ビターな二人 27

ビターな二人

「道明寺 幸」

「はい。」

学校の体育館に響く声。
校長に名前を呼ばれ、壇上に上がり証書を受け取ると、保護者席に目を移す。

そこには、並んで座り俺を見つめるパパとママの姿。
今日、俺は中学校を卒業する。

1年前、正式にパパとママが籍を入れ、俺は道明寺幸となった。
誰もが羨やむ大財閥の息子になったのだが、実際のところ、ほとんど変わった事はない。

部屋が2倍の広さになった事と、登山用のリュックを新しく買って貰ったことくらいか……。

卒業式が終わり学校を出ると、玄関前は写真撮影をする人でごった返している。
俺もすぐにパパとママを見つけて、側まで行こうとしたが、
なぜか2人の周りが一段と人で溢れている。

近くまで行ってみると、その原因が何かすぐに分かった。
みんな、パパと写真を一緒に撮りたがってるのだ。

たしかに、今日のパパは俺からみてもかっこいい。
長身ですらりとした体型はスーツがよく似合っていて、下っ腹が出てきている他のパパたちとは比べ物にならない。

ママと暮らすようになって、表情も優しくなったパパ。
ポケットに手を入れてただ立っているだけなのに、まるでモデルの撮影のようだ。

俺が近付いていくとそれに気づいたママが俺の方へ寄ってくる。
そして、人に囲まれて大変そうなパパを見て一言。

「すっかり主役をパパに取られちゃったわね。」

「ほんと、どこに行っても人気者だよ。」

「拗ねないの。」

「拗ねてねーし。」

最近は、どこに行ってもパパと似ていると言われる俺。
嬉しい気持ちもあるけれど、かなりのプレッシャーだ。
あんな風にかっこいい大人になれるだろうか。

パパを見ながらそんな事を考えていると、
俺の後ろから
「幸。」
と、呼ぶ声がした。
振り向くと、隣のクラスの竹内優香。

「幸、少しいい?」

「おう。」

ママに軽く合図をして竹内と人が少ない場所まで歩いていく。

「幸、あのね、」

「ん?」

「…ボタン、欲しいんだけど。」

いつもはクールな竹内が、少し恥ずかしそうに下を向きながら俺にそう言う。

「ボタン?」

「ん。その第二ボタン。」

そう言われて、ようやく意味がわかる。
そして、一気に胸がドキンと鳴り響く。

同じ山岳部で3年間一緒に過ごした竹内。
俺が密かに想いを寄せていた相手。

好きだと伝えて距離が離れるのが怖かったし、いつも1番近いところでその少し茶色がかった瞳を見ていたかった。
だから、今まで何もアクションを起こしてこなかったけれど、まさか竹内からこんな風に言ってくるなんて。

黙ったままの俺に、竹内が言う。

「誰かにあげる予定だったなら別にいいの。」

「あげねーよ。」

「…じゃあ、くれる?」

茶色の瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。

片手でボタンを思い切り引っ張ると、ボタンが簡単に取れた。
それをそのまま竹内に手渡す。

「ありがと。」

受け取った竹内がそう言って走って行こうとするのを俺は逃さない。

「竹内っ、」

「なに?」

「携帯、番号交換しようぜ。」

高校は別々になる俺たち。
このまま終わりにしたくない。

黙ったまま携帯を取り出す竹内の手からそれを奪うと、素早く俺の番号を打ち込んでコールする。
短く鳴る俺の携帯。

「会いたい時、電話してもいいか?」

「…うん。」

「オッケー。」

初恋が実るなんて思ってるほど、そんなに俺はロマンチックじゃない。
けど、
初恋を鼻で笑うほど、大バカでもない。
それは、パパとママを見ていれば痛いほど分かる。

竹内が去ってから、後ろを振り向くと、
俺を見つめるパパとママの姿。

2人の側に行くと、パパが俺の胸を見て言う。
「あげたいと思ってる相手にあげれたのか?」

「…まぁね。」

「大事にしろよ。」

たったそれだけの言葉。なのに、パパに言われると何倍にも重い。

ようやく人がまばらになった校舎前。
俺たち家族3人は、
はじめての家族写真を撮った。

FIN
ビターな二人、読んでくださってありがとうございました!

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コメント

  1. T より:

    いつも更新されるのを楽しみにしてます。ビターな二人良かったです!!
    最後はそうきたか。って感じ。
    いいいい!
    次回作も待ってます。

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