つくし←看護師設定です。
………………
俺の彼女は、意地っ張りで負けず嫌い、俺限定で乱暴もしてくるし、口もわりぃ。
そして、なんと言っても甘えるっつーことを知らねぇ女。
でも、俺はそんなこいつにめちゃくちゃ惚れている。
常々、もっと甘えて欲しいと思ってるし、口にも出しているが、
「甘えるシチュエーションにならないっ。」
と、いつも鼻で笑う牧野。
俺はおまえにとって頼りないか?
金も権力も包容力もあると自負してる俺は、おまえにとってどう映ってる?
そんなことを問うと、
「あんたの問題じゃないの!あたしの性格の問題だからっ。」と。
そんな、甘えることを知らねぇ牧野から、今日昼過ぎに携帯に電話が来た。
日中、俺が仕事をしてる間に、こいつから連絡がくること自体珍しいことだったが、今日はメールじゃなく電話だ。
会議中だった俺は一瞬迷ったが、もちろん仕事よりも牧野優先。
後ろにたつ西田が渋い顔で俺を見てくるが、
「10分休憩だ。」
そう言って、俺は席をたつ。
「もしもし?」
「あっ、道明寺?ごめんね仕事中に。」
「大丈夫だ。どうした?」
「あのね、今日って……何時ごろ終わる?」
「おまえの用件次第で仕事はなんとでもなる。」
「いやっ、そんなたいしたことじゃないんだけど……。今日、もしも8時頃終わるようだったら……会える?」
「ああ。終わらす。」
おまえに会うために日々仕事してんだよ、俺は。
あまえから会いたいって言われれば、答えは即答だろ。
「そしたら、仕事終わったら連絡くれる?」
「ああ、わかった。」
いつもなら、そこで牧野からプツッと切れるはずの電話だが、
「あのね、道明寺。………………」
「どうした?」
「病院まで迎えに来てもらえない?」
いつも、勤務先の病院には近づくな、同僚には彼氏が道明寺だとバレたくないだの、結構俺が傷つくことをバンバン言ってくるこいつから、迎えに来いと言ってくるのははじめてだった。
もちろん行かない訳がない。
ここで何かを言って、牧野の気分が変わるのは避けたい。
「ああ。迎えに行く。
仕事終わったら電話するから、そこで待ってろ。なるべく早く終らせて行く。」
「うん。待ってるね。」
明らかにホッとした声を出す牧野が可愛くて、
「愛してる」と言うのを忘れない。
いつもなら、仕事の予定変更をすると、小言を言ってくる西田も、牧野が相手だと
「わかりました。」の一言でスケジュール調整に入る。
西田といい、姉ちゃんといい、タマといい、どうして俺のまわりのやつらは、俺に対するよりも牧野に甘えーんだよっ。
牧野が勤める病院の前に、ちょうど8時に着いた俺は、あいつの携帯に連絡する。
職員玄関から姿を見せた牧野は、すぐに俺を見つけ小走りで車にかけより、助手席に乗り込むと、
「道明寺、ごめんね!忙しかったでしょ。」
「いや、大丈夫だ。
たまには、こういうことさせろ。」
その言葉に少し顔を赤くして、
「ありがと。」と呟く。
「それより、おまえから珍しいな。
何かあったのかよ。」
「ううん。何もないよ。
ごはんは?もう食べた?あたしお腹ペコペコ。
何か買っていこうか?それともどこかで食べていく?」
こいつが饒舌なのは何かを隠してる証拠。
「何があった?」
途端に不安になる俺に、
「ほんと何もないよ。
…………道明寺、何食べたい?」
ケロッとした表情からはあまり深刻さも伝わってこねーから、いいとするか。
「ハンバーグ。おまえの作るハンバーグ。」
「あぁ、あれ?ケチャップのやつ?」
「ああ。あのビンボーくせぇやつ。」
ちょっと!って言いながら、ケラケラ笑う牧野。
邸のシェフが作る本格デミグラスソースのハンバーグよりも、こいつが作るケチャップと『とんかつソース』とかって言う怪しいネーミングのソースを混ぜた、牧野特性ハンバーグが時々無性に食いたくなる。
「じゃあ、途中で買い物していってもいい?
お米もなくなりそうだから、買おうかな。
道明寺持ってくれる?」
仕事で疲れてんのに、俺のリクエストに笑顔で答えてくれるこいつが愛しくて、運転しながら右側に座る牧野の手を握ると、こいつもギュッと握り返してきて、そのまま手を繋ぎながら夜の町を運転した。
久しぶりに牧野に甘えられている。
そんな満足感で俺の心が満たされていく。
でも、この時点の俺はまだ知らなかった。
牧野の本気の甘えが、どれだけ破壊力があるかっつーことを。
つづく
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