ビターな二人 25

ビターな二人
スポンサーリンク

3人で暮らすと決めたら、やる事は山ほどある。
まずは家探しだ。

「邸から出るの?」
と聞く牧野に俺は即答する。

「ああ。
3人だけで普通の家族のように暮らしたい。」

邸から俺が出れば、ババァやタマは口にはしないけれど、寂しがるだろう。俺の世話を焼く事が人生の生き甲斐でもあるタマは悲しむだろうか…と思ったが、
そんな俺の心配は、すぐに解消された。

「私たち、邸で暮らす事にするわ。」
そう言ってきたのは、メープルホテルの総支配人を務めている姉ちゃん。

大学時代の同級生と結婚し、今は高校生2人と中学生1人のママだ。
姉ちゃん家族5人が引っ越してくると聞き、邸もバタバタと慌ただしく準備が進んでいる。

「坊っちゃんがいなくなって、ようやく静かになると思ったのに。」
なんて、タマは憎まれ口を叩いていたけれど、内心は喜んでいるだろう。

今度は姉ちゃん家族のドタバタに巻き込まれて、ボケる暇もなしだ。

牧野も連日仕事だし、幸も学校と部活に忙しい。
新居を決めたくてもなかなか3人の休みが重ならない。
唯一、牧野が夜勤明けで朝帰ってくる日が日中自由に過ごせる日。
その時間を利用して新居探しに行けばいいのだが……、

そのタイミングが唯一、俺たち2人きりになれる時間なのだ。それを棒に振る気はねえ。

今日も幸が学校に行った後、1時間ほどすると牧野が夜勤明けでマンションに帰ってきた。

「おかえり。」
リビングで出迎える俺に、

「ただいま。仕事は?」
と、聞く牧野。

「昼過ぎにオフィスに顔を出す。」

「んー。あたしシャワーに入ってくる。」

仕事明けですぐにシャワーを浴びる牧野。
それを知ってて、俺も待っていた。

先に行く牧野の後を追って浴室へ行くと、ブラウスのボタンを半分ほど外した状態で俺を見る。

「道明寺はあっちに行ってて。」

「俺も一緒に入る。」

「ダメ。」

照れながら俺に背を向ける牧野に容赦なく食らいつく俺。

後ろから抱きつき残りのボタンを手早く外し、柔らかい肌に手を這わす。
週に一度か二度あるかないかの夜勤明けのこの時間、それが唯一俺たちが2人きりになれる時間。

熱いお湯を頭の上から浴びながら、繋がる身体。
仕事明けだから、もちろん手加減はしてやるけど、物足りないとは言わせたくねぇ。
シャワーの時間だけじゃ足りなくて、いつもベッドルームへ場所を移し牧野が眠りにつくまで抱きしめる。

スヤスヤと眠る牧野を見つめながら、午後からの仕事の段取りや、幸が帰ってきてから一緒に作るプラモデルの事を考えている時間が今の俺にとって至福の時だ。

オフィスで過ごす無駄な時間を極力減らし、家でできる仕事は家でやる。
そんな風に、これからは家族中心の働き方をしていくつもりで、今週末には新居として考えているマンションを内見に行く予定になっている。

そして、もうすぐ幸の誕生日だ。
15歳、中学3年生になる幸。

その日に俺たちは正式に家族になる。
牧野と相談して婚姻届を出す事に決めた。
遅過ぎた決断かもしれねーけど、俺たちにとってこれが最高のタイミングだったと言えるような未来にしたい。

眠る牧野の額に軽くキスをした後ベッドを出た俺は、リビングにあるアンティーク棚へと歩いていく。

そこの上に並んで置かれた小さな箱。
その一つをそっと開けると、
15年前に俺が牧野にあげた結婚指輪が収まっている。

大切に持っていてくれた事に感謝すると共に、今度こそこれをペアリングでつける事が出来るのがすげぇ嬉しい。

もう一度、その小さなリングを箱にしまうと、俺は幸が帰ってくる時間までもうスピードで仕事を終わらせるためパソコンの前へと向かった。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました