聞き覚えのあるその声は、間違えるはずもない。
「っ!道明寺っ!」
日本にいるはずの道明寺がなぜここに?
驚きのあまり、思わずいつもの呼び方で呼んでしまってから、ハッとして生徒の方を見ると、
生徒も道明寺を見て驚いた顔をしたあと、
「えっ、えっ、えっ!
道明寺つかさー!?」
と、一気にテンションMAXに。
生徒たちのキラキラした熱い視線を受けながら、道明寺は外国人と何かを話しているけれど、
あたしは…、というとさっきからそれどころではない。
焦って、急いで砂浜と海の中を走ってきたから、今頃になって足の裏がつってきたのだ。
日頃の運動不足が祟ったのか、右足の裏に反り返るような激痛が走る。
「痛っ、いたたた、う゛…痛い。」
海の中で自分の足を持ち上げて逆方向に捻ってみてもその痛さは変わらず、ただ耐えるしかない。
「おまえ、どうした?」
外国人と話し終えた道明寺が、あたしの変化に気付き顔を覗き込んでくる。
「んー、痛いの。」
「あ?どこがだよ。」
「あ、足ぃー、つったの!」
すると、あろう事か、道明寺が海の中にかがみ込み、あたしの足を持ち上げると、足首から下をクルクルと回しマッサージし始めたのだ。
驚いたのはあたしだけじゃない。
生徒たちの「キャ~」という小さな悲鳴も聞こえる。
「だ、大丈夫っ、離して…ください。」
「バカッ、まだ痛えーんだろ?」
「けどっ、」
海の中とは言え、道明寺にふくらはぎを持ち上げられ、足の裏をマッサージされるのは、さすがに恥ずかしすぎる。
「もう、大丈夫だから。」
そう言って、道明寺の手から足を引き抜き、地面におろした途端、また逆方向へのつっぱりが襲ってくる。
「痛っ、」
そんなあたしを見て、道明寺はクスッと笑ったあと、
「重症だな、おまえ。」
と言い、予想もしない行動を取った。
あたしの脇の下に手を回し引き寄せると、そのまま横抱きに抱き上げたのだ。
「…えっ、ちょっと!下ろしてっ!」
「痛みで歩けねーじゃん。」
「歩ける、歩けるっ!下ろしてって!」
「うるせぇ、周りの奴らが見てるぞ。」
そう言われてハッとして周りを見ると、生徒だけじゃなく、近くにいる人たちがチラチラとこちらを見ている。
「目立ちたくなかったら、おとなしくしてろ。」
道明寺にそう言われて、あたしはコクンと小さく頷いた。
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牧野を横抱きに抱え、俺の荷物が置いてあるパラソルの下へ行くと、そこにそっと身体をおろした。
「まだ痛いか?」
「だいぶいいけど、…またつりそう。」
と、足首をクルクル回しながら渋い顔のこいつ。
つま先の方へ行き、牧野の足首に触ると、
「大丈夫だから。」
と、膝を立てて逃げる。
パラソルの下、改めて牧野を見ると、思わず目が釘付けになるほど、刺激的な姿。
下着同然の水着は、胸の膨らみや太ももの白さを強調し、ここが屋外じゃなければ完全にリミッターが外れていた自信はある。
さっき脱ぎ捨てた俺のサンガードのパーカーを牧野の肩にかけてやり、
「露出が高すぎだろ。」
と、思わずつぶやくと、一気に顔を赤くするこいつ。
と、その時、
背後から、「あのー。」と声がした。
振り向くと、女子生徒が俺たちを見て立っている。
「牧野先生、大丈夫ですか?」
「あっ、うん。もう大丈夫。」
「私たち、ホテルに戻りますけど、先生は…、」
「あたしも戻るよっ。」
慌てて、立ち上がる牧野の肩からパーカーが滑り落ちる。
俺は、それを拾いあげ、もう一度牧野の肩にかけてやると、
「ホテルまで、着ていけ。」
と、牧野にだけ聞こえるように言った。
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なかなか更新出来なくてごめんなさいね!
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