シークレット 19

シークレット

「4年前、どうして俺と付き合う選択をしなかった?」

そう道明寺に聞かれて、一気にあたしの記憶があの頃に引き戻される。

「あの時は、……逃げたの。」

これが、あの頃のあたしの正直な気持ちだった。

「あんたが言ってくれた『好き』って言う言葉も、自分が感じてるドキドキする気持ちも、一時の感情だと思って、すぐになくなるだろうって思ってた。
だから、あのまま深入りしないうちに終わりにしたかった。」

そのあたしの言葉に道明寺は頭を垂れてうつむく。

「けど、忘れるのは、そんなに簡単じゃなくて。腹立つくらい記憶に残ってて。」

そう続けると、下を向いていた道明寺が顔を上げてあたしを見つめる。

「おかげでこの4年、全く恋愛なんて出来なくて、ようやく、記憶が薄れて忘れようとしていたのに、またあたしの前に現れる。」

「フッ……」

「どんだけあたしの事を苦しめたら気が済むのよ。」

これも本音。
この4年、この人の記憶にどれだけ苦しめられたか。
綺麗な目、笑った顔、名前を呼ぶ低い声。
忘れたくても忘れられなかった。

言いたいことは言った。
だから、テーブルにあるカクテルを一気に空けると、隣に座る道明寺が、小さく「バカ」と呟く。

「牧野、おまえさー。」

「なによ。」

「愛情表現の仕方、間違ってるだろ。」

「え?」

「表現する時は、ケチんなよな。ストレートに言え。」

道明寺が言う意味が分からないあたしに、道明寺は得意気な顔で言った。

「牧野。
俺はおまえが今でも好きだ。
この4年、思い出さないように封印しても、いちいち俺の記憶に現れやがる。
他の奴と恋愛?するわけねーだろ。
おまえが忘れられねぇっつーのに。」

そう言ったあと、
「愛情表現はこれくらいストレートに言ってみろ。」
と、ニヤッと笑うこの人。

自分の顔が赤くなっていくのが分かる。
隣に座る道明寺の視線に耐えきれなくなって、反対側を向き、
「もう、……無理。」
と、呟くあたし。

「牧野、こっち向けって。」

頭をブンブン振って抗議するあたしの肩を掴み自分の方へ向かせた道明寺の顔は完全に面白がっている。

「一言だけでいいぞ。」

「ん?」

「俺のことどう思ってる?」

この人はやっぱり憎たらしい男だ。
言わないと、絶対に逃してくれないだろう。

「す、」

「す?」

「好きだって、言えばいいんでしょ!」

「プッ……ったく、どうしょもねぇ女。」

すると、突然、あたしの視界にいた道明寺が近付いてきて、次の瞬間、唇に温かい感触が触れた。

キス?
そう気付いたときにはもう道明寺の体はあたしから離れていて、あたしは思いっきり道明寺の胸を叩く。

「ちょっと!ひどい……またやったの?!」

この人には同じ手法でファーストキスを奪われている。

「日本ではこういう事は軽々しくしていい事じゃないのっ。
あたしのファーストキスと2回目のキスを返してよバカッ!」

「軽々しくなんてしてねーよ。
どうしてもしたくて、した。」

「ど、どうしても?」

「ああ。俺のファーストキスもセカンドキスも、どうしてもおまえとしたくて、した。」

真正面からこんな風に甘く言われると、どうしていいか分からない。

だから、
「勝手にするのは禁止!ちゃんと聞いてからしてよねっ。」
と、強がって言ってみるあたしに、
道明寺はクスッと小さく笑ったあと、顔を近づけ言った。

「牧野、キスしていい?」

「…え?」

「ちゃんと聞いたんだから答えろよ。」

「…いー、けど。」

言い終わる前に、あたしの唇は道明寺に優しく塞がれた。

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コメント

  1. はな より:

    司一筋さんを、鬼と言ってごめんなさい。

    • 司一筋 司一筋 より:

      いーんです。鬼のように司をいじめてからご褒美をあげることに快感を感じておりますので〜♡

  2. 匿名 より:

    あーキスしたい

  3. はれこ より:

    司くん カッコいい‼️
    つくしちゃん かわいい(*≧з≦)

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