ビターな二人 3

ビターな二人

パパと夏休みを過ごすようになって5日目、ようやく宿題もほぼ終わりが見えてきた。

明日からは沖縄へ行くことになっている。
昼間はタマさんと旅行の荷造りをして、夕方からは小論文の仕上げをしていると、パパが仕事から帰ってきた。

「幸、ただいま。
宿題、終わったか?」

「うん。今完成したところ。」

「ギリギリセーフじゃん。」

「さすがパパのパソコンだよ。俺のパソコンだったらあと一週間はかかってたかもしれない。」

パパのパソコンには期待以上の機能がたくさん入っていた。
ソファに寝転がりながら思いついたことを口にするだけで、勝手に文字におこしてくれる機能まで付いていて、今回の小論文はほぼ寝ながら完成したも同然。

「俺も新しいパソコン欲しいな。」

「ママに交渉したのか?」

ラフな服装に着替えながらパパが聞く。

「したよ。一緒にお店にも見に行ったんだ。
けど、結局どれがいいのか分からなくて買わなかった。ママ、機械音痴だからさ。」

「クッ……だな。」

着替え終わったパパが、ソファにいる俺の隣に座る。

「夏休み中に見に行くか?」

「パパと?」

「ああ。ママがいいって言ったらな。」

「パパが聞いてよ。」

「なんだよ、それ。」

そう言いながらも、ポケットから携帯を取り出すパパ。
腕時計を見ると7時半。
ママは家に帰ってきてる時間だ。

パパが携帯を耳に当てる。

「もしもし。俺だけど、今いいか?」

ママに繋がったみたいだ。

「幸が使ってるパソコンだけどよ、そろそろ新しい物に変えたいって言ってるんだ。
夏休み中に俺と見に行ってくる。
……ああ、………宿題は終わらせた。……分かった。……ああ、……」

ママと話すパパをじっと見つめながら思う。

普段見せる表情も、誰よりもカッコいいと思っているけれど、
ママと話してるときの穏やかな声と、照れたようなはにかんだ笑顔が最高に優しくて俺は好きだ。

そんな事を思っていると、ママとの電話が終わったパパは携帯をしまいながら俺に言う。

「何でも買って与えるな、贅沢するなって俺まで怒られただろ。」

「出たっ、ママの口癖。贅沢するな。」

「プッ…昔から変わんねーなあいつ。」

「口答えしたら、鬼ババァ化するから怖ぇ。」

こんな風にママの事を少しでも悪く言うと、必ずパパは言う。

「幸、ママの事イジメんじゃねーぞ。
泣かしたら、俺がヤキ入れるからな。」




沖縄で4日間思いっきり遊んだあとは、その足で大阪に来た。

大阪ではパパは仕事が少し入っているから、日中は一人で自由に観光し、夜は宿泊先のメープルホテルに帰るという旅行プラン。

一人で観光地を調べたり、そこまでの交通手段を考えたりと、一人旅も悪くない。
大阪にはほとんど行ったことがないと言っていたママのために、行った先では写真を撮ってママの携帯に送ってあげる。

夜になるとその写真を見たママから返信がある。
さすがに10日もママに会わないと少しだけ寂しさもあり、そのママからの毎日の返信が楽しみの一つになっていた。

今日も昼間は一人で出掛けたあと、夜はホテルのレストランでパパと食事をすることになっている。

約束の7時にホテルに戻ってきたパパとレストランへ向かい食事をし、残りデザートだけという時に、

「司?」
と、一人の女性が声をかけてきた。

「おう。」

……綺麗な人。
いや、可愛いと言ったほうがいいかもしれない。
今まで見た中で一番華のある女性だ。

「大阪に来てたの?
連絡してくれればいいのに。」
そう言ってニコリと笑った顔もまたかわいい。

俺の方をチラリと見た女性は、
「プライベートって訳ね。」
と、言ったあと、
パパの耳元に近寄り、何かを囁いた。

それにパパは照れたように少しだけ笑い、
「来週、東京で会うだろ。またその時な。」
と軽く手を上げて答えた。

それから、
ホテルの部屋に戻り2時間以上たつけれど、
俺はなぜだか胸に石が埋まったように息苦しい。

なぜだろう。
答えは…もう分かっている。

そうだよな、パパだって男だ。
こんなにかっこよくて超絶お金持ちなんだから、
もてないわけがない。

きっとあの人はパパの彼女なのだろう。
ママよりもスタイルが良くて、顔だってモデル並みに小さい。

ママでも呼ばない
「司」とパパの事を呼んでいた。

今更、何にショックを受けているのか分からないけれど、なぜだろう、どこかで自信があった。
パパとママはいつまでも俺のパパとママなんだって。

パパに彼女がいて、この先その人と一緒に暮らす事があるかもしれない…なんて事は1度も考えたことがなかった俺は、

大バカものかもしれない。

あぁ、早くママに会いたいなぁ。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

↑ランキングに参加しています。応援お願いしまーす♡

コメント

  1. aroma より:

    お久しぶりです。管理人さん。

    新連載、ビターな二人。まさかのシングルマザーのお話にドキドキしております。でも、いつもなら、つくしの身を隠す展開でもなく、逃亡もしていない、司と結婚しなかった理由が非常に気になりますが、これからですもんね。ドキドキハラハラしたいと思います。
    今後とも、宜しくお願いします。

  2. あぁ より:

    司一筋さん

    お話ありがとうございます。
    未移動お話を読みつつ
    こちらのお話楽しんでいます。

    すっごいこのお話の続き読みたいでっす。
    よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました