食事も終わり、お姉さんが
「つくしちゃん、私の車で家まで送っていくわ。」
と言いながら立ち上がった。
「俺も車で来てるから、俺が送る。」
「司、ダメよ。誰かに見られたら……、」
時間もそれほど遅くはない。
電車で帰ろうと思えば帰れる。
けれど、あたしは、
お姉さんの言葉を遮るようにして、言っていた。
「お姉さんっ、……道明寺に送ってもらいます。」
驚いたようにあたしの顔を見る道明寺とお姉さん。
「道明寺、……いい?」
「ああ。」
即答してくれる道明寺。
そんなあたしたちを見て、
「そう?そうよね、そうしましょう。」
と、お姉さんがニコッと笑った。
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家までの30分ほどの道のり。
道明寺が運転する車の助手席に乗るなんて、なんだかソワソワと落ち着かない。
すると、そんなあたしを見透かしたように、道明寺が片手を伸ばしあたしの頭を子供をあやす様に撫で始めた。
「な、なに?」
「いや、お利口さんだなと思ってよ。」
「ん?何がよ。」
「俺に送って貰いたいって言ったじゃんおまえ。」
「それは……、」
あたしだって、出来るだけ長く道明寺といたいと思っている。
だけど、なかなかそれを口に出して言えない性格なのだ。
だから、せめて態度で示したい。
あたしの頭を撫でていたその大きな手にそっと触れて、下へおろすと、そのままギュッと握った。
運転席と助手席の間で繋がれた手。
驚いたようにあたしを見つめたあと、
その手を道明寺が繋ぎ直し、絡まるあたしたちの指。
「おまえさー、」
「ん?」
「こっちは、必死で我慢してんのによ、」
「え?」
聞き返すあたしに、チラッと視線を送ったあと、道明寺はハンドルをきって路肩に車を止めた。
車通りの少ない2車線の道路。
街灯もほとんどなく、顔を照らすのは時折通る対向車のライトだけ。
道明寺が車を止めた瞬間から、分かってた。
キスされる……。
今までと違って、不意打ちでもなく、隠れてでもないキス。
だから、ちゃんと全身で受け止められた気がする。
「道明寺。
あたし、ちゃんと道明寺が好き。」
「プッ……なんだよ、ちゃんとって。」
キスの合間に交わされる会話。
「だから、それは、」
「それは?」
「道明寺が好きだって言ってくれるのと同じくらい、あたしも想ってる」
唇が触れるくらい至近距離だから、
目が合わせられないくらい近いから、
だからこんな風に正直に言える。
「このまま帰したくなくなるだろ。
明日、休みだし、二人でどこか行くか?」
「…へ?」
思いがけない言葉に、素っ頓狂な声が出るあたし。
「その反応、さすがに傷付くからやめろ。」
「だって!」
「キスの先を少しは考えろよ。」
もちろん、その先に何があるかなんて分かってる。
けど、こんな急にその時が来るとは予想もしていない。
そんなあたしの反応に、クスッと笑いながら道明寺が言った。
「心配すんな。
おまえと堂々と付き合えるようになるまで、待つつもりだから。」

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