまるっつーのに、なんで秘密にしなきゃなんねぇんだよ。」

付き合って今日まで半年以上、高校と大学のキャンパスの違いや、こいつのバイトのシフトの関係でほとんどデートすらしてねぇ俺たち。
ようやく牧野が大学生になり、少し時間に余裕ができ、俺たちの距離も近付いたと思った矢先の「交際秘密宣言」。

「あんたのお母さんからも言われたでしょ。
あんまり目立つような付き合いはするなって。
ただでさえあんたは目立つんだから、あたしと付き合ってるなんて知られたら相当騒ぎになるよ。」

「関係ねぇよ。騒ぎたいやつらには勝手にさせとけ。」

「そういう訳にはいかないの。
英徳大は高校の時より学生の人数も増えてるでしょ。
あんたと付き合ってるなんてバレたら、また嫌がらせを受けるのはあたしなんだからねっ!」

確かに今までも俺と牧野が付き合ってると噂がある度に、こいつに嫌がらせをする連中が後をたたない。
俺は全世界のやつらに牧野と付き合ってることを大声で言ってやりてぇけど、それで牧野を傷付ける訳にはいかねぇ。
ババァもそれを心配して派手な行動は取るなと俺に釘をさしてきている。

「おまえの言う秘密っつーのはどこまでだよ。」

「え、全部?」

「全部っつーことは、校内では話すことも手を繋ぐことも、キスすることも、ダメなのかよ!」
そう真剣に聞く俺に、

「あんたの脳ミソは、想像の域を越えてるわ。」
と、呆れてやがるこいつ。

ここ最近になって、キスすることにも慣れてくれた牧野。
二人の時は自然と距離が縮まって、俺的には次のステップへと進みたい願望がメラメラと沸き上がってるっつーのに、キャンパスでは話すことさえ許されねぇのかよ。

「今まで通り、花沢類と一緒の時は話せるでしょ。」

「ふざけんな。
類の存在が一番邪魔なんだよ。」

「道明寺っ。」

類とこいつの仲がいいってことが周知の事実のように他のやつらにも知られてることが無茶苦茶頭に来る。
俺と一緒にいるのはダメなのに、類と二人で歩くのは何も問題ねーのか。

「とにかく、学校では付き合ってることは秘密だからねっ。
……その代わり、バイト減らしてるから夜は少し自由な時間はあるから。」

そう言って照れたように俯くこいつに、俺ははぁーー、とため息を漏らしながら、
「ずりぃ女。」
と呟きその小さい体を腕の中に閉じ込めた。

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