幸と2週間の夏休みを過ごしたあと、東京のマンションへと帰ってきた。
沖縄で買ったお土産や幸のキャリーバッグを部屋に置いたあと、これから電気屋に行って新しいパソコンを見に行く事にしている。
牧野と幸が住むマンションに入るのは久しぶりだ。
いつもは、マンションの下まで送り届けて帰るのだが、今日は荷物が多くて幸一人では無理だと思い、部屋まで付いてきた。
幸が小学生の時にこのマンションに引っ越してきて8年。牧野らしく、シンプルで整理整頓された部屋は、いつ来ても変わらない。
荷物をリビングに運ぶと、自分のキャリーバッグから洗濯物を取り出す幸。
そして、手際よく洗濯機を回す姿を見て、しっかり者に育ててくれた牧野に感謝の気持が沸き起こる。
幸が荷物を片付けている間、俺はリビングをフラフラと歩き回り、飾られている写真や壁に貼られているカレンダーを何気なく見ていると、
ふと、棚の上に置かれた1枚の紙が目に入った。
何かの領収書か?
そう思い、チラッと覗くと、
どうやら、温泉旅館の宿泊領収書のようだ。
都内から1時間ほどで行けるその旅館は、昔ながらの日本家屋が人気の隠れ家的旅館。
領収書の金額は53000円で、人数は……2人。
かなりいい部屋を取ったことは間違いない。
日付を見ると、先週の土曜から日曜にかけて。
確か、幸の話だと、週末は夜勤だと言っていたはずなのに…。
男とでも行ったのだろうか。
別にそれを咎めるつもりはないし、俺にその資格はない。
ただ、実際そういう現実を突き付けられると、胸がザワザワとうるさいくらい波打つ俺。
…………………………
マンションを出てパパの車でパソコンを買いに来た。
さすがパパ。
ママと一緒に見に来たときは、どれがいいのか分からなくて、ただただお店の人の話を聞いているだけだったけれど、
パパと一緒だとあっという間に決まった。
結局、パパが使っているパソコンと同じものにしたのだ。
使いやすいし、分からないことがあればパパに聞けば解決するという所が最大の魅力。
店頭に並んでいるパソコンの中では群を抜いて高価だったけれど、迷わず買ってくれるパパはさすがアラブの石油王3人分。
ママが聞いたら倒れちゃう値段かもしれないから、ママには値段は内緒にしておこうと思う。
パソコンを買ったあと、近くにあるレストランに入ってご飯を食べた。
今日でパパとの夏休みは終了。
最高に楽しい夏休みになったけれど、
明日からは学校の山岳部の活動もあり、残りの夏休みも悪くない。
ご飯も食べ終わり、そろそろ帰ろうか…という雰囲気の時、パパがなぜだか少し言いにくそうに俺の名前を呼んだ。
「幸。」
「ん、なに?」
「……ママの事だけどよ、」
「ママ?」
「ママの側に、親しい男の人っているのか?」
親しい男の人…パパが言っている意味がすぐには理解できない俺。
そんな俺を見て、パパが真っ直ぐに言い直す。
「ママは、誰かと付き合っているのか?」
ああ、そういうことか。
パパの質問の意味が分かった俺は、同時に、
どうして急にパパがそんな事を聞いてきたのかわかったような気がした。
だから、答えた。
「うん、いるよ。」
これは、嘘。
ママに付き合っている人なんていない。
けれど、俺は悔しいから嘘をついた。
「ママは、好きな人がいるみたい。」
その言葉に、パパの顔が少し歪むのが分かった。
楽しい夏休みを過ごさせてもらって、最後に高価なパソコンを買って貰って、パパは俺にとって最高のパパだけど、
やっぱり、俺は結局ママの味方だから、ママが泣くのは見たくない。
パパだけなんてズルいだろ。
ママがかわいそうだろ。
パパだけあんな綺麗な彼女がいて、
それなのに、ママはいつも仕事と子育てに追われている。
そんなのかわいそうだから、
だから、俺は咄嗟に嘘をついた。
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お待たせしました。ちょっと年度末でバタバタしておりまして、更新が遅くなってしまったのさー。お許しを★
コメント
うーん(>__<)
えー言う資格ないのかぁ、、、。。。
続きがよみたい!!!
またよろしくお願いします~m(__)m
幸の仕返し、ちょっと司悶々としちゃうね。。絶対にまだ好きだよね。間違いなく!きっと綺麗な女の人は友達だと私は思ってますが…やっぱり2人には幸せが似合うと思う。
幸の存在が2人にどう影響するか…。
今後の展開をお楽しみに〜
こんばんは(#^.^#)
久しぶりのコメです。
って言っても何回か書いているのですが
反映されないなぜだろう
幸の気持ちわかるけど、あの女の人彼女ではないのでは?
幸の嘘がどっちに転ぶか楽しみです。
あらま、私、コメント見落としているでしょうか。さかのぼって読ませて頂きますね!
幸の嘘が2人を動き出させるきっかけになればいいのですが♡