ビターな二人 22

ビターな二人

旅行を終え、道明寺の車が邸に近づくにつれ、何やら辺りが騒がしいのに気付く。

いつもは見かけないような大きなバンが数台邸の側に駐車している。

道明寺も異変に気付いたようで、いつも使っている門を素通りした後、あたしに言った。

「あいつら、記者かもしれねぇ。」

「えっ、記者?」

「ああ。あきらが言ってた動画の件で押し掛けてきたのかもな。」

美作さんが、週刊誌の電子版にあたしたちの事が出ていると教えてくれたけれど、それで邸まで押し掛けてくるだろうか。

邸の門を素通りしたあと、
「今は邸に近づかない方がいい。
おまえのマンションに行くぞ。」
そう言ってハンドルをきる道明寺。

「幸は?邸にいるはずだけど、」

「あとで、運転手に連れて来させる。」

明日からは学校だ。
今日中に家に戻り宿題もさせなければ……、

そんな事を考えているうちに、マンションにたどり着く。
すると、予想もしていなかった事が起きていた。

あたしのマンションの周りには、かなりの人だかりができていて、カメラやマイクを持った人がウロウロと歩き回っている。間違いなく、あたしと幸を待ち伏せしているのだろう。

「まずい事になったな…。」

「どうしよ…。」

「幸の学校の準備も、おまえの仕事の用意もあるだろ?」

「うん…。」

マンションを遠目に見ながら途方に暮れるあたしたち。
その時、道明寺のポケットの中で携帯が鳴った。

「あきらからだ。」
そう言いながら電話に出た道明寺は、この状況を話した後、
「おう、わかった。色々悪りぃーな。」
と言って電話を切る。

「あきらが、使ってないマンションがあるから、しばらくそこを使えって言ってくれてる。
騒ぎが収まるまで、とりあえずそこに行くぞ。」

「…うん。」
そうする事がベストなのは分かっているけれど、言葉に不安が滲み出る。

そんなあたしを見て、道明寺が優しく笑う。
「牧野、大丈夫か?」

「うん。」

「今から、俺が車を降りて記者たちを引きつけておく。
その間に、おまえは部屋に戻って、幸と自分の荷物をまとめて来い。」

「えっ、道明寺が?
そんな事して大丈夫?」
今度はあたしが聞く番。

「ああ。心配すんな。」
あたしの頭を撫でながらそう言った道明寺は、
「じゃ、行くぞ。」
と言って車を降りた。

マンションの側まで行くと、道明寺はあっという間に記者たちに囲まれている。
その様子を見ながら、あたしはこっそりとマンション内へと入り急いで部屋へと向かった。

幸の勉強道具を大きめの鞄に詰め込み、あたしの仕事鞄と一緒に肩に担ぐ。
あっ、制服も持たなくちゃ。
体育もあったかな?それならジャージも必要か?

もう頭の中はパニック。
手当たり次第鞄に詰め込むと、もう荷物はかなりの量になった。
これは一度では運べない。
持てるだけ持って急いで車に行き、もう一度取りに戻ってこようか…。

そう考えていると、ガチャっと玄関の扉が開く音がした。
道明寺がきたのかな?そう思ったのと同時に、聞き覚えのある懐かしい声がした。

「まーきの。」

「っ!えっ、花沢類っ?」

「久しぶり。元気だった?」

「う、うん。元気だったけど、どうしてここに?」

「あきらから話聞いて、なんか楽しそうな事が始まりそうだから来ちゃった。」

「楽しそうな事って…」

相変わらずこの人は呑気なのだ。
幸が中学に上がる時に、突然お祭りコンビの2人と一緒に会いに来てくれたのが最後だったから、2年ぶりの再会。
それなのに、つい昨日会ったかのような話ぶり。

すると、また玄関の扉が開き、今度は西門さんが現れた。
「おうっ、すげー荷物じゃん。
夜逃げでもすんのかよ。きゃははは。」

「西門さんっ!」

「よっ、牧野。
相変わらずちんちくりんだなおまえは。」

そう言って楽しそうに笑う西門さんは、玄関に置かれた荷物を一気に持ち上げ、
「行くぞ、牧野。」
と、あたしを手招きする。

慌てて部屋に鍵をかけ、車へと急ぐあたしたち。
道明寺の方をチラッと見ると、相変わらず大勢の人に囲まれたまま。

道明寺の車に乗り込むと、荷物を運んでくれた2人も後部座席に乗り込んでくる。

「花沢類も西門さんもありがとっ。
美作さんから聞いたの?」

「ああ。
俺たちで記者を引きつけておこうと思ったのによ、先に司が行ってるから、俺たちの出番なしだったな。」

「…みんなにまで迷惑かけちゃってごめんね。」

「気にすんな。ようやくこの時が来たかって感じだからよ。なっ、類。」
「そうだね、ずいぶん長かったけどさ。」

2人の視線が温かすぎて、涙が出そうになるあたし。
妊娠が分かった時も、出産すると決めた時も、幸が成長してから節目節目でいつもあたしを見守ってくれた彼ら。

何もお返しできないあたしは、震える声を抑えながら、
「ありがと、ほんとありがとうございます。」
と、頭を下げる。

そんなあたしに、
「おうおう、素直でよろしい。」
なんて困ったように笑いながら頭をガシガシ撫でてくれる西門さん。

すると、そのタイミングで道明寺が運転席に乗り込んでくる。
そして、そんな西門さんの腕を掴み、
「牧野に触るんじゃねーよ。」
と、相変わらずバカ発動。

なんやかんやと言い合いをした後、
「あとは俺と類に任せろ。
記者たちにはもうこのマンションに押しかけないよう言っておいてやる。」
とピースサインをしながら2人は車を降りて行った。

………

美作さんが用意してくれたマンションは、東京タワーを一望できる高層階の高級マンションだった。

ここが使っていないマンション?と思わず聞いたあたしに、道明寺がさらっと
「ちょっと遊んだ事がある女からのプレゼントらしいぞ。」
と、恐ろしい事を聞かされて驚く。

あたしのマンションの倍の広さはあり、奥にはベッドルームが二つある。

「西田に頼んだから、幸もあと少しでここに到着する。」

「ありがとう。」

「俺は、一度邸に戻るけど、仕事を片付けたらすぐ戻るから、おまえは少し休んでろ。」

コクンと頷いたけれど、知らない部屋で幸や道明寺を待たなければならない不安が襲ってきて、あたしらしくない弱音が行動に出る。

道明寺の服の裾を思わず握るあたし。
慌てて離したけれど、そんなあたしをクスッと笑いながら道明寺が近づいてくる。

そして、昨夜何度も重ねた唇が再び合わさる。

「すぐ戻るから、おとなしく待ってろよ。」

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