牧野たちと別れたあと、部屋へ戻ろうとホテルのロビーに入ったとき、ある事を思い出した。
「やべぇ。」
小さく呟く。
さっき、牧野に貸したパーカーのポケットに、ホテルのカードキーが入ったままだったのだ。
もうあいつは部屋に戻っているだろうか。
それとも、生徒たちとどこかに行っているだろうか。
携帯を取り出して牧野にコールすると、数秒であいつが出た。
「もしもし?」
「俺だけど、おまえ今どこにいる?」
「え?部屋に戻る途中のエレベーターの中だけど。」
それを聞いて、俺もすぐに間近にあるエレベーターに乗り込む。
「生徒たちは?」
「下の階で降りた。」
「おまえの部屋、何階?」
「どうして?」
「いーから、教えろよ。」
「……。」
「おまえに貸したパーカーに、俺の部屋のカードキーが入ってる。」
「えっー!」
慌てて探してる光景が目に浮かび苦笑する。
「今から取りに行く。何階だ?」
「15階の1506室」
もうすでに俺の乗ったエレベーターは12階まできていて、慌てて15のボタンを押すと、数秒で扉が開いた。
電話を耳に当てたまま、1506室へ直行。
廊下を曲がると、部屋の前で牧野の姿を捉えた。
「牧野。」
小さく呼ぶと、驚いた顔で振り向く。
「っ、」
何かを言おうとする牧野に、
「誰か来る前に、早く開けろ。」
と急かして、二人で滑り込むように部屋に入った。
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ビーチに面したハワイの三ツ星ホテル。
それだけでも、現実からかけ離れた世界なのに、今あたしの目の前には、道明寺がいる。
「どーして、ハワイに?」
「修学旅行だからに決まってるだろ。」
「はぁ?道明寺に関係ある?」
「理事長が参加して何が悪いんだよ。」
そう言いながら、ベッドにゴロンと横になるこの人。
「ちょっと!誰か来たら困るから早く帰るっ!」
「これからのおまえの予定は?
確か、今日は自由行動だよな?」
知ってて来たのかこの人は。
「明日の朝までは自由だけど、だからって生徒たちがたくさんいるんだから、外で一緒には居れないからね。」
「だなー。」
ベッドに横になったままそう呟いたあと、道明寺はとんでもない事を言った。
「じゃあ、部屋の中ならずっと一緒に入れるっつー事じゃねえ?」
「……はぁ?」
「ここなら、誰にも見られねーし、誰にも邪魔されねぇ。」
ベッドの上に座り直し、いい事を思いついたみたいな顔で言う。
「あのね、バカな事言ってないで帰りなさいよ。
ほら、鍵返すから。」
そう言って道明寺の側に行き、借りていたパーカーを脱ごうとして、慌ててその手を止める。
そうだった。これを脱げばあたしは水着姿なのだ。
下は水着の上からスカートをはいているけれど、上は道明寺のパーカーだけ。
それに気付いたあたしは、
「あー、あのさ、ちょっと待ってて。」
そう言って、バスルームへ行こうとするも、
「なんだよ、早く返せよ。」
と、この状況を理解したであろう道明寺の手に捕まる。
「返すから、待ってて!」
「待てねぇ。」
なんとか道明寺の手から抜け出して、バスルームへ逃げようとしたけれど、あともう少しという所で道明寺に再び捕まり、壁に追い詰められる。
あたしを見下ろす道明寺。
その目は、その先を予想するのには充分なほど熱くて、あたしは観念したように目を閉じた。
唇に感じる温かいぬくもり。
久々のキスに、身体がジンと火照るのが分かる。
一度離された後、もう一度重なるのと同時に、借りていたパーカーの前のファスナーも下ろされていく。
これを脱げば、下着同然の水着だけ。
あらわになった首元に道明寺の大きな手が触れ、その心地よさに身を委ねる。
初めてだから、恥ずかしくて、…怖い。
けど、それ以上に触れられる事が嬉しいと思える。
パーカーがあたしの足元へ落ちる。
そして、左肩から水着の紐も落とされ、行き場を失った胸が、道明寺の手で包まれた。
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