小話(司様の彼女1)

小話

つくし←看護師設定です。

………………

牧野つくし様。

私がその名前を知ったのは2か月前。
そして、その方が司様の彼女だと知り、私の淡い恋心はシャボン玉のように消えた。

もっと、嫌な人だったらよかったのに。
いかにも、性格のきつそうなケバケバしたモデルタイプの人だったら、『司様も女を見る目がない』と、愚痴れるのに。

今、私たちの目の前で使用人たちとお茶を飲んでいる牧野様は、どこからどう見ても『普通の人』
しかも、とても『いい人』なのだ。

お嬢様特有のツンケンした態度も一切なく、礼儀正しく、常に感謝の言葉を私たち使用人にもかけて下さる。

『お嬢様っぽくない』と、呟くと、私の言葉に先輩の吉川さんが『あれ?坂田さん、牧野様のこと知らないんだっけ?』と。

そして、牧野様があの英徳高校出身で司様の後輩。
一般家庭の出でありながら、司様の目にとまり、司様がベタぼれし、何年もの時を経ても忘れられなかった唯一の女性だということを、はじめて聞いた。

今日も司様に呼び出され邸に来た牧野様。
エントランスで迎えた私たちにも丁寧に
「お邪魔します。」
と、声をかけられる。

そのとき、タマさんから
「つくし、坊っちゃんから伝言で『少し遅れるからタマとお茶でも飲んでろ』って言ってましたよ。私だって暇じゃないのに、まったく坊っちゃんは…………。つくし、美味しいお菓子があるから食べるかい?」

「はい!」
そりゃ、嬉しそうに笑う彼女は、私よりも一つ年上のはずなのに、とても無邪気でかわいい。

仕事中だというタマさんの言葉に恐縮したのか、いつもはタマさんの部屋でお茶をすることが多い牧野様も、今日は使用人たちが仕事の合間に使っている休憩部屋に来て、お茶をすることになった。

休憩部屋といってもかなり広く、高級な家具や大人数で座れるソファ、大きなテレビも完備され、とても快適なスペース。使用人の私たちは仕事の合間や休憩時間にここでテレビを見たり、お菓子を食べたりと自由に過ごしている。

その部屋に今日は牧野様もいて、使用人に混ざって雑談をしたりテレビを見ながら一緒にお菓子を食べている。
不思議なことに、この場にものすごく溶け込む牧野様。
『牧野様』なんて呼び方が全然似合わないくらい、庶民的なのだ。
ここにいる私たち全員が忘れてしまっている。
この人が紛れもなく『司様の彼女』だと言うことを。

そんな私たちを現実に引き戻してくれたのは、私たちのご主人様である『道明寺司様』

「こんなところにいたのかよっ、さがした。」

今帰って来たのだろうスーツ姿の司様が現れ、使用人たちは慌てて立ち上がり「お帰りなさいませ」と一礼する。
そんな私たちに目もくれず、

「部屋行くぞ」と牧野様に声をかけるが、

「あっ、道明寺お帰り。今、ちょっといいとこなの。あと30分!30分したら行くからっ。」
と、呑気な牧野様。

「なんだよ。いいとこって。」

「テレビ。今、手相占いの番組やってて、面白いとこなの。だから……」

「俺の部屋で見ろ」

「ダメ……。あんたの部屋まで行く間に、いいとこ見逃しちゃう。」

「おまえは俺よりテレビかよっ」

ほんと、そうである。道明寺司をさしおいて、テレビに釘付けになれるのは、牧野様以外いないだろう。
ここにいる使用人すべてがそう思い、タマさんもニヤニヤ顔。

「30分!30分だけだからっ。」

「ったく。……着替えてくる。」
そう言って行ってしまった。
いいんですか?牧野様。
司様が出ていったドアと牧野様を交互に見て、ハラハラする私たちに、一向に気づく気配もなく、お煎餅をポリポリ食べながらテレビに釘付けの牧野様。

すると、5分もしないうちにラフな服装に着替えた司様が再び部屋に入ってきた。

「まだ終わんねーの?」

「うん。まだもう少し。」
そんな会話をしながらソファに座る牧野様の隣に腰掛ける司様。

この状況は…………使用人たちが目配せして会話する。
自分達の休憩部屋に司様と牧野様。
…………ものすっごく、きんちょーする!

でも、このお二人はそんな私たちにお構いなしにテレビ画面に釘付け。

「おまえ寒くねーの?その格好で来たのかよ?」

「うん。今日、朝は暖かかったのに仕事終わったら雨降ってるからびっくりしちゃった。仕事帰りにそのまま来たから。」

そう話す牧野様に、司様は自分の着てたセーターを脱ぎ着せていく。
テレビに釘付けの牧野様はまるで子供のように、されるがままセーターを着せてもらっているのが、すごくかわいい。
きっちりボタンまでしてあげて、満足げの司様は
「ぶかぶかじゃん」と、優しく笑う。

こんな司様、見たことない。
この邸で働きはじめて2年、こんな風に優しい表情で話したり、笑ったりするのを見るのは今日がはじめてだ。

私たちはそんな司様にボーッと見とれていると、突然つくし様が

「道明寺、右手出して」と。

「あ?」

「はやくはやく。手相みてあげる。」
そう言うと、司様の手を強引に引っ張り自分の方に持ってくる。

今、テレビではまさに手相占いの解説者が、一つ一つの線の名前と意味をおもしろ、おかしく説明しているところ。
そのテレビ画面と、司様の手を交互に見ながらつくし様は

「道明寺、あんた結構、生命線長いんだぁー。
長生きするね。」と、真剣。

生命線、運命線、感情線、知能線……と、一つ一つの解説に沿って夢中になっているお二人の姿が微笑ましい。

そのうち手相占いがマイナーな方向へ。
「次は結婚線だって。道明寺の結婚線はねー、
……25~30歳くらいだって。意外に早いね。」
「そうか?そんなもんだろっ。来年には籍入れるか?」

「モテ線っていうのもあるんだー。
あっ、さすが道明寺。あんたモテ線たくさんあるわっ。」
「あたりめーだろっ。
でも、おまえ以外きょーみねぇから、モテ線はいらねーよっ。」

「浮気線は…………ないね。」
「あるわけねーだろっ。それにぜってーしねぇよっ。おまえはどーなんだよ。あったら許さねぇぞっ。」

「…………」
「次はなんだよ?」
「…………」
「なにおまえ黙ってんの?
あっ、次はエロ線だってよ。早く見ろよっ。」
「いいよ。そういうのはっ。」
「なにおまえ赤くなってんの?
俺はエロいのか?エロくないのか?どっちだよっ」
「し……知らない!」

見てるこっちが恥ずかしくなるほどのバカップルぶりを見せつけてくれるお二人。
「エロ線早く見ろよ」
「もう手相はおしまいっ」
そんなことを言い合ってるお二人に、

「あんたたち。そろそろ部屋へお行き!
こっちが仕事にならんわい!」と、タマさんの一言。

司様がつくし様の手を引き部屋を出ていく際、
「ご馳走さまでした。またお邪魔します。」
と、ペコリと頭を下げていく牧野様。

お二人が出ていったあと、
ぷっ……ぷぷっ……アハハー……
休憩部屋は大爆笑の渦。

司様のラブ攻撃をあんなに見事にスルー出来るつくし様はすごすぎる!

そして私たちはこんなお二人を、その後もしばしば目撃するのである。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています。応援お願いしまーす☆

小話
スポンサーリンク
司一筋をフォローする
司一筋

コメント

タイトルとURLをコピーしました