ビターな二人 16

ビターな二人
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結局、幸が言った『旅行に行きたい。』という我儘を完全に受け入れたあたしと道明寺は、それから2週間、旅行プランを練る事に時間を費やされた。

2泊3日の家族旅行。
場所は東京から2時間半の観光地。
道明寺が運転する車で行き、宿泊先も道明寺が予約してくれた。

幸が好きなアウトドア体験や、あたしが行きたかったガラス工房、期間限定で開かれている夜の植物園など調べれば調べるほど行きたい場所はでてくる。

それをうまく取り入れながら、なんとかあたしたちの初めての家族旅行の計画は決まった。

そして、いよいよ当日。
10時にマンションに道明寺が迎えにきてくれる。
幸は朝から部活に行き、9時ごろには帰ってくると言っていたのに、9時半を過ぎても戻らない。

あたしは自分用の鞄と、幸のリュックを玄関に用意し、今か今かと幸の帰りを待っていると、
マンションのベルが鳴った。

「はーい。」
扉を開けると、道明寺が立っている。

「ごめん、幸がまだ学校から戻らないの。」

「あいつ、どこか寄り道でもしたか。」

「とりあえず、入って。」

道明寺を部屋に入れると、あたしはもう一度携帯を覗き込む。
幸からは何も連絡は来ていない。

すると、ソファに座る道明寺の携帯が鳴り出した。

「幸からだ。」

「えっ?」

遅くなって怒られるとでも思い、あたしにではなく道明寺に連絡してきたのか。

「もしもし。」
電話に出た道明寺は、
「あ?今切り替えるから待ってろ。」
と、幸に言う。

そして、あたしを見て、
「テレビ電話に切り替えろって言ってる。」
と言いながら、携帯を操作して幸とのやりとりをテレビ電話に切り替えた。

すると、道明寺が少し驚いた声で言った。
「おまえ、今どこにいる?!」
あたしも携帯を覗き込み、その画面に映る様子を見て絶句する。
テレビ画面に映る幸の隣には、タマさんがいるのだ。

「タマさんっ!どうして幸と一緒に?」

何も言わないタマさんに代わって幸が言う。

「あのさー、俺、朝からちょっとお腹が痛くてさー。
まぁ、簡単に言うと、下痢ってやつなんだけどね。
この状態で1時間も2時間も高速に乗るのはヤバいと思うんだ。だから、俺、悪いけど家族旅行パスしていーかな。」

あまりに突然の事に、あたしも道明寺も同時におかしな声が出る。

「あ゛?」
「はぁ?」

けど、そんなあたしたちの事はお構なしに、幸は笑顔で手を振りながら言ってくる。

「3人での家族旅行は今度って事で、今回はママとパパで行ってきてよ。」

「ちょっと!そんな急にっ、せっかく幸が行きたいって言った場所にも行くんだからっ」

「俺はタマさんと留守番してるよ。
タマさんも俺とゆっくり過ごせるって超喜んでるからさ。」

そう言う幸の隣で微妙な顔でいるタマさん。

「幸、まじで行かねーのか?」

「うん。」

「ママと久しぶりの旅行だって言ってただろ?」

「…うん。
でも、今回はパパに任せる。」

『任せる』幸が言ったその言葉の意味はあたしには分からなかったけれど、道明寺は小さく頷いたあと、タマさんに言った。

「タマ、幸のこと頼む。」

「分かってますよ。気を付けていってらっしゃいませ。」

テレビ電話が切れた後、ソファの隣に座る道明寺は、携帯を見つめたまま黙っている。
怒っているのだろうか…。

そう思い、声をかけようとした時、道明寺が顔を上げてあたしを見つめた。

「牧野。」

「ん?」

「家族旅行は辞めだ。」

「…え?」

あー、そうか。
幸が行かないなら、旅行自体辞めるのか…。
そう思ったあたしに、道明寺は熱っぽい視線で言った。

「家族プランは辞めて、デートプランに変更する。」

「…デート」

頭が付いていかないあたしを見てクスッと笑った道明寺は、

「行くぞ。」

そう言ってあたしの手を握った。

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コメント

  1. あぁ より:

    おはようございます。
    更新ありがとうございます。

    good job 幸 ( `ー´)ノ
    次の展開を期待しちゃってニマニマ。
    更新お待ちしてますぅ。

  2. はな より:

    ビターな二人から、スウィーーートな二人になれるのか?
    司くん!がんばれー!!

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