小話(頑張る総二郎)

小話

「西門さんと二人で呑むなんてなんか変なカンジ……。」

洒落た店の個室。
目の前には、ほろ酔い加減で頬を赤く染め、潤んだ目で俺を見つめる女。

少しでも好意を抱いていれば、このままお持ち帰りするだろうこの状況も、相手がこの女だから絶対あり得ない。

それは親友に殺されかねない自殺行為だから。

「優紀、西門さんと食事するの凄く楽しみにしてたのになぁ。」

「誘われればいつでもOKだけどね俺は。」

「ほんとっ、軽いんだから西門さんは。」

今日は牧野のダチの優希ちゃんに誘われて食事に来る予定だった。
はじめるきっかけは俺だったとしても、優紀ちゃんは茶道の道に興味を持ってくれて、今では月一で俺の教室にも通ってくれている。

『今度食事に行きませんか?』

そんな優紀ちゃんからの誘いを受けたのは先月で、今日がまちに待ったデートの日だったはずなのに、親戚の不幸で来れなくなった。

そして、このドタキャンを急遽埋めたのは優紀ちゃんの親友でもあり、司が目の中に入れても痛くないほど惚れてる牧野。

「牧野、次は何のむ?」

「えー、どうしよ。
もう一杯くらい大丈夫かな。」

えへへーなんて笑いながらメニューを眺める牧野は、相変わらず俺から見たらちんちくりんの女だが、綺麗な肌や髪、童顔の顔なんかはたぶん男にモテるだろうなと思わせるには十分だ。

「こんなに呑んだの久しぶりかも。」
3杯目の酒を注文したあとそう呟く牧野。

「普段はのまねーの?」

「呑んでも2杯までって道明寺がうるさいから。」

「マジかよ。」

何年たっても司は牧野に過保護で甘々だ。
俺らからしてみれば胸焼けするほどこいつにベタぼれなのに、当の本人が超がつくほど鈍感だから、相変わらず喧嘩ばっかしてやがる。

「司はお前が大事なんだろ。」

「そーなのかなー。そういうもんなの?
西門さんも彼女に対してそんなかんじ?」

「まさか。」

即答する俺に、
「でしょ。ほらね。」
と、口を尖らせる牧野。

「束縛しすぎでしょ道明寺は。
酒は飲むな、男と話すな、男に笑いかけるなって、そんな事してたら働けないっつーの。」

「まぁ、そんなに怒んなって。
それだけおまえに惚れてるってことだろ。」

「惚れてるって……。」

今更、顔を赤くして照れるなよ。
司だってきちんとおまえに伝えてるんだろ?
それだけおまえに惚れてるって。

「牧野はどうなんだよ。」

「なにが?」

「司のこと束縛したりしねーの?」

「ないない。そんな事、しないよ。」

即答するこの女はこういう所が鈍感だっつーんだよ。

「おまえさ、司にきちんと伝えてるか?」

「ん?なにを?」

「好きだってこと。」

「はぁ?」

酒で赤い頬を更に赤くして顔を上げるこいつに言ってやる。

「昔からおまえら見てて思うんだけどよ、
俺らの前でも司はきちんとおまえに想いを伝えてんのに、牧野はいつもはぐらかすだろ。
二人のときもそーなのかよ。
だとしたら、司は我慢してんじゃねーの?」

「……我慢?」

「束縛だって、牧野がちゃんと司に好きだから心配すんなって言ってやれば落ち着くだろ。
おまえがそれをはぐらかすから司はいつも不安なんじゃねーのかな。」

別に牧野に説教するつもりなんてねーよ。
でも、もしも、もしも俺が司の立場だったら、
同じかも知れねーから。

「俺からしたら、おまえらは8対2ってとこか。」

「8対2?」

「お互いの想いの強さっつーのが、司が8でおまえが2。」

俺のその言葉に、
「そんな事ないっ。」
と、今日一番のでかい声を上げる牧野。

「あたしの方が……」

「ん?」

「あたしの方が強いくらいだから。」

消えそうな声でそんな事を言うこいつを見てるとなんとなく分かる。
司が堪らなく牧野に惚れる事を。

「牧野、今から司がおまえのことどれくらい大事に想ってるか見せてやる。
だから、おまえも帰ったら司にきちんと伝えてやれ。」

俺はそう言うと携帯で司にコールする。
時計を見れば10時過ぎ。
会社にいるか、それとも邸か。

『おう、どうした?』
コール3回目で司が出た。

「司、おまえ今どこにいる?」

「邸に帰ってきてる。」

「少し出てこねぇ?呑んでるからよ。」

いつものように誘う俺に、
「行かねーよ。明日も早いんだよ。」
と、つれない返事。

そんな司に爆弾投下。

「牧野が酔って寝落ちしそうだぞ。」

「あ?」

「俺がマンションまで送ってやろうか?」

「てめぇ、ふざけんなっ。
どこにいる、すぐ行くから待ってろ。
どうしてそーなったかは、あとで聞く。」

店の場所を説明する間も、司の声の後ろから鍵の音やエンジンをかける音が響く。

「道明寺、来るって?」

「ああ。
牧野の名前だしたらすっ飛んで来るってよ。
なぁ?言ったとおりだろ?
ぜってぇおまえに手なんか出さねぇ俺でさえ、おまえと二人でいるって言っただけでぶっ殺される勢いだからな。」

「ちょっと、それ、なんか失礼なんですけど。」

「まぁ、こんなに分かりやすい司なんだから、おまえももっと分かりやすく優しくしてやれよ。
司はたぶんすげぇ喜ぶぞ。」

だろ?司。
今日はおまえに黙って牧野を独占した罰として、
少しだけおまえに加勢してやるよ。

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