ビターな二人 17

ビターな二人
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幸のヘタな嘘で、俺と牧野の旅行が始まった。

「パパに任せる。」
幸が言ったその言葉の意味は、
「ちゃんと、ママと向き合って来い」
という意味だろう。

だから、俺は決めた。
俺が今まで封印してきた想いを、牧野に伝える。

今日の牧野は、紺色の麻のワンピース。
この間俺が買ったワンピースの中の一枚で、日に焼けていないこいつの肌によく似合っている。
っつーか、マジで可愛いと思って直視出来ねぇほど。

午前中には目的地に着いた。
幸がいれば、予定通りトラッキングコースを散策したり、ラフティングもやらせてみようと思っていたが、あいつがいないならアウトドアにこだわる必要はない。

予定を変更して、まずはレストランで昼食。
そして、牧野が行きたいと言っていたガラス工房に寄る。

観光地で連休中というだけあって、どこもカップルで溢れている。 
手を繋いだり寄り添ったり、仲良さげなカップルを見ていると今まで気になりもしなかった事がやたらと目につく。

それは、左手薬指の指輪。

どのカップルも結婚しているのか、それとも彼氏彼女でお揃いのペアリングなのだろうか。
していないのは俺たちだけ。

隣に立つ牧野の指には一つもリングはない。
幸が生まれる前に、ペアでリングを作り牧野に贈ったけれど、それを今もこいつは持っているだろうか。

気になり出すと、何も付けていない牧野の小さな白い手が寂しげで、思わず下を向く俺。

「…道明寺、疲れた?」
そんな俺に牧野は心配そうに聞く。

「いや、疲れてねーよ。」

「でも、ずっと車運転してたから。
早めにホテルに入ろうか。」

時計を見ると3時を少し過ぎた頃。
宿はこの辺では1番いい所を予約した。
夜は部屋から花火も見れる。

家族旅行だと思っていたから、野獣になる気は全くなかったが、幸がいない牧野と2人きりだと予測不能。
抑えなくてもいい状況が来るなら、たぶん突っ走るだろう俺。

早めにホテルに行く?
なんて聞くこいつは、きっとそんな事全く考えてねーんだろうな。
牧野のそういう所が逆に俺を刺激して、行けるとこまで攻めたくもなる。

心配そうに俺の顔を見つめる牧野の頭をそっと撫でると、
「行くぞ。」
と、車へ向かった。

街中へ入っていくと、ここも連休中なのでかなり人出が多い。
街中を抜けて少し行った所に、今日泊まる温泉宿がある。
信号で止まり、人の流れを見ていると、突然隣に座る牧野が小さく、
「あっ、」
と、言った。

「ん?」

牧野が見つめる方向では、商店街が並ぶアーケード街でどうやら夏祭りが開かれているようだ。

「見に行くか?」

「…いいの?」

「車止めて、ゆっくり歩こうぜ。」

車をパーキングに止め、アーケード街へと歩く。
夕方になるにつれ人がどんどん増えてきて、行き交う人とすれ違うのもやっと。
背が高い俺でさえ周囲が見えづらいのに、小せえ牧野なら歩くのも大変だろう。

案の定、俺の隣を歩いていたこいつは、どんどん遅れて離れていく。

「牧野。」

「ん?」

「離れるな。」

俺はそう言うと、牧野の手を繋ぎ引き寄せる。
小さい手が俺の手の中にすっぽりと収まり、そこから全身に甘い痺れが響く。

両側に並ぶ出店を見ながら歩いていくと、牧野が、
「これ、幸が好きなやつ。」
と、小さなリンゴ飴を指差して言う。

「お土産に買っていこうかな。
ホテルの冷蔵庫に入れておけば大丈夫よね?」

「ああ、…たぶん。」

俺は牧野にそう返事をしながら、その隣にある出店に視線が行く。
おもちゃのアクセサリーが並ぶ店。
ピアスや指輪が500円ほどで売られている。

牧野がリンゴ飴を買っている間に、俺はその店に行き、いくつも並ぶ指輪から2つ引き抜くと、店主に1000円を渡す。
何も付いていないシンプルなシルバーリング。
たった1000円で買えるリング。

けど、今、どうしても俺はそれが欲しかった。
牧野の指に、おもちゃのリングでもいいから、俺との繋がりを示す証をはめさせたい。

リンゴ飴を買った牧野は、突然いなくなった俺をキョロキョロと探している。
後ろから近づき、
「買えたか?」
そう聞くと、
「良かったっ、はぐれたかと思った。」
と、不安そうに言う。

そんなこいつの手をもう一度繋ぎ直すと、
「そろそろ行くぞ。」
と、引き寄せた。

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コメント

  1. あいるー より:

    更新ありがとうございます┏●日々の楽しみです!!

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