ビターな二人 2

ビターな二人

今年の夏休みは約2週間パパと過ごす事になった。
マンションまで迎えに来たパパの車は黒のベンツ。

いつだったかママに聞いたことがある。
「パパって超絶お金持ちなんでしょ?」

すると、ママは呆れた顔で俺に言った。
「アラブの石油王3人分らしいわよ。」
とにかく、並の金持ちじゃないらしい。

革張りのシートに座り、運転するパパを見ると、
「元気だったか?」
と、俺の頭をくしゃくしゃ撫でてくる。

「とりあえず邸に行って、これからの夏休みの計画でも立てるか?」

「うん!」




パパの家である道明寺邸に入ると、タマさんが嬉しそうに出迎えてくれた。

「幸坊っちゃん、お元気でしたか?」

「はい、タマさんは?」

「幸坊っちゃんが成人するまでは元気で頑張らなきゃいけませんからね。
つくしは?元気ですか?」

「ママは相変わらずガミガミうるさいほど元気です。」

大袈裟に顔をしかめてそう言う俺に、パパは軽くゲンコツを落とし、
「部屋に行くぞ。」
と、笑って言った。

パパの部屋は邸の東部屋。
シンプルな家具と仕事用のデスク、そして奥の部屋にはベッドが2台置いてある。

2週間分の着替えや宿題、ゲーム機などを入れたキャリーバッグを部屋の隅に置くと、パパは俺をソファに座らせた。

そして、1枚の紙を手渡してきた。
そこには、今日から2週間分のスケジュール表。

「沖縄にも大阪にもおまえを連れていくつもりだ。
けど、まずはやる事をきちんとやってからだ。
宿題は?何日で終わりそうだ?」

「んー、たぶん1週間。
いや、パパのパソコンを使わせてくれたら5日で終わらせる。」

「何だよそれ。」

「だって、俺のパソコン古いんだよ。
使いづらくてたまんない。」

ママの弟の進おじさんが、学生の頃使っていたというパソコンを譲り受けたのだが、もうさすがに古い。

「分かった。
俺が仕事に行ってる間だけ使わせてやるから、5日で終わらせろよ。」

「オッケー!」

「じゃあ、その紙の前半5日はここで宿題をやる。後半の1週間は俺と旅行だ。」

どうやら俺の夏休みは最高なものになりそうだ。
パパから貰った紙にペンで計画を書いていく。

休み明けに英語の単元テストが待っている。
これを落とすと成績表に響くから、絶対に手を抜けない。
あとは、小論文の提出もある。
まずはテーマ決めから始めないと……。

そんな事を考えながら書き込んでいると、
「幸。」
と、パパが俺を呼んだ。

顔を上げると、俺の目の前に正方形の小箱を差し出すパパ。

「なに?」

「おまえにやる。」

「えっ?パパからプレゼント?!」

サプライズが嬉しくて、早速その箱を開けてみると、

「マジかよ。」
中身を見て、泣きそうなほど感動する。

それは、登山用としては誰もが知っている最高級の腕時計で、カタログでは何度も見たことがあった憧れの時計だった。

「前にアウトドアの本に載ってただろ。
幸が欲しそうにしてたから、」

「欲しかったよ!でも、買えないほど高いからっ。」

「おまえが一生大切にするならプレゼントしてやる。」

俺がこの時計を欲しいなんてパパに言ったことはない。
けれど、雑誌を食い入るようにして読んでいたのをパパは見ていたのだろう。

「ありがとう!マジで嬉しいよ。
でも、……」

「でも?」

「ママに殺されるかも。」

そう言うと、パパは目を細めて笑った。

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